「徹夜明け」
ク「ブルーノ、俺の右手知らねぇか?」
ブ「いや、僕は知らな……とってもグロテスクな光景だね」
ク「スリープモードから解除したと思ったら右手が無かった。なんだこれ」
ブ「第一、右手を知らないかって聞かれたの、世界中で僕が初めてだと思うよ」
ク「俺の右手どこに行ったんだよ…何のホラーだよ」
ブ「探しとくよ、とりあえずマスターを起こしに行ってくるから」
ク「俺は居間を探してくるか……」
ク「くっそ、どこにもねぇ…」
ブ「クロウ!クロウ!」
ク「なんだ、どうした?」
ブ「クロウの右手、あったよ!」
ク「何!?どこにあった!?」
ブ「そ、それが……」
ブ「ほら、この通り……」
ク「……これ、写真撮ってホラー番組に送れば、反響くるぞ」
ブ「ね…。まさか遊星がしっかり持ってるなんてね…」
ク「なんで俺の右手を握ったまま寝てるんだコイツ…マジでホラーだぞ。ある意味殺人現場だぞ」
ブ「しかもね、しっかり握ってるから取れないんだよ…」
ク「はぁ?!ちょっ、俺の右手……このっ(グイッ)……しっかり握ってやがる…」
ブ「多分…昨晩クロウの右手を取って、メンテナンスをして…そのまま寝ちゃったのかな?」
ク「どうすんだよ、俺は右手が利き手なんだぞ」
ブ「この際、両利きになるように左手で特訓したら?」
ク「……ブルーノ、お前他人事だと思って…」
ブ「そんなことないよっ!」
ク「てか、お前コイツを起こすためにこっちに来たんだろ?なんで起こしてねぇんだよ」
ブ「珍しく爆睡してるみたいなんだよ……揺さぶっても寝返り打つだけで…」
ク「こういう時に限って爆睡しやがって…」
++++++++++++++++++
――ピンポーン
ブ「あ、お客さん」
ク「なんとかして遊星起こせ。俺が出るから(スタスタ…」
ブ「え、あぁ、うん。………え!?その姿で出るの?!」
――ガチャッ
ク「はいはい、どちらさんー?」
亞「あ、クロウ!遊びにきt…ぎゃあああ!!右手が無いぃいいい!!」
ク「ばっ、馬鹿っ!叫ぶなっ!近所に怪しまれるだろっ!!」
亞「むぐっ」
ク「しーっ!とにかくっ、中に入れ!」
亞「(コクコクッ)」
亞「それで、なんで右手ないの?ホラーだよそれ」
ク「仕方ねぇだろ、俺の右手が遊星に拉致られてんだから」
亞「なんで?」
ク「さあなー。どうせメンテのために右手取って、そのまま寝たんだろうけどなー」
亞「あー…遊星ならありそうだね」
ク「ブルーノ、遊星起こしたかー?」
ブ「あ、いや…それが全然起きないんだよ…まるで死んでるみたい」
亞「遊星がそこまで寝るのって珍しいよね?」
ブ「うん……そんなに徹夜してたのかな…?」
ク「遊星が起きねぇと、俺の右手が戻らねぇんだけど」
ブ「今日一日、我慢する?」
ク「………仕方ねぇな」
亞「じゃあ、今日は俺も何か手伝うよ!クロウの右腕代わり!」
ブ「それは助かるよ、龍亞君。やること沢山あるんだ」
ク「そんじゃ、龍亞には洗濯物たたみ頼むかなー。片手だと出来ねぇし」
亞「うん、分かった!任せて!」
ブ「僕は夕飯の準備でもしとくね」
ク「俺は片手でできる風呂掃除でもするか……」
++++++++++++++++++++
亞「終わったーっ!」
ブ「お疲れ様ー」
ク「こっちも終わったぜ」
亞「これでゆっくりできる?」
ブ「うん、後は遊星が起きるのを待つだけかなー」
亞「……起きるかな?」
ブ「どうだろうねー…」
遊「おはよう……」
ブ「あ、やっと起きた!」
亞「おはよう遊星!もう夕方だよーっ!」
遊「あぁ……来てたのか龍亞……おはよう……」
ブ「まだ眠そうだね?そんなに疲れが溜まってたの?」
遊「……みたい…だな……」
亞「遊星、ボーっとしてるよ……」
ク「それよりも、右手返せ」
