想うまま、衝動のままに四宮の元へと向かった。
譬、今更だと思われようと構わなかった。
先輩、好きだとも云ってないらしいじゃないですか「本当、笑えねぇ……」
失くしたくないと。
今度こそ、好きだと伝えたかった。
昼に会った時の、辛そうな表情の四宮が涙を見せる事は無くて、もうどうにもならないんじゃねぇかと怯みそうになる己は頬を叩いて叱咤する。
泣いてましたよ……向けられた凛と伸びた背が四宮の精一杯だったなら……
もう一人で泣かせない。
泣きたい時は、俺が抱き締める。
其れを他の誰にも譲りたくないんだと、此のみっともねぇ想いを全部晒そうと思った。
*
「開けて、くんねぇの?」
檜佐木だと告げた声に室内の霊圧が乱れて、開かれない扉の向こうの顔を見る事は叶わなかった。
閉ざされたままの薄い扉が、四宮の心を顕しているようで胸が痛む。
「あ、の……。ご迷惑を掛けた上に、ご不快な思いをさせてしまった事は謝りま……」
「そうじゃねぇよ」
違うんだ。
顔が見たい。会って、謝って、俺の仕出かした間違いを告げたい。
今更かも知れない。けれど、もう一度チャンスが与えられるなら……
「……話を聞いて、其れで、もう一回俺と付き合ってくれないか」
「……どうして、ですか?」
「四宮……?」
「どうしてもう一度付き合いたいなんて、言うんですかっ!……檜佐木副隊長は」
私の事なんて、好きじゃないくせに……
「…………っ」
気丈に聴こえた声が震えたのに気付いて力任せに扉を抉じ開ければ、驚愕に見開いた瞳が濡れていた。
「…………っ」
「悪かった……」
紅く腫れた瞳が、もう四宮が、ずっと泣いて居たんだと教えてくれた。
今までも一人で、ずっと泣いていたんだと……。
「四宮……っ」
「もう、いいですから……」
逃がすまいと先んじて捕らえていた腕を引き寄せる。
離して下さいともがく躯を、もう絶対に離さないとの意を籠めて抱き締め続ければ、観念したかのように其の力を抜いた。
「私、はっ……、こんなだから、ガッカリされたかも、知れません、が……」
勇気も遣い果たしたと、どんなに頑張っても檜佐木副隊長の望むような人にはなれなかったと……
「迷惑だって、気付かなくて……」
「迷惑じゃねぇよっ」
これ以上、否定の言葉も謝罪の言葉も四宮に言わせまいと無理矢理遮った。
「…………好きだ」
絶対に俺の方が年季入ってっから……
ゆっくりと口唇を離してそう想いを伝えるのに、絶対に信じてないだろう顔をして、子供みたいに泣く四宮が可愛かった。
本当に、あのまま諦めてたら死ぬ程後悔していたに違いねぇと胃が痛む。
「俺の方が四宮を好きなんだって、此れから厭ってくらい解らせてやる」
それで、本気の俺から逃げないでくれたら有り難い……。
間違いなく
退かれる自信が有ると、内心で自分に溜め息を吐いた……。
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