「花火大会」










遊「今日、花火大会があるんだが、二人も行かないか?」


不「ゆ、ゆうくん!私も!私も行きたい!」


遊「父さんは仕事ですよね。頑張ってくださいね」


不「………はい…」


ブ「花火大会って今日だったっけ?」


ク「俺達が行って何を楽しめるっていうんだ?」


遊「ダメもとで聞いてみただけなんだが…」


ブ「楽しんできなよ。僕たちは留守番してるからさ」


ク「親父さんが仕事放棄しないか見とく仕事もあるしな(チラッ」


不「にっ、逃げないよっ!」


遊「父さん、声が上擦ってます。…じゃあ、夕方に行ってくるから、留守番頼むよ?」


ブ「うん、任せて」


不「留守番をパパに任せない辺り、ゆうくんは私を信頼してないんだね」


ク「今さらだろ?」


不「泣きそうだよ」











遊「それじゃあ、行ってくるから」


ブ「楽しんで来てね」


不「ちなみに、誰と行くんだい?」


遊「鬼柳」






――バタン







ク「今…あいつ何て言った?物凄く耳に入れたくない名前が聞こえた気がしたんだけど」


不「鬼柳君と花火大会かー、女っ気ないね。我が息子ながら気の毒だ」


ブ「いや、でもマスターって結構美人だから…」


ク「俺、ちょっと鬼柳の三親等から消してくる」


不「待ってクロウ!三親等を巻き込んじゃダメだろう!鬼柳君で我慢しなさい!」


ブ「博士、そこは止めましょうよ」


ク「ブルーノ!後付けるぞ!」


ブ「えぇ!?さっき行かないって言ったじゃないか!」


ク「それとこれとじゃ話が別だ!これ以上あいつに鬼柳菌が付着してみろ!俺に対する態度が最悪なことになる!」


ブ「クロウに対する態度って、クロウにも原因があること分かってる?」




+++++++++++++++++++++++









鬼「ひっ!!」


遊「ん?どうしたんだ、変な奇声上げて」


鬼「今…凄い寒気が…」


遊「風邪か?夏風邪はしつこいぞ?」


鬼「風邪…なのか…?嫌な予感がするんだけど…」


遊「折角の花火大会なのに、健康管理はしっかりしとかないと…」


鬼「うーん…なんか風邪引くような事したかな…」


遊「帰ったら薬飲んで大人しく寝るんだな」


鬼「じゃあ、気分転換に遊星でも見とこう」


遊「何で俺を見るんだ」


鬼「だって珍しく浴衣着てるし…」


遊「父さんが着ろと五月蠅かったんだ。最終的には無理矢理でも着せようとしていたからな」


鬼「へぇ…まあ、似合ってるから良いんじゃねぇの?俺的にはもう少し胸元が開いてたら合かk」







――ゴスッ







鬼「いってぇ!!」


遊「何だ?」


鬼「どっからか物が飛んできたぞ!何だ一体!」


遊「中身の入った缶が飛んで来たな」


鬼「なんで!?何事!?」


遊「鬼柳……なんか人に恨まれるような事したか?」


鬼「してない!してない!……と、思いたい!」


遊「可能性はあるな」




++++++++++++++++++++











ブ「ちょっとクロウ!流石に中身入り缶を投げるのはどうかと思うよ!」


ク「丁度手元にあったのがそれだったんだ。仕方ないだろ」


ブ「嘘!さっき一番デカイ缶買って、ずっと投げるタイミング測ってたじゃないか!」


ク「あー、もう五月蠅い!バレるだろ!」


ブ「というか、クロウは何がしたいんだよ?!折角の娯楽なのに…」


ク「なんていうか鬼柳って名前聞いただけでイライラする」


ブ「可哀想に鬼柳…。特に何もしてないのに…。クロウ、それってただの嫉妬でしょ?」


ク「は?」


ブ「ごめん、冗談だからそんなに怖い顔でこっち見ないで」


ク「あ!鬼柳の野郎移動し始めたぞ!ほら、早くしろ!」


ブ「うぅ…クロウを止められなくてごめん…マスター、鬼柳…」









鬼「やっぱ祭りに来たら、焼きそばにたこ焼きだろー」


遊「フランクフルト買っておいたぞ」


鬼「さっすが遊星!分かってるー」


遊「そろそろ花火の打ち上げ時間だし、場所取りにでも行くか?」


鬼「俺、良い穴場知ってるぜ!そこなら、人も来ないし絶景だし、持って来いの場所だ」


遊「鬼柳は本当、そういう場所を見つけるのが上手いな…」


鬼「いろんな所出歩いてるからな。とりあえず、こっち!(グイッ」


遊「鬼柳、別にそんなに急がなくても良いんだぞ?」


鬼「人の行き来も激しくなるだろー?その前に移動しておくのが一番ってな」


