「お見合い話」






不「ゆうくん、ゆうくんは結婚する気ない?」


遊「は?」


不「実はね、お見合いの話がきてるんだけど…」


遊「俺はまだ18歳ですよ?」


不「うん、だから婚約者として」


遊「いや、俺は結婚する気ありませんし…」


不「でもね、ゆうくん?いずれは結婚することになるんだよ?だったら、今のうちに婚約しておけば、後々楽だと思わないかい?」


遊「俺は、クロウとブルーノの面倒見で大変なので」


不「そんな育児ママみたいな理由つけて…」


遊「間違えました。クロウとブルーノと父さんの世話で大変なので」


不「心が痛いよ。しかも私は三番目なんだね…」


遊「それじゃあ、夕飯作って来るので」


不「もう…ゆうくん、話を反らすんじゃないよ」


遊「お見合いはお断りします。そんな余裕ありませんので」


不「相手方はゆうくんのことを気に入っているんだよ?」


遊「気に入ってくださるのは嬉しいですが、お見合いする気は毛頭ありません」


不「ゆうくん〜……」














不「――というわけなんだけど、君たちからも説得してくれないかなぁ?」


ク「本人が拒否ってんだから諦めるしかねぇだろ?それにアイツ、頑固だし」


ブ「一度決めたことは絶対に曲げないしね」


不「でも、私の会社の今後としても、良い話なんだよ…このお見合いは…」


ク「第一、遊星を気に入ってるってそれ、内面を知らないからじゃねぇの?」


不「いやいや、ゆうくんがあんな辛辣な態度取るのは身内だけだよ?ゆうくんは本当は純粋な良い子なんだから」


ブ「でも、父親の不動博士には辛辣なんですね?」


不「………そ、それでも良い子なんだよ…!」


ブ「でも、確かにマスターってモテるよね?」


ク「………そうか?」


ブ「あれ、気づいてない?マスターは会社でも、女性職員の方々に人気あるんだよ?」


不「あぁー、ゆうくんは紳士的だし、物腰柔らかいし凄く優しいし…パパ似だからそりゃモテるよ」


ク「……親父さんの自意識過剰ぶりがあいつに遺伝しなくて良かったわ(ボソッ」


不「おや、ハッキリ言うね君は」


ブ「まあ、言えることは……何を言っても説得は不可能だと思うよ?」


不「うぅーん……せめてお見合いくらいは…っ」


ブ「……そうだ!クロウが挑発すれば乗るんじゃないかな?」


ク「そこで面倒なもんを俺に押しつけんな」


ブ「クロウなら、マスターを挑発するの余裕でしょ?」


不「いや、私はクロウが挑発されて終わると思うよ」


ブ「それもそうかー…」


ク「……おい」


ブ「他に良い方法はないかなー……」


ク「……あのなぁ、本人が嫌だって言ってんだから、無理矢理見合いさせなくても良いだろ」


不「でも会社が……」


ク「会社と息子、どっちが大切なんだよ」


不「ゆうくんだ!!」


ク「なら見合いは無しで良いじゃねぇか」


不「でも……っ、正直心配なんだよ…ゆうくんにお嫁さんが出来るか…」


ブ「マスターなら…女性の方からきそうだけど…?」


不「でも、ゆうくんの方がその女性を好きにならなきゃダメだろう?ゆうくんの女性の好みは、私にも分からないんだよ」


ブ「確かに、マスターはクール&クレバーだから…表情も変わんないし、表情読めないし…」


不「ということで、クロウ。ゆうくんに聞いて来て」


ク「いや、だからなんでそこで俺をパシリに使う」


ブ「いいから行ってきなよ、マスターの人生と不動博士の会社の末路がかかってるんだから!」


ク「そんな重荷を携帯の俺に背負わすな!!」




++++++++++++++++++++








遊「どうしたんだクロウ、俺の目の前で珍しく正座して」


ク「(くそ……結局こうなるのかよ…)」


遊「クロウ、用があるなら早く言え」


ク「………お前、女の好みは?」


遊「……思考プログラムに誤作動でも起きたのか?」


ク「………。良いからさっさと言えっての」


遊「どうせ親父に頼まれたんだろ」


ク「分かってんなら早い、さっさと言え。そして俺を解放させてくれ」


遊「お前もつくづく押しに弱いな」


ク「…………」


遊「まあ、良いだろう。俺の女性の好みか……」


ク「………どうしたよ」


遊「……考えたことも無かった」


ク「……お前、本当に男か?」


遊「失礼だな、俺は純粋なんだ」


ク「純粋な奴は自分を純粋とか言わねぇよ」


遊「好きなタイプ……タイプ……?」


ク「…………」


遊「…………あ…じゃあ……」


ク「……ん?」


遊「……タイプは…母さんみたいな人かな……//」


ク「………(マザコン?とか聞いたら、顔面に正拳入れられるかな)」


遊「マザコン?とか考えているだろ」


ク「んん!?」


遊「……別に良いさ、あまり母さんの記憶は無いんだ。憧れるのも仕方ないだろ?笑いたきゃ笑え」


ク「………あはははは」


遊「殴るぞ」


ク「笑えっつったのそっちだろ。……別に変だとは思わねぇよ。それ、親父さんに伝えて良いんだな?」


遊「あぁ、構わない。親父が感動してこちらへ来ようとしたら止めてくれ。でないと、この部屋の入口に罠を仕掛ける」


ク「お前さ、親父さんの扱い酷いよな」














不「ゆ、ゆうくんが……そんなことを…?」


ク「あぁ、言ってた」


不「ゆ……ゆうくん……っ(涙目」


ブ「不動博士、ハンカチどうぞ」


不「有難う…っ、そうか…ゆうくんも母親が大好きなんだね……」


ブ「そういえば不動博士?マスターの母親はどうしたんです?」


不「妻はね、ゆうくんを生んで少し経ってから、仕事が忙しくなっちゃってね…。今は海外で働いてるんだ。いつ戻って来れるか分からなくてね」


ク「連絡とかねーの?」


不「連絡したら、辛くなっちゃうからって…妻がしないようにしてるんだよ」


ブ「マスターは寂しくないのかな?」


不「ゆうくんも、多分その事に感づいてると思うんだ。だから、なにも言ってこないのかもね…」


ク「遊星がねぇ……」











遊「父さん、夕飯は何が食べたいですか?」


不「何でも良いよ。……ねぇ、ゆうくん?」


遊「なんですか?」


不「母さんがいなくて、寂しくないかい?」


遊「……なんですか急に?」


不「寂しくは無いのかい?我が儘言っても良いんだよ?」


遊「………この家には、父さんもクロウもブルーノも居ます。確かに、母さんには会いたいけど…別に寂しくないです」


不「ゆうくん……っ(ギュッ」


遊「……父さん、苦しいです」


不「……本当に良い子に育ったね…遊星」


遊「……父さんと…母さんの子ですから」


不「……そうだね、本当だね…」










ブ「どう?クロウ?少しは遊星に対して素直になろうと思った?」


ク「全然」


ブ「……クロウ……」


ク「少なくとも、俺と言い争ってる時の遊星は、どんな時よりも生き生きしてるじゃねぇか。このままでも良いだろ?」


ブ「クロウって、優しさが素直じゃないよね」


ク「ほっとけ」

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