「やきもち」
遊「携帯新モデル登場…今度は何でも素直な子、機能もフルに発揮……か」
不「おや?そろそろ遊星も新型携帯に買い替えかい?」
遊「新型レベルにバージョンアップ出来ませんか?」
不「なんだ、買い替えないのかい?」
遊「俺はあの二人を気に入ってるんで。買い換える気は全くありません」
不「せっかくパパが買ってあげようと思ったのに…ゆうくんの誕生日近いしね」
遊「良いです、俺はあの二体で十分です」
不「物持ち良いゆうくんも素敵だよ」
遊「なら、息子のお願い聞いてくれますか?洗濯物取りこんで来てください」
不「はーい」
遊「クロウ!何処だ、クロウ!」
ブ「しーっ!マスター、クロウ寝てるよ」
遊「……あぁ、悪い。寝ているのか」
ブ「さっきね。眠そうにしてたと思ったら、急にコテンって寝ちゃった」
遊「……静かにしてると、可愛いもんなんだがな…」
ブ「フフっ」
遊「ブルーノ?」
ブ「いや、二人揃って同じこと言うもんだなぁって。可笑しくなっちゃって」
遊「同じこと?」
ブ「クロウもね、遊星が寝てる時、同じように頭撫でながら『静かにしてれば可愛いのに』って呟いてるんだよ」
遊「……知らなかった」
ブ「まあ爆睡してるからね、知らないのも無理ないよ」
遊「自分の振り見て我が振り直せ、か」
ブ「本当、二人とも似てるね。似てるからこそ、反発するのかな?」
遊「クロウが素直なら反発しない」
ブ「それ、クロウも言ってた」
遊「……持ち主がいない時に好き勝手言う奴だ……」
ブ「それは遊星もでしょ?」
遊「……そうかもな」
ブ「素直じゃないんだもんなぁ。たまには素直になってみたら?」
遊「俺はともかく、クロウがな…」
ブ「遊星が素直になれば、クロウも素直になってくれるんじゃない?」
遊「成程、ものは試しと言うわけか」
ブ「……あれ、何か勝負みたいな空気になってるんだけど…そういう意味で言ったわけじゃないんだけどなぁ」
遊「心配するな、別にそんなつもりじゃないさ」
ク「……ん…、…あ、寝ちまったのか…」
遊「起きたか?ずいぶん寝ていたが、疲れていたのか?」
ク「疲れてたわけじゃねーけどよ…」
遊「充電するから、コード差すぞ(カチッ」
ク「もうマーカー赤くなってんのか?」
遊「いや?今のうちに充電しておこうかと思っただけだ」
ク「……珍しいな」
遊「そうか?あぁ、それから身体の点検をするから、じっとしていろ」
ク「………」
遊「少しネジが緩んでる部分が何箇所かあるな…。工具取って来るから、そのまま待っていろよ?」
ク「おう」
ク「おい、ブルーノ」
ブ「なに?」
ク「遊星の奴、どうしたんだ?妙に雰囲気が違うぞ」
ブ「そう?普段と一緒じゃない」
ク「いや、普段はもっと不機嫌っていうか不愉快っていうか…そんなオーラ出してるじゃねぇか」
ブ「僕にはあれが普通だけど?それってクロウだけじゃない?」
ク「……俺にはあの態度かよ」
ブ「僕はクロウと違って、素直だからね。クロウも少しは素直になったら良いんじゃない?」
ク「俺は別に…」
ブ「知らないよ、その調子を続けていずれ放って置かれても」
ク「………」
ブ「そもそも、持ち主の言う事は絶対っていう契約が僕たちにはあるんだからね」
ク「………」
ブ「あ、そうそう。クロウが寝てる時、遊星がテレビの新型携帯CMを見て、溜息ついてたよ」
ク「………は?」
ブ「買い換えるのかな?」
遊「悪い、悪い。工具を探すのに手間取っていた」
ク「……いや」
遊「ネジを締め直すから、動くなよ」
