「修兵は、少し変わったね」
「……そう、か?」
何ヶ月以上にもなる、久しぶりに並んで歩く紗也の隣は擽ったい。
何でもない会話の途中、昔に戻ったみたいだと紗也が笑った。
尸魂界が激震して、隊長が居なくなった穴を埋めるべく只管奔走して来た。
少しだけ荒んで、クサって、寝食も儘ならねぇ日々を過ごして。
そうして疲れ切った頭に、何故だか決まって浮かぶのは、紗也の呆れ顔に隠された心配そうな瞳の色だった。
「っ………」
ああ、そうかと。さっき出会った時に感じた、腹に燻る違和感の正体に気付いた。
其れは……
今日の紗也は、俺が煩わしいと感じていた苦言を口にはしない。
『大変だね』と気遣う言葉を口にしながらも、決してもう一歩を踏み込んでは来ない。
もう、友人よりも遠い……
「じゃあ、ありが……」
「紗也っ……、は、」
「………う、ん?」
今度こそと、微笑って背を向けようとした紗也を、振り絞る思いで吐いた言葉で制止した。
「……もう、好いヤツでも、出来たのか?」
違うだろっ……
そう思っても、不意に浮かんだ想いを止める事は叶わず、躯中に燻る不安が言葉になって溢れ出た。
でもそうじゃねぇ。
云いたい事はそんなつまらねぇ事じゃなくて。
そんな怯懦的な想いでもなくて、
もう一回 向き合って欲しいって、今度は間違えねぇって、
絶対に……
「紗………」
「…………うん、いるよ」
――――……っ
此れからはちゃんと、大事にするからって……
「そう、か……」
「うん……」
俺らはまだ……
別れてねぇだろ、なんて、俺に言う資格なんてねぇのに……。
小さくなって行く後ろ姿を見送って、弛まない拳を更にと握った。
自業自得。
そんな言葉が頭に浮かんでは、其れでもと、諦め切れない想いに歯噛みした。
愛想なんて、疾っくに尽かされてるのが当たり前で。形を成さなかった別れの言葉に、もしかしたらと、縋ってでもいたのかと毒吐いた。
何でもっと早くと、失くしたくねぇなら何でと自分を責めても、今更、確かめに行く勇気も無かっただけじゃねぇかと嘲笑える。
「っ………」
今度は本当に終わってしまった……
そう思ったら、ゾワリと背筋が凍った気がした。
また何も云わねぇまま、終わるのかよ……。
「今更……っ、でも、」
其れでもと……。
もう、今しかねぇんだと走った。
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