遊「あ……これか……悪かったな……」
ク「やっと右手が戻ってき……右手が異様に熱いぞ」
遊「気づいたら…抱きしめて寝てたからな……」
ク「俺の右手は抱き枕じゃねーぞ」
遊「起きたとき……自分の腕の中に右手があったから……叫びそうになった…」
ブ「まあ…自分の腕の中に右手があったら、そりゃ驚くよね」
ク「自分で取ったくせに…」
ブ「遊星、今日はクロウが片手しか使えなかったから、龍亞君が家事を手伝ってくれたんだよ?」
ク「遊星以上に働いてくれたぞ、龍亞は」
遊「そうか……、有難う龍亞…悪かったな?」
亞「ううん、全然!クロウとブルーノの力になれて良かったよ」
遊「もう時間も時間だ…夕飯ぐらい食べていくと良い…。ブルーノ、龍可も迎えに行って来てくれないか?」
ブ「うん、分かった」
亞「俺も行くよ!」
ブ「じゃあ、一緒に龍可ちゃんを迎えに行こうか」
亞「うん!」
遊「クロウ、コーヒー頼む……」
ク「お前今にも寝そうじゃねぇか」
遊「なんでだろうな……今日は、なんか…眠気が酷くてな…」
ク「今までの体に鞭を打つ生活が仇となったんだろうよ。だから寝ろとあれほど…」
遊「説教は良い…説教は……ふわぁ…っ」
ク「風呂入ってるから、目覚まして来い」
遊「今なら…風呂に…沈めれる」
ク「風呂で寝る気かよ」
遊「風呂は身体が温まるからな…眠気促進には…効果的だろう……」
ク「立ったままうつらうつらするな。壁に頭ぶつけるぞ」
遊「眠いんだから……仕方ない…」
ク「………服ん中に氷入れてやろうか?」
遊「止めろ、目が覚めるどころの話じゃない」
ク「よし、口調が戻ったな。少し覚醒したな」
遊「眠いのには変わりないが想像して鳥肌立った。今なら風呂に入れる」
ク「さっさと入って来い。三人が帰ってくるぞ」
遊「……入ってくる。コーヒー淹れといてくれ」
ク「分かった分かった、さっさと行け」
++++++++++++++++++++
ブ「ただいまー」
亞「ただいまーっ」
可「お邪魔しますー」
ク「おう、お帰り」
ブ「遊星は?」
ク「今風呂に入ってる」
可「でも…結構時間経ってるわよね?」
ブ「ちょっと遅くない?」
ク「……様子見てくるか」
――スタスタスタ…
亞「今日のご飯何?」
ブ「色々あるよ?オムライスとかサラダとかから揚げとか」
可「結構作ったのね」
ブ「遊星が意外に食べるからねー。不動博士もそうだし」
亞「楽しみだなーっ、夕飯!」
可「もう、龍亞。意地汚いー」
亞「違うよっ!皆で夕飯食べるのが楽しみってこと!」
ブ「二人はいつも二人きりでご飯だもんね…寂しくない?」
亞「もう慣れたって感じだけど…でも、皆で食べる方が好きだよ」
可「うん、そうね。私も皆と夕飯一緒に出来て、嬉しい」
ブ「なら、いつも食べに来て良いんだよ?皆で食べた方が美味しいからね」
――ドタドタドタドタ!!
ク「ブルーノ!!タオル!さっさとタオル持って来い!!」
ブ「えぇ!?」
ク「それからっ、龍亞と龍可!氷水用意してくれ!!氷水!!」
可「ど、どうしたの?」
ク「遊星の奴っ、風呂場で寝て湯船に沈んでやがった!!完全に逆上せてやがる!!」
亞「えぇ!!?」
ブ「わ、分かったよっタオルだね!!」
可「ほら龍亞!早く台所に行って準備しましょう!」
亞「う、うん!そうだねっ!」
ク「俺は遊星を引き上げるからっ!」
ブ「た、頼んだよっ!!」
遊「申し訳ありませんでした…」
ク「………お前氷水に沈めるぞ」
ブ「全くもう…一時はどうなるかと…」
亞「でも良かったよ…遊星が無事で」
可「もう寝ないようにしなきゃだめよ、遊星?」
遊「……肝に銘じておきます…」
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