「悠々日」
『悠々日』
亞「こんにちはー!」
可「こんにちは」
鬼「おや、いらっしゃいませ。お久しぶりですね」
可「近頃、お稽古とかが忙しくて、あまり来れなかったの」
亞「ねぇねぇ、遊星は?」
鬼「坊ちゃんなら、現在逃走中で捜索中です」
可「……また逃げたの?」
鬼「えぇ。坊ちゃんの逃げ癖は、日々磨きが掛っております」
可「遊星も懲りないのね」
鬼「五分以内に捕獲致しますので、裏庭でお待ちになってはいかがですか?ちょうど、裏庭でクロウが花植えをしているところですから」
亞「分かった!行ってくるよ!」
可「鬼柳さんも、また後で!」
鬼「えぇ。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
亞「クロウー!」
可「クロウー!遊びに来たわよー!」
ク「あぁ、またご無沙汰な顔並びですね」
亞「もう!その敬語止めてよね!」
可「水臭いじゃないー」
ク「貴方達二人も、坊ちゃんに似てきましたね」
亞「遊星は関係なしに、敬語は嫌なんだよ」
可「そうよ、だって私たちが幼い頃から面倒見てくれてたんだもの、お兄ちゃんみたいなものじゃない」
ク「わーったよ。普通に戻せば良いんだろ」
亞「そう!それで良いんだよ」
可「そういえば、お花植えてたんでしょ?」
ク「先日、坊ちゃんのお得意様から花の苗を大量に貰ってな。今、その植える作業中」
可「私も手伝うよ」
亞「俺も手伝うよ。三人でやったほうが早いって」
ク「でも、服も汚れちまうぞ?」
亞「気をつければ大丈夫!ね、龍可?」
可「うん!」
ク「…そんじゃ、その親切に甘えさせてもらうかな」
鬼「坊ちゃん、もう逃げないでくださいね」
遊「逃げたんじゃない、散歩してたんだ」
鬼「屋敷内を全力で走り回ることを散歩とは言いません」
遊「俺の中では散歩だ」
鬼「はいはい、分かりましたから書類片付けてくださいね」
遊「………」
鬼「それから、龍亞様と龍可様がいらっしゃっております」
遊「二人が?久々に遊びに来たのか?」
鬼「えぇ。坊ちゃんに会いたがっていましたよ」
遊「そうか……今はどこに?」
鬼「クロウのところにいるはずです」
遊「……なら、心配はいらないな。早くこの書類を片付けよう」
鬼「(こういう時だけ真面目に働くなぁ)」
亞「クロウ、こんな感じで植えて行けば良いの?」
ク「そうそう。優しく苗を持つんだぞー?大きく育ちますようにって願いを込めながらな」
可「クロウがそう願いながら植えてるから、ここのお花は綺麗に咲くのね」
ク「そう…だと良いんだけどなー」
亞「よっし、俺もクロウに負けないくらい気持ちを込めて植えてやる!」
ク「おっ、なら俺も負けねぇぞ!」
可「ある意味、お花にプレッシャー掛けてるね」
遊「フッ、どうだ鬼柳…俺の本気は…」
鬼「さすが坊ちゃん!あの膨大な量の書類を、一時間足らずで全部やり終えるなんて!」
遊「本気でやれば、このぐらい余裕だ」
鬼「なら何で最初から本気出さないんです?」
遊「言うな」
鬼「……まあ、今日のお仕事はこれだけですし、早くお二人の元へ行かれては?」
遊「そうだな、あまり待たせても悪い。行ってくるよ」
鬼「お菓子等、用意しておきますね」
遊「あぁ、頼んだよ」
亞「よっし!終わり!」
可「私も!」
ク「綺麗に植えたな。苗たちも喜んでるぜ?」
亞「お花が咲いたら教えてよ、すぐ見に来るからさ!」
可「その時は、お庭でお茶会したいわね」
ク「分かった分かった、教えるように鬼柳に伝えておくよ」
――タッタッタッ…
遊「悪いな、待たせてしまって」
亞「あ、遊星!遅いー何してんだよー!」
遊「悪い悪い、書類を片付けていたんだ」
可「捕まっちゃったの?逃げてたんでしょ?」
遊「……誰から聞いた?」
可「鬼柳さんが言ってたわよ?」
遊「(あの野郎……)」
ク「ほら、坊ちゃんもいらっしゃったことだし、手を洗って来てください」
亞「はぁーい。行こう、龍可」
可「うん」
――パタパタパタ…
ク「仕事、本当に終わったんで?」
遊「……信用ないな。終わった、鬼柳に聞いてみろ」
ク「終わったのなら結構です」
遊「龍亞と龍可の相手、悪かったな。お疲れ様」
ク「いいえ、楽しかったですよ。苗植えも手伝ってくださいましたから」
遊「言われなかったか?」
ク「何をです?」
遊「敬語止めろって」
ク「言われました、坊ちゃんの差し金ですか?」
遊「いや?俺は何も言ってない。あの二人も、お前には敬語を使ってほしくないんだ」
ク「そうは言われましてもね…」
遊「なら別の言い方をしようか?敬語似合わないから止めた方が良い」
ク「………」
遊「文句があるなら、敬語以外を使え」
ク「敬語が似合わなくて悪かったな」
遊「そうだ、それだ。その言葉遣いがお前らしいんだ」
ク「人が折角敬語で話してやってんのに」
遊「生憎だが、誰もそんなことお願いしていない」
ク「確かにそうだけどもねー!」
遊「その方が、龍亞も龍可も喜ぶぞ?」
――パタパタパタ…
亞「洗ってきたよー!」
遊「お帰り。鬼柳がお菓子を用意してくれるらしいから、屋敷の中に入ろうか」
亞「そうなの?やったー!」
可「もう、龍亞?お行儀よくしてね?」
亞「分かってるってー!ほら行こうよ遊星!クロウも!」
ク「いや、俺はまだ仕事が残ってるからな」
遊「クロウの分も準備されてると思うぞ?」
ク「はぁ?鬼柳の奴、何考えてんだよ」
遊「龍亞、龍可?お前たち二人も、クロウと一緒が良いだろう?」
亞「もちろん!」
可「クロウ、クロウも行きましょうよ!ね!」
ク「でもなぁ……」
遊「お客様のお願いも聞けないと?それでも使用人か?」
ク「……わーったよ!行けばいいんだろ、行けば…」
亞「やった!行こうクロウ!」
ク「分かったから引っ張んなって…!」
可「遊星も、大変ね?」
遊「あぁ、素直じゃない使用人が居て大変だ」
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