遊「だからってそんなに引っ張らなくても…っ」









ク「なんだあれ腹立つ」


ブ「(これ絶対嫉妬だよね?嫉妬ってやつだよね?兄弟に母親取られてる気分だよね?)」


ク「なんだアイツ。なんなんだアイツ。殴って良いのか?なぁ、殴って良いのかアレ?」


ブ「クロウ、もう少し穏便に…」


ク「穏便?そんな単語消えちまったな」


ブ「とんでもない脆いプログラムしてるんだね、ビックリだよ」




+++++++++++++++++++++








遊「へぇ……こんな場所があったんだな…」


鬼「ここ、夜景も綺麗だろ?俺のお気に入りの場所なんだよなー」


遊「ドミノシティの一帯が見渡せるんだな…」


鬼「そ。そこが気に入ってるんだよね」


遊「ずるいな、ココを一人占めしていたのか?」


鬼「そんなこと言うなって!ここ教えたの、遊星だけなんだしよ」


遊「そうなのか?それは光栄だな」


鬼「遊星も人に教えるなよ?秘密の場所なんだからさ」


遊「あぁ、分かってる」









ブ「ほら、イイ感じな雰囲気じゃないか…これを壊したらただの空気が読めないっていうか…」


ク「………」


ブ「聞いてる!?そこで黙々と石を集めないで!それどうするの投げるの!?」


ク「え?なんのことだ?」


ブ「そこでしらばくれないで!?」


ク「邪魔をして何が悪い」


ブ「開き直った!!クロウの嫉妬はあからさま過ぎるよ!」


ク「嫉妬じゃねぇよ!!」


ブ「えぇ!?逆切れ!?」


ク「俺の防衛機能が叫んでるんだよ…鬼柳を始末しろと…」


ブ「思い出して!僕たちは“ただの”携帯なんだよ!?兵器じゃないんだよ!?」


ク「携帯の防衛機能には逆らえねぇ」


ブ「防衛機能はそんな物騒な機能じゃないよ!」











遊「………なんか声がしないか?」


鬼「声?祭りの方じゃねぇの?」


遊「いや…なんかこう…聞き慣れ過ぎたような声が…」


鬼「言っとくけど、俺はホラーが大の苦手だ。それ系統は遠慮する」


遊「いや、勿論そうじゃないんだが…」


鬼「えぇー…でも止めてくれよ、なんか怖いじゃねぇか…しかも夜だし」


遊「まあ…俺の気のせいだろう。悪い、鬼柳」


鬼「全く……もしも霊だったら、泣き叫びながらお前にしがみついて隠れるぐらい苦手なんだからな…」


遊「鬼柳、言っておくが俺もホラーはダメだぞ?ホラー関係だったら泣く自信がある」


鬼「そんな真顔で言う事じゃねぇぞ。そんなに冷静で頼りになりそうなのに、ホラー無理なのか」


遊「父さんに幼い頃からずっとホラーを強要されてたことがあってな。トラウマなんだ」


鬼「そりゃトラウマになるわ…。でも遊星がホラー無理かぁー…ギャップって凄いな、遊星が凄く可愛く見えてくるわ」


遊「鬼柳も普段より頼りなく見える」


鬼「俺の事情けない男だと見てたの!?酷い!」


遊「そこが鬼柳らしいんじゃないか。嫌いじゃないぞ?」


鬼「遊星…、優しいのか厳しいのか分かんねぇ…っ」


遊「よく言われる。とりあえず、鬼柳がどうであれ、俺は好きだぞ?鬼柳の事」


鬼「遊星……っ(キュンッ」











ク「………」


ブ「ストーップ!!ストップクロウ!!それ石じゃない!岩!岩だから!」


ク「止めんな!!アイツは始末しないといけねぇんだ!」


ブ「お願い落ち着いて!そのまま投げたら遊星にも当たるから!」


ク「なら、真上から落とす」


ブ「ちょっと誰かー!誰かこの携帯止めてー!!」




+++++++++++++++++++









――パァンッ






遊「久々に花火を見たが…綺麗だな……」


鬼「……花火で輝いてる遊星の横顔の方が綺麗だわ…」


遊「おい、そんな真顔で言うな。花火を見ろ、花火を」


鬼「いや、マジで見惚れてしまった…くそっ、女っ気がないとこうなるから困るぜ…」


遊「なら、その辺でナンパでもしてきたらどうだ?俺はここで花火を眺めとくから」


鬼「いい、花火の方が良い」


遊「痩せ我慢しなくても良いんだぞ?」


鬼「しーてーなーいー。それに、なーんかその辺の浴衣の女の子見ても、いや可愛いんだけど…遊星の方が美人過ぎてなんとも」


遊「眼科に行け」


鬼「お前は分かってない!お前が鏡を見ろ!鏡を!」


遊「毎朝見てるぞ…」


鬼「あぁ、そうね、自分の魅力は自分じゃ分かんねぇか…」


遊「第一、美人と言われるのも初めてだ」


鬼「簡単に口に出せないんだろうよ、周りの人間は」


