「遊城家の人々」







『遊城家の人々』








万「旦那様、朝です。お目覚めください」


十「後…三時間……」


万「今すぐ起きるか、永遠に眠るか。どちらかお選びください」


十「起きます、起きます。起きますよ…」


万「朝食の準備も出来ていますので。これにお着替えください」


十「まだ6時じゃんかー…もう少し寝てても良いだろー?」


万「目を覚まさせてあげましょうか?痛いですけど」


十「その右手の握り拳を下してくれ」


万「では、こちらにお着替えを」


十「(俺の執事は本当怖いな…)」











十「今日の予定はー?」


万「10時から殿下がお越しになります。11時から企業視察。13時から執務をしていただきます」


十「パス」


万「ヨハン、手枷と足枷持って来い」


十「主人にその態度ってどうなの」


ヨ「これでいいか?」


十「おい、持ってくんな」


明「鎖も一応持ってきたわ」


十「え、なんなの遊城家の使用人は。なんでこんなにドSしかいないの?」


万「旦那様が無能だからです」


十「無能って言われた。傷ついた。俺、不動家に行く」


明「追い返されるのがオチです」


十「門さえも通過できなさそうじゃんか…」


万「我が儘言っていないで、早く自室へお戻りください」


十「………」












十「俺のとこの使用人、酷いと思わないかー?」


遊「優秀ではないですか」


十「そぉかぁー?主人に向かって簡単に手をあげるんだぞ…」


鬼「紅茶が入りました。どうぞ」


遊「有難う、鬼柳」


十「サンキュー、鬼柳。……鬼柳、俺のとこで働かない?」


遊「十代さん、鬼柳は俺の執事なので勧誘は止めていただきたい」


鬼「申し訳ありませんが、私は身も心も坊ちゃんに捧げておりますので」


十「むぅ……俺の執事と取り換えてくれ」


万「では、私は不動家でお仕え致しましょう」


遊「優秀な執事が来てくれるのか?俺は大歓迎だ」


万「私で良ければ、お仕えさせていただきます」


十「おい、ちょっと。主人の前で自分を売るなよ。むしろ、俺を雇ってくれ遊星」


遊「どういうことなんですか」


鬼「ですが、十代様?」


十「ん?」


鬼「もしも不動家に仕えた場合、まずは不動家の長男にご挨拶しなければなりませんよ?」


十「………やっぱ俺、遊城家で頑張ります」


遊「そんなにクロウが苦手なんです?」


十「いや、苦手というか……クロウの俺を見る目が冷たいというか…」


万「それは、貴方が散々幼い遊星様を弄って遊んでいたからでしょう?」


十「……えへ☆」


万「旦那様、殴って良いですか?無性にイラッときました」


十「良くねぇよ!お前、主人に対する態度を勉強し直した方がいいぞ!」


鬼「確かに、坊ちゃんの可愛がり方が異常でしたね」


十「だって、幼い時の遊星は女の子みたいに可愛かったもんなー?」


遊「いや、俺に言われても困ります」


十「ほっぺたもぷにぷにしてたし、そりゃ可愛がりたくなるだろうー?」


万「貴方は限度というものを知りませんからね。遊星様が嫌がっても、弄るのを止めなかったでしょう?」


鬼「それを、見兼ねたクロウが止めに入ったんですよね」


十「あぁ、鳩尾に一撃もらった」


遊「そう…だったか?」


鬼「坊ちゃんは幼かったので、覚えておられないのも無理はないですよ」


万「そして、蹴られた貴方は仕返しとばかりに、クロウ様を抱きしめて離しませんでしたよね」


十「そう…だったかなー……?」


遊「その時の写真はないのか?」


鬼「残念ながら」


遊「くそっ、勿体ない」


十「なら、今から抱きしめに行こうか?」


遊「行きましょうか」


万「申し訳ない、うちの馬鹿旦那が…」


鬼「お互い様です」












遊「やぁ、クロウ。仕事は進んでいるか?」


ク「今、仕事が中断しました」


遊「この野郎。お前にお客様だ」


ク「お客ですか?」


十「ひゃっほうクロウー!!」








――ガバーッ







ク「むぐっ!!」


十「いやぁー、こんなに大きくなっちゃってー!お兄ちゃん感無量だぜー!」


ク「はなっ…、離してくださ…っうぐっ」


遊「(シャッターチャンス!)」


鬼「(了解です)パシャッ」


ク「てめっ、なに撮って…っ!」


十「幼いころのクロウも可愛かったけど、今もそんなに変わらないなぁーっ」


ク「むぅっくるし…っ」


万「旦那様、そろそろそのへんにしないと…」


十「いくらクロウでも、俺から逃れられまい!」


ク「…………っ」


鬼「坊ちゃん、あれは窒息寸前ですよ」


遊「あぁ、身長のせいだな」


万「そろそろ止めた方が宜しいかと。私には止められません」


鬼「後でどやされるの嫌なので、坊ちゃん止めてください」


遊「止めるのを主人に任せるのか、ビックリだ。




 十代さん、そろそろ止めていただけませんか?十代さんが返り討ちにあっても、不動家は責任取れません」


十「そういうおっかない止め方止めてくれよ(パッ」


ク「――ッ、ゲホッ、ゴホッ!」


遊「大丈夫かクロウ?顔が真っ青だが」


ク「ハッ……、ハァっ……ま、誠に失礼ながら…っ、十代様…、ハァ…面貸していただきたい…」


十「ごめん、やりすぎた。許して」


遊「十代さん、俺にはクロウを止めることはできないので」


鬼「坊ちゃん、止めるのが面倒なだけですよね」


遊「そうとも言う」


十「そうとしか言わないよね?」


ク「万丈目さん…、許可をいただきたい」


万「どうぞ」


十「ちょっと!?」


万「煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」


十「ちょっとおお!?」


ク「十代様、まずはあちらに移動いたしましょうか」


遊「鬼柳、喉が渇いた」


鬼「またお茶に致しますか。何かお飲みになりたいものは?」


遊「カルピス飲みたい。万丈目さん、あちらでお話でも」


万「えぇ、ご一緒させていただきます」


十「止めようよ!!」




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