修兵短編 壱 | ナノ


09

気を失った紗也を抱き締めていた。
こんなになっても解放してやれない、こんなにも紗也に執着している自分を、もう隠すつもりもなかった。

解っている。
紗也がああ言ったなら、もう駄目なんだってことくらいは……

だからこそ、この手を放したら終わりなんだ。


「修、へ……」

「紗也!」


何て顔をしてるのと優しく頬に触れて来る。
俺は今、相当に酷い表情をしてるんだろう。

そうして晒して、みっともなく足掻いても


「…無茶して、ごめん」


解放してやれなくてごめん。

俺は、絶対にお前は手放さない。


「俺の好きなようにしていいなら……」

「修兵?」

「絶対に別れない」


愛されてないとか、そんな哀しいことは二度と言わせねぇから……


「…莫迦だなぁ、修兵は。そんな、無理する必要なんてないのに……」


そういうのは、情が湧いたって言うんだよ


そう言って、今日初めての感情をその瞳が映していた。
見る見る歪んで行く表情にほっとする俺がいる。


無理なんかじゃない。
信じてくれなんて言わない。


「お前が俺を諦めても、俺がお前を諦めない」


もう一度、絶対に手に入れる――…



今度は俺を嫌だと言っても
諦めてなんかやらない――――






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