遊「そういうものか?」


鬼「少なくとも、遊星は美人!浴衣もこんなに似合ってるし、肌綺麗だし瞳はパッチリだし睫毛長いし…」


遊「………おい、鬼柳?」


鬼「口は小さいし唇綺麗だし、鼻筋通ってるし身体細いし…」


遊「………鬼柳」


鬼「あれ、お前完璧?なんだよそれずーるーいー」


遊「意味が分からない」


鬼「とにかく、遊星は美人。これ結論な」


遊「知りたくもない結論だな」


鬼「それから、遊星は笑うと可愛いんだよなー」


遊「あまり笑わないけどな(クスッ」


鬼「それ!その微笑み方可愛いー!(ギュッ」


遊「鬼柳、暑苦しい」


鬼「遊星が美人で可愛いのがいけないんだよ、皆同意してくれるから」


遊「しないだろう」


鬼「するする。お前のとこのブルーノも同意する。クロウは知らねぇけど(ムギューッ」


遊「きりゅ…っ!苦しい…っ!」






――ドゴッ







鬼「い゛ってえ゛ぇぇえ!!」


ク「いい加減にしろてめぇええ!!」


ブ「あぁあああもう僕知らないよぉお…っ」


遊「クロウ、ブルーノ…来てたのか?」


ブ「ごめんなさいマスター…!クロウ止め切れなかった…!」


遊「じゃあ、さっきの缶もやはりクロウか?」


ブ「止めさせようと思ったんだけど…というか、さっきまで必死に止めてたんだけど…」


遊「全く、クロウにも困ったものだな(フゥ」


ブ「マスター、マスター、後ろ見て後ろ。もっと酷い事になりそうっ!花火大会で血の花が咲きそうっ!」


遊「おっと大変だ」


ブ「そこで冷静なマスターが怖いよ!」


遊「クロウ、ストップ。イイ子だから、犯罪に手を出すのは止めよう」


ブ「どういう説得!?」


ク「止めんな!!もう俺は我慢の限界なんだ!」


遊「逆に聞くが、一体何の我慢が限界になったんだ?」


ク「しらねぇな!」


遊「クロウ、自分の発言に責任持つ事を学ぶべきだ」


ブ「二人のやり取り、たまに訳分からなくなるよ…」


鬼「ちょっ…頭から血出てない…?大丈夫…?」


ブ「聞くけど…頭に岩が直撃したのに、なんで血出てないの…?」


ク「チッ、無意識に手加減しちまったか」


鬼「岩投げて手加減!?手加減ってなんだっけ?!」


遊「まあまあ、落ち着けクロウ。ほら、折角の花火大会なのに、花火を見ないでどうするんだ?」


ク「血の花火見るわ」


鬼「そこで俺を見るな!!止めろっその洒落にならない目!」


ク「洒落じゃねぇよ」


鬼「ひぃぃっ!こいつ携帯じゃねぇよ絶対!」


ブ「マスター、真剣にクロウを止めないと花火大会終わっちゃうよ?鬼柳の花火見ることになっちゃうから、ね?」


遊「……結構あの二人を見てるのも面白いんだが」


ブ「駄目だから!マスター!!」


遊「仕方ないな…。クロウ(ギューッ)イイ子だから、そろそろ鬼柳を許してやれ。な?(ナデナデ」


ク「そのガキを宥めるようなやり方止めろ!」


遊「はいはい(ナデナデ)折角の花火が台無しになるから」


ク「…………」


ブ「(なんとか落ち着いたみたい……)」


鬼「(すげ……あのクロウを抱きしめて撫でただけで止めた…)」


ブ「(あれ、クロウのトラウマなんだよ)」


鬼「(は!?愛情表現をどうしたらトラウマに昇華出来るんだよ…)」


ブ「(不動家で色々あって…)」


遊「クロウ、これ以上暴れたら…またあんなことになるぞ?(ニコッ」


ク「(ビクッ)」


鬼「(なにあの天使の微笑み…無邪気な笑顔なのに邪気がある!)」


ブ「(頑張ってクロウ!)」


鬼「(クロウの半泣き初めて見た…っ)」


遊「ほら、皆で花火でも見ようじゃないか」


ク「……はい、マスター…」


ブ「クロウ……っ(ブワッ」


鬼「(えぇええすっげぇ気になるぅぅ…)」




+++++++++++++++++++++








ブ「クロウはね、ただ嫉妬してただけだよ(多分」


遊「嫉妬か。あいつも可愛いとこがあるんだな」


ブ「ねー。なのに素直じゃないんだもんね」


遊「少しは素直になるようにプログラムを変えるか」


ブ「そうだね、一度くらいは変えて良いんじゃない?」


遊「それから、鬼柳に対する態度もどうにかしないとな」


ブ「何で鬼柳に対してあぁなんだろうね?」


遊「プログラムって、もしかして日々変化するのだろうか!」


ブ「あぁ……研究者の顔だ…」

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