30「おい、今度は何する気だ?」 原田の質問にこの女は黙ったままだ。 千鶴と藤堂は土方を呼びに行っている。 先程、“みょうじさんは街の奥の廃墟にいる”と言ったきり黙りを決め込んでいて。 南雲と原田が出す張り詰めた空気に彼女は怯えるわけでもなく、ただそこにいる。 「なんか言わないの」 「そろそろいいかしら」 「は?」 何を言い出すかと思えば、意味不明なこと。 でも、嫌な予感しかしなくて。 「教えますね、私の目的」 僕は走った。 街の奥の廃墟へと。 無事でいてくれれることを願って。 廃墟を目の前にして、左之さんから電話がきた。 「なんですか」 【お前今どこだ?】 「例の廃墟の前ですけど?」 電話をしながらも前へ前へ進んでいく。 その度に、金属とかの音が大きくなっていって