「………………は?」
「だから、紗也と別れたんすかって」
「るせぇ!聴こえてんだよっ ……痛っ クソ」
何度も言うんじゃねぇ
自分の怒鳴り声が響いて苛々が増す。
「別れてねぇよ。っつか何でンなこと訊いてくんだよ」
下らない事を何度も訊いて来る阿散井に、驚く程低くなった声で返せば
「……先輩、昨日も乱菊さんと居たっすよね?」
その前の非番も……。
憮然と阿散井が続けたのは昨日までのことで、話の繋がりが見えねぇ俺の眉間の皺を見て取って溜め息を吐きやがる。
その態度に霊圧が上がれば、阿散井のそれも比例した。
「先輩と、紗也が別れたって噂になってます」
「だから!」
「紗也が!!!」
……何だよ!
「紗也が、……指輪をしてねぇから。別れたのかって訊かれても」
否定しねぇから……
阿散井の言葉に、有り得ねぇと立ち上がるが声が出ない。
「先輩。この前の非番、何の日か知ってましたか」
怒りを抑えて、吐き出すように告げられた言葉に思考を巡らせる。
「この前……って……」
本気で解らねぇ俺に、悔しそうに阿散井が目を逸らす。
紗也の、誕生日っすよ
「分かっててそうされんのも、思い出しても貰えねぇのも…… つーか、俺的には乱菊さんも有り得ねぇ……」
「…乱菊さんは関係無ぇ」
「そうかよ。だったら」
もうどうでもいいなら、このまま解放してやってくれ――…
![](http://img.mobilerz.net/sozai/1642.gif)
終鈴が鳴っていた。
阿散井が出て行ってから、随分時間が経ったようだ。
「ヤベぇな、これ。残業しても終わんねぇな…」
何も手に付かないまま
ただ時間だけが過ぎていた――――
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