修兵短編 壱 | ナノ


07

俺の望む四宮ってどんなだよ……


多分、四宮も解っちゃいないんだ。

俺がどんなに四宮を好きなのか。

ガッカリなんてする訳も無い。処か全てが可愛い過ぎて、今まで気付かねぇでいた自分にガッカリするくらいだ。






「紗也は本っ当に修兵で良いわけっ!?」


見た目はアレでも中身は此れよ!ただのヘタレなのよって乱菊さんが四宮に詰め寄っている。


俺が格好付けるのも無理をすんのも止めて、とにかく思う侭に行動し出した途端、マジで失礼だなとは思うが、其れまでは黙っていてくれたのかと思えば其れなりの気遣いを感じない訳でもない。


あれ以来、四宮とは順調に付き合えていて、独占欲丸出しで傍に居座る俺を、厭がるでも無く本当に嬉しそうに微笑んで受け入れてくれている。

けれど、俺の傍で笑顔の増えた四宮の人気が鰻登りなのもまた事実な訳で。
四宮に知られないように周りを牽制すんのも一苦労だったりする。

そんな俺を知ってか知らずか


「違います。檜佐木副隊長は格好良いです……それに、私の方が好きなんですから……」


少し恥ずかしそうに俺に目を向けて、惜しみなく想いを伝えてくれる四宮が可愛い過ぎてマジでヤベぇ。
もう、どうしてくれようかと本気で思う。


「……と言いつつ、四宮からは全然云ってくれなくなったよな」


そうして、恥ずかしさを誤魔化すように軽口を叩けば


「云おうとしたら、修、兵が邪魔する…から……」


って、言っ…て……っ


「……え、って、は?今……、えっ?」

「えっと……、先を越されて悔しがる檜佐木副隊長が見たいって……」


乱菊さん達が言うから……


恥ずかしいくらいに顔を赤くして狼狽え捲る俺に、四宮が悪戯が成功したみたいな顔で微笑んでいる……


「…………四宮」

「……っ は、い…えっ?……」


何でそんなに可愛いんだよと抱き締めて、虫除けと牽制代わりにと口付けた。

やんやと騒ぐ声に混じるのは、俺に対する罵声が半分悲鳴が半分か。

そんなモノは知った事かと逃れようともがく四宮の後頭部を、細い腰を捉えて抑え込む。

柔らかい口唇に、此処が何処かも忘れて深く貪った……





「嫌い……」


漸く解放した力の抜けた四宮を抱き締めれば、腕の中から小さな声が響いて……


「…………えっ」

「…………のに…」

「…………っ」


トン と胸を叩いた四宮が店から飛び出して行っ、た……。


いや、そんな顔で睨んでも可愛いだけ、の前にっ


「マジで……?」

「だから僕、手放したら後悔するって言いましたよね?見た目を裏切った可愛い人だって」


色々な意味で……って、そういう意味かよっ!


「四宮君は、檜佐木さんが初カレみたいなんですけど……」


善いんですか?初心者相手に人前であんな事して……って吉良。

情報は正確に、そんでもって早く言え。


「今度こそ嫌われたんじゃないの〜?」


って、乱菊さんは煩いっすよ……


「……行って来る」

「四宮君は、多分執務室方向ですよ」


踵を返した俺に、何処に行く気ですかと吉良が言う。


「……三番隊だっつの」

「でしょうね」


自分の方が四宮を解ってます的な可愛くねぇ後輩に、礼の代わりに頭を一発叩いてやる。
多分に、四宮の泣き顔を見た上に抱き締めやがった腹いせが混じってたりするのは極秘だ。




駆け出した背後から掛かる声に耳を塞ぎながら、先ずは反省の前にどうしたってニヤケそうになる顔を引き締める事に専念する。

程無くして追い付くだろう彼女の、間違いなく最上級に可愛い顔が容易く想像出来て、弛む表情筋をどうにも制御出来そうにない。

けれど……

もう其れで良いんじゃねぇかと思う俺がいる。


「先ずは謝り倒すとしてだ」


謝って、抱き締めて、

そして……


四宮の隣で、だらしないと謂われる顔で笑って居たいと思った。





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