ク「あぁ」
遊「……どうした?やけに大人しいな」
ク「大人しくしてろって言ったのはそっちだろ」
遊「まあ、そうだが……」
不「ゆうくん、ゆうくん」
遊「なんですか?」
不「さっきの新型携帯なんだけどねー」
ク「!!」
遊「さっきの新型がどうしたんです?」
ク「おい、遊星」
遊「ん?なんだクロウ」
――ガシッ
ク「良いか遊星!新型っつっても今までのとほとんど大差はねぇ!だから買う必要もねぇ!」
遊「あ…あぁ…?」
ク「つか、お前はそんなに携帯を使わねぇだろ!買う意味もねぇ!」
遊「え、あぁ、いや……」
ク「分かったら返事!俺以外の携帯に目移りすんな!!」
不「おぉ…私の前で凄いプロポーズを…」
ク「……は?」
不「要するに、『他の男に目移りするな、俺だけを見ていろ』ってことだね!」
ク「………ちっ、違ッ!!///」
遊「クロウ、別に他の携帯を買い換える気は全くないんだが…」
ク「は!?いや、だってさっきブルーノがッ!!」
ブ「僕はただ、そういうCMを見ていたよって言っただけだよ」
ク「……ハメたな!!ブルーノ!!」
ブ「えぇ!?別に僕はそういうつもりで言ったわけじゃ…!!」
不「どうするんだい、ゆうくん!こんな熱いことを言われちゃあね!」
遊「何で父さんがワクワクしてるんだ。ときにクロウ?さっきの言葉は本音か?」
ク「うぐ…っ///」
遊「本音か?どうなんだ?それとも、一時しのぎの嘘か?」
不「どうなんだい?普通なら、機械は嘘をつかないけど?」
ブ「どうなの?クロウ?」
ク「………(ダッ」
遊「また逃げたか。捕獲してくる」
不「私も捕獲に手伝おうかなー」
ブ「僕も手伝うよー」
遊「全く…逃走機能を付けてもいないのに、逃げるのが好きな奴だな」
ブ「捕獲しました!」
遊「よくやった、ブルーノ。お前は良い子だな(ナデナデ」
ク「この家は……っ、要塞かよ…!何で天井からオリが落下してくんだよっ」
不「不動家名物、ネズミ捕り」
ク「どんな家だよ!?」
不「ブルーノが上手く追いこんでくれたから、捕獲できたんだよ」
ク「この裏切り者ぉおおぉおおお!!」
遊「さて、クロウ君。聞きたいことが山ほどあるが…まずはさっきの答えを聞かせて貰おうか」
ク「………自動スリープモードに移行しま……」
遊「(カチッ)」
ク「いてぇえええ!!どういうタイミングでコード差してくんだよ!」
遊「お前が逃げるからだろう。それとも、逃げることしか出来ない、呆れたやつなのか?」
ク「なんだと!?」
遊「自分の都合が悪くなればすぐ逃げる。全く、弱い奴だな」
ク「そこまで言うなら言ってやるよ!なんでもこいってんだ!!」
遊「(ニッコリ)」
ク「ハ…!…くそっ…誘導された……ッ」
遊「じゃあ聞かせて貰おうか。クロウは、俺に自分だけを使って欲しいんだな?」
ク「………」
ブ「クロウ、何事も素直にね。もう逃げられないんだから、観念しないと」
不「ゆうくんを怒らせると、酷い目に遭うよ」
遊「ほら、クロウ」
ブ「さあ、さあ…言っちゃおうよ」
不「男らしく言った方が楽になるよ?」
ク「言うよ言えば良いんだろ!!あぁそうだよその通りだよッ!他の携帯に嫉妬して何が悪いってんだよ!持ち主を自分だけのものにしたいって独占欲は、どの携帯にもある話だろうがッ!なぁ!ブルーノ!」
ブ「……いや…僕は別に……?」
ク「空気を読めぇぇぇぇぇ!!!」
ブ「ごっ、ごめんなさいぃいぃいい!!!」
不「もう、ゆうくんはモッテモテだね!」
