ほろ酔い加減の飲み会の帰り道。
隣には、もうずっと私の中でのたった一人である修兵。
飲み会の帰りに、修兵がこうして送ってくれることは既に恒例で。
彼女なんて甘い立ち位置では無いけれど、長い時間をかけて築いた自分の居場所はここだって、ここに居て良いんだってそう感じられて。
ふわふわとした思考の中、思わず微笑んでしまうくらい、幸せを感じていた。
私は、
浮かれて居たのかも知れない。
![](http://img.mobilerz.net/sozai/1642.gif)
「紗也」
「ん?」
「今日は何か、ふわっふわしてて危ねぇ」
そう言って修兵が、ん、と手を出してくる。
さりげない優しさが嬉しくて、いつもは素直に言えないけれど。
今日は、今日だけは良いかなって、ほんの少し甘えても良いかなって思ってその手を取った。
ありがとうって笑ったら、そんな私に吃驚したんだろう修兵が息を呑むのが解って、それがまた可笑しくて私は微笑った。
こんなに長く一緒に居て、手を繋ぐのなんて初めてのことかも知れない。
その温もりに緊張することなく、キュッと力を籠めれば同じように返してくれた。
それが嬉しくて、いつもより近い距離で修兵を見上げれば
「……んな顔すんな」
と困った顔で微笑っていた。
その時、自分がどんな顔をしていたかなんて解らないけれど――――
ゆっくり、ゆっくり、いつもと同じ道を辿る。
合わせてる訳じゃない、そんな小さなことがこんなにも嬉しいなんて、きっと誰にも解らないだろう。
ほんの少しだけ素直で居られる、今、この時が止まればいいとさえ思えるほどに。
足を止めたのは同時だった。
ギュッと握られた手に、修兵を仰ぎ見れば、そこには見たことのない表情の修兵が居た。
どうしたの?と問えば、繋がれた右手に力が籠められる。
「修、兵…?」
「俺…… お前が好きだ」
ずっと、好きだった――…
現実に起こり得るはずのないと思っていた事に、脳が理解して嬉しいと感情を伝えて来るのに、どのくらいの時間を要しただろうか。
修兵の真剣な瞳には、驚きで目を真ん丸にした自分が映っていて
なんて言う間抜け面……
と、相当パニックに陥っている自分が居る。
だって、『ずっと』は、
私の想いだ
「私も!ずっと修兵が好きだった……」
「悪い!!!冗談だから本気にすんなよ!」
叫ぶように伝えた想いは、被された言葉に否定されていた。
私は、答えを間違ってしまったみたいだ――…
あ……と思った時には手遅れで、一生、伝えるつもりの無かった想いは、音になって振るえてしまった後だった。
目の前の修兵が、有り得ない程に驚いているのが見えても、もう取り返しがつかない。
もう、遅い。
「紗也!俺、悪い……」
「ごめん!」
「紗也…」
「ごめん、忘れて」
本当にごめんなさい……
壊してしまった……
こんなに、自分を莫迦だと思ったことはない――…
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