31原田は驚きの顔を隠せない。 何故なら、彼女が総司となまえと俺しか知らない誓いを知っていたからだ。 “もう二度と人を殴らない” 雪村や藤堂、南雲までもが知らなかったのに。 「お前…」 「実際にみょうじさんが人を殴ってるところを沖田様が見たらどう思うかしらね」 面白いじゃないですか、って笑う彼女を殴ろうとした拳は机に向かった。 「てめぇ…なまえがどんな気持ちでその約束を守ってきたと思ってんだ」 ガララッと音を立てて入ってきたのは土方だ。 彼女は土方の顔を見た途端に青筋を顔に浮かべる。 先程までの余裕の笑みはどこへやら。 「さーてと、交代だ」 「大方の話しは聞いた。これから詳しく聞かせてもらおうか」 南雲はこの指導を見ていたいと希望したが、呆気なく断られ、指導室の中にいる生徒は彼女のみ。 雪村も藤堂も心配なのか、一歩も動こうとしない。 「とりあえず邪魔だから教室行った方がいいんじゃないの」 この一言で3人は教室待機を決意した。 『総司…っ』 「ごめん」 突然、謝られて意味のわからない私。 聞こえてくるのは、総司の異様に速い心臓の音と吐息。 なんで総司が謝るの? 謝るべきは私なのに。 『約束…破ってごめんなさい…』 やっと出てきた言葉はそれ。 許してもらおうなんて考えていない。 「なまえはみんなを守るために戦ってたんだね」 『え…』 「気づいてあげられなくて…ごめん…本当に…っ」 『そう…じ…』 「僕が守らなきゃいけない大切な人はなまえだけだよ…」 なのに…っ!と言う総司はいつもの総司じゃなくて。 じゃあ、あの時千鶴とキスしていたのは何? 『嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!』 「なまえ!」 総司の腕の中から逃れた私は後ろへ後ずさる。 総司が、私を大切な人だって? 信じたいけど信じたくない。 また裏切られたらどうする? 総司の心の中にはまだ千鶴がいるかもよ? 『私は…信じ、ない…信じたくない…っ!』 なまえ…と呟いた総司の顔は酷く泣きそうだった。 → |