遊「もとはと言えば、父さんのタイミングの悪さが原因ですからね」
不「ごめんなさい」
遊「あのな、クロウ。新型携帯の購入を考えてるのは、父さんのことだぞ?」
ク「……なんだって?」
遊「父さんが、出張用に新型の携帯を買おうとしていたんだ」
ク「………じゃあ、その携帯ってのは…」
遊「俺のじゃなくて、父さんのだ」
ク「――――っ!?/////(カァァァァッ」
ブ「全部クロウの勘違いだよ」
不「ごめんね、クロウ君ー…。でも、ゆうくんは君を手離す気はないみたいだから、喜ぶと良いよ…っ」
遊「あぁ。俺はクロウしか使わないからな。ブルーノも最近サポート機能しか使ってないしな」
ク「…………」
ブ「余計な心配だったね、クロウ」
遊「だが、お前の本心が分かっただけでも十分だな」
ク「―――ボフンッ」
ブ「あぁあぁああ!!クロウがショートしたあああ!!」
不「よっぽど恥ずかしかったんだね、思考プログラムに熱が溜まっちゃったのかな」
遊「いちいち世話の焼ける……。修復作業をするか…」
ブ「ぼ、僕も手伝うよ!」
遊「頼むよ、ブルーノ。修復が終わったら、思う存分クロウを弄るぞ」
不「ゆうくん、今日も歪みの無いドSだね…そんな子に育てた覚えは無いんだけどね」
++++++++++++++++++
遊「やっと復活したか」
ク「ひと思いに壊してくれ」
遊「落ち着け。そう照れなくても良いだろ」
ク「プログラムを初期化してくれ」
遊「後悔するほど言いたくなかったのか?」
ク「記憶プログラムを全破壊してくれ」
遊「おい、話を聞けよ」
ク「思いっきりバラしてくれ」
遊「また無視か。手の掛かる子だな、お前は」
ク「………」
遊「クロウ、いい加減に会話のキャッチボールをしようか。ドッジボールじゃなくてな」
ク「………」
遊「(こんなに頭を殴りたいと思ったのは初めてだ)……クロウ、おい…」
ク「………」
遊「…………(ギュッ)そんなに俺が嫌いか?(ボソッ」
ク「んなわけねーだろ」
遊「会話出来るんじゃないか。随分と無視してくれたな(ギューッ」
ク「苦しッ…身体の部品折れる…ッ」
遊「嬉しいんだろ?俺に相手されるのが嬉しいんだろ?どうなんだクロウ(ギリギリ」
ク「相手っつーか…ッ、壊しに掛かってるだろ…っマジっ、折れる…っ」
遊「……ま、これくらいで勘弁してやるか(パッ」
ク「あ」
遊「あ?」
ク「…………」
――グイッ
――ギュッ
遊「んっ……クロウ?」
ク「黙ってろ」
遊「………なら、少し力抜いてくれないか?ちょっと、息苦しい」
ク「………ん」
遊「……それぐらいでいい。甘えたいなら最初から素直に言えば良いものを…」
ク「黙れっつったろ(ギューーーッ」
遊「ギブ、ギブ、締まる。内蔵が外へ除外される」
ク「甘えてやってんだから大人しくしてろ」
遊「甘えさせてるのにその態度はどういうことなんだ」
ク「…………(グイッ)」
遊「ン…ッ!?」
ク「……人間にも、…っマナーモードが必要、じゃねぇの…?」
遊「……んっ、…はッ…ァあっ…」
ク「……ハっ、そうやって、大人しくしてば良いんだよ…」
遊「ハっ…、はぁっ…どこ、で覚えて来た…っ///」
ク「さあ…、何処だろうな…」
遊「この……生意気な携帯……ッ///」
ク「今更じゃねぇの……?何、バラす?バラせんの?」
遊「……クロウが寝てる間にっ自爆ボタン付けてやる…っ」
ク「おい、それマジですんなよ」
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