「旦那様」










『旦那様』









遊「鬼柳、鬼柳は髪が長いな」


鬼「不動家に来てから、一度も切っていませんから」


遊「そうか…だからそんなに長いんだな」


鬼「坊ちゃんは短い方がお好みで?」


遊「いや、似合ってる。まあ、短いのも似合うと思うがな」


鬼「お褒めのお言葉、痛み入ります」


遊「なぁ、触って良いか?」


鬼「どうぞ。大したものではありませんけども」





――サラッ





遊「不気味なほどサラサラだな…」


鬼「お手入れは欠かしません」


遊「肌触りが良い」


鬼「坊ちゃんも髪の毛お手入れしてみては?」


遊「面倒だ」


鬼「坊ちゃんらしいですね」


遊「鬼柳も、その敬語止めてくれ。髪の毛を豆結びにするぞ」


鬼「止めてー髪の毛が縮れちゃうー」


遊「本当、鬼柳は素直で良いな」


鬼「素直な方が持てるんだぜっ☆」


遊「(鬼柳はモテてたか…?)」


鬼「坊ちゃん、失礼な事考えないで!」


遊「すまない」


鬼「坊ちゃん酷いー。そうだ坊ちゃん、ご主人様がお呼びでしたよ」


遊「父さんが?」


鬼「何か用件でもあるんでしょう。行ってみては?」


遊「面倒だが…仕方ないな」














――コンコンッ







遊「失礼いたします」


不「やぁ、ゆうくん!待ってたよ!」


遊「何か御用でしょうか?」


不「実はね、数週間ほど家を空けるんだ。その間の留守番は頼めるかい?」


遊「えぇ、構いませんよ」


不「さすがゆうくん!沢山お土産買ってくるからね!」


遊「お金の無駄遣いは慎んでください」


不「息子にお土産買って来て何が悪い!」


遊「お金の使い方を考えてください。俺にとっては、無事に帰って来てくださる事が、何よりのお土産ですので」


不「ゆうくん……!なんて心優しい子なんだ!(ギューッ」


遊「オーバーですよ。それから苦しいです」


不「ゆうくんが健気なのが悪い!」


遊「なんなんですか」


不「ゆうくん、最近私を見る目が冷たい!」


遊「はいはい、そうですか」


不「ゆうくん……酷い……」
















――バタンッ





鬼「おや、お帰りなさい。ご主人様はなんと?」


遊「数週間ほど家を空けるから、その間の留守番を任された」


鬼「それは責任重大ですね」


遊「そうだな。鬼柳、敬語禁止」


鬼「はぁーい、忘れてましたーぁ」


遊「俺がこの屋敷を受け持つのもな…18歳にはキツイ。鬼柳、お前に任せる。お前なら余裕だろう?」


鬼「余裕過ぎて困るな」


遊「頼りになるな。さすが俺の専属執事だ」


鬼「そう言われちゃ頑張らないとなー。ってことで坊ちゃん、ピアノのレッスンの時間ですー」


遊「………」












ア「坊ちゃんは?」


鬼「ピアノのレッスン中」


ア「今度は逃げなかったのね」


鬼「その代わり、凄く冷たい目で見られた」


ア「それほどレッスンが嫌いなんでしょうね」

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