「日常ボイコット」
『日常ボイコット』
遊「また舞踏会を開くんだそうだ。一体今月に入って何度目だと思っているんだ父さんは。
俺にもやることが色々あるってのに。自分の予定で何もかも決めないで欲しいものだ。
いつもいつも俺が我慢してばかり。父さんは自分の仕事のことしか考えていない。全く呆れたものだ。
そう思わないか?クロウ?」
ク「あー…その…坊ちゃん?」
遊「なんだ?」
ク「いや、愚痴るのは良いんですけどね?何で俺に愚痴るんです?」
遊「二人の時は、敬語は止めろと言ったはずだ」
ク「……失礼」
遊「何でお前に愚痴るのかと聞いたな?答えは簡単だ。クロウが一番俺の話を聞いてくれるからだ。理由がそれでは御不満か?」
ク「いえ、とても光栄に思います」
遊「だから敬語を止めろと言っているだろう」
ク「ですがね、坊ちゃん…」
遊「敬語止めないのなら、父さんに言ってクロウの給料を下げて貰う」
ク「うぐっ……!」
遊「ほら、クロウ。俺とのお約束は、何だったか?」
ク「……ハァ…、二人の時は一切敬語は使わない。だったか?」
遊「そうだ。そしてクロウの主人は俺だ。主人の命令は絶対のハズ。そうだろう?」
ク「……そうだな」
遊「約束を破った事には変わりない。主人の命令に背いた者は罰を与える。これも分かっているな?」
ク「えぇ、分かってる。分かってるとも」
遊「約束破ったクロウには罰を与えなきゃな?」
ク「……罰は何がお望みで?」
遊「脱走に付き合って貰うぞ」
ク「いや、コラ。待て」
遊「父さんが自由に外に出してくれないんだ。だから脱走を手伝って貰うぞ」
ク「おい、コラ。坊ちゃん、それはダメだ」
遊「なんでだ」
ク「外は物騒だから。お供の一人もつけずに外出?しかも主人の了承を貰わずに?言語道断だ」
遊「……お前の主人は誰だ?」
ク「……坊ちゃんですけど」
遊「なら命令だ。脱走に付き合え」
ク「お断りします」
遊「……クロウ!」
ク「ダメダメ!絶対ダメ!坊ちゃんはどれだけ外が危険か分かってないんだ!」
遊「他の家の子は自由に外出してるんだぞ!」
ク「坊ちゃんは不動家の御子息なんだぞ!普通の子じゃないんだ!」
遊「……っでも!俺だって外を自由に見て廻りたいんだ!」
ク「ダメなもんはダメだ!大人しく部屋に戻れ!」
遊「………ッ、クロウのドクダミ臭―――!!(ダッ」
ク「ドクダ…っなんだそれ!?どんな文句だよ!しかも地味に嫌だ!」
遊「なぁ……アキ…」
ア「何でしょうか、坊ちゃん?」
遊「何で俺は自由に外を出歩けないんだ?他の家の子は、自由に外で遊んでいるぞ?」
ア「坊ちゃんだって、お庭で遊んでいらっしゃるでしょう?」
遊「庭じゃない、敷地の外に出たいんだ。後、敬語止めてくれ」
ア「……あのね、遊星?遊星は特別な存在なのよ?だから、外へ自由に外出が出来ないの」
遊「俺だって一人の人間だ。外を自由に出歩きたい」
ア「遊星は、あの不動家の一人息子。貴方が一人で外へ出歩いて御覧なさい。どうなるか分かる?」
遊「……どうなるというんだ?」
ア「裏社会の者に目を付けられて、闇商に売られるか…監禁されて良いように使われるか…。結果は目に見えています」
遊「………」
ア「だから、ご主人様も貴方を外へ出さないのよ?貴方が大人になるまでは」
遊「俺は…子供じゃない」
ア「18歳は十分子供です。貴方にもしもの事があれば、ここの屋敷の住民全員が心を痛めるんですよ?それでも良いんですか?」
遊「……皆が傷つくのは見たくない」
ア「でしょう?私たちも同じ気持ちなんです。坊ちゃんの傷つく姿は見たくない。そうでしょう?」
遊「あぁ……そうだな…」
ア「後もう少しの辛抱です。20歳になれば、自由に外へ出歩けるようになりますから」
遊「……分かった。……クロウに謝りに行こう」
ア「また何か言ったんですか?坊ちゃんのことだから『クロウのドクダミ臭』とでも言ったんでしょうけど」
遊「何故分かった!?アキはエスパーか!?」
ア「何年貴方のお世話をしてると思ってるんです?貴方の考えそうなことはお見通しです」
遊「そ、そうか……」
ア「でも、流石に『ドクダミ臭』は酷いですね(クスッ」
遊「や、やっぱりそう思うか?!今すぐ謝りに行ってくる!(バタバタバタ…」
ア「ドクダミ臭…っww遊星のセンスは凄いわ…っ」
ク「ドクダミ臭って……ドクダミ臭ってなんだよ…初めて言われたぞ…(ブツブツ」
遊「クロウ!」
ク「え?あぁ、坊ちゃん。何か御用で?」
遊「す、済まなかった!俺が悪かった?」
ク「……それは何に謝っているんです?」
遊「脱走とドクダミ!」
ク「あぁ、良かった。ドクダミも入ってた」
遊「アキに言われた。間違っていたのは俺の方だった。本当に済まない」
ク「ちょっ、坊ちゃん!坊ちゃんが一介の庭師に頭を下げてはいけません!」
遊「今は一人の人間として謝っているんだ!」
ク「全く、坊ちゃんらしいですね」
遊「今はちゃんと反省している。それから、敬語は無しと言っただろう」
ク「貴方はもう少し主従関係を学んだ方が良いかと」
遊「主従関係?そんなものは知らない。クロウは使用人だと思ったことも無い。幼馴染だろう」
ク「それは昔の話でしょう?」
遊「昔も今のなにも変わらない」
ク「人間関係は少しずつ変わるものです」
遊「クロウ…敬語は止めてくれ。クロウに敬語使われると死にたくなる」
ク「どんな脅しですか」
遊「それでも敬語を止めないと言うなら…俺は今すぐここから出て行く」
ク「なんでそうなるんですか」
遊「…………」
ク「………頑固な所は昔と全く変わっちゃいねぇな…」
遊「当たり前だ。変わったつもりは一切ない」
ク「変わって貰わなくちゃ、こっちは困るんだっての」
遊「とくにかく!…さっきは済まなかった。この通り」
ク「反省したならもう良いっての。別に怒ってもいねぇし」
遊「それから、ドクダミ臭も嘘だ」
ク「そりゃ良かった。正直そっちを一番気にしてた」
遊「クロウは甘い花の匂いしかしない。俺の好きな匂いだ」
ク「う……そりゃ…どうも…///」
遊「決めたんだ。俺が20歳になったら、自由外出する」
ク「そっか。楽しみが出来たな」
遊「その時は、皆で遊びに行こうと思う。クロウもアキも、ブルーノも鬼柳もジャックも一緒に」
ク「ご主人様はどうした?」
遊「父さんは知らない」
ク「………相変わらずだな」
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