もう一度あの笑顔を向けて欲しい。
これからも、ずっと
俺にだけ――…
「花火なんて見てねぇ」
突然連れて来られた流魂街の山中に、捕まれたままの腕に。
戸惑いを隠せないまま、四宮は思案気な瞳を俺に向けていた。
皆さんとご覧になれましたか?さっきの応えだなんて解っちゃいないだろう事は判っていて、構わずに俺は先を続ける。
「花火が観たかったわけじゃねぇから。四宮と…」
一緒に居たかっただけだ。
昨夜の話も、俺からの謝罪も聴きたく無いんだと解っていてそうせずにはいられない。
一人にして悪かった
傍にいなくて悪かった
助けられなくて、
見付けられなくて……
溢れ出るのは、結局、昨夜の愚行ばかりで、言いながらに自己嫌悪するけれど。
もしも赦してくれるなら
「昨夜の、言い訳をさせてくれねぇか」
捕らえたこの手を放してやれない程、
君が好きなんだ……
「……手、痛い、です…。檜佐木副隊長」
それまで黙っていた四宮がやっと口を開いてくれたことにほっとして、発せられた言葉に胸が傷む。
思えば、相当の力で握り締めていた華奢な手首。
「悪い!」と慌てて力を弛めるも、その手は放せないままだ。
「もう、いいです」
その言葉にグッと奥歯を噛み締めて、繋がった手を見つめる。
「……花火に、誘っていただけて嬉しかったんです」
「四宮……?」
「私も、花火が見たかった訳じゃないですから……」
柔らかく握り返された手。
目を向けた先には泣き笑いの四宮がいて
「私の言い訳も、聴いてくれますか?」
そう言って君は
華のように、笑った――…
「檜佐木副隊長、さっき口調が変わってましたよ」
その方が、好きです。
******************「乱菊さん!一体いつになったら四宮に会わせてくれるんすかっ!!!」
あの日、つい霊圧を上げちまった(喜びのあまり俺の莫迦)せいで、四宮を探してた乱菊さんに見付かって連れて行かれちまった。
霊圧に当てられた四宮を見て、更に怒りが倍増した乱菊さんによって、三日経った今も四宮には会わせて貰えないまま……
「……いつ?」
「私の可愛い紗也をあれだけ悲しませておいて、しかも勝手に連れ去った挙げ句霊圧当てて倒れさせて、いつ?」
ヤベぇ… マジだ…
「いい?修兵!紗也が赦しても、この私が赦さないわよっ!!!」
「……まだ好きだっつってねぇのに……」
「何か言った!?」
「いえ……」
早く、君に会いたい。
次は必ず迎えに行くから――…prev / next