十二時を過ぎて行く針をぼんやりと眺めていた。
何て事はない。
ただ日付が変わっただけの事だ……。
忘れられている事は諦めていたけれど、日付が変わるその瞬間に、ただ一緒に居てくれたらいい。
改めて口にするのは恥ずかしいし、そうして催促しての『おめでとう』は要らないから。
自己満足でも、それだけで十分幸せだと思っていた。
忙しい修兵を、自分から誘う日は滅多にない。
ダメならそれで諦めて、会えたら嬉しい、それだけだ。
そうして、ここ何年も過ごして来たんだ。
今日の約束は数日前にしたものだったけれど、直前になって、行けなくなったと連絡が入った。
あまり記念日とかそういうのを気にする方ではないと思っている。
相手に強要はするつもりもない、けれど、乱菊さんに誘われて断れなかったと言う修兵が、約束をした時点で思い出してもくれていなかった事実がこんなにも痛い―――
「『愛されてないよね…』」
昨日、友人達に言われた言葉が心に引っ掛かっていた。
『時々、紗也達が付き合ってる事実を忘れるわ』
以前なら気にしなかったかも知れない言葉は、こうして口を吐いて出てしまう程
心を蝕んでいたのかも知れない――
『断れないの?』と、初めて口にした私を知ってくれていただろうか。
修兵は、断れない事くらい解ってるだろうと、憮然として言い放った。
それは、私との約束なんて守るに値しないと言われているのと同様で。
修兵の中の優先順位とか、守りたいモノとか
何だろう、色々色々……
一つ考え始めたらぐちゃぐちゃになって、ストンと何かが墜ちた気がした。
私は、それが何かを解っている……。
「そうだよ… ね」
ごめんなって、一言の謝罪もない。
伝令神機越しにただキャンセルを伝えられる。
それは、そう言うことなんだろう。
『早目に抜けれたら行く』なんて言葉に、もう欠片も期待なんてしていない自分にも漸く気付いた。
いつから修兵の言葉に期待すらしなくなったのか、それすらもう思い出せないくらい――
離れてしまった事を自覚すべきなんだ。
待つつもりなんてないのに眠りは訪れてくれなくて
闇の中、負の感情に囚われたまま朝を迎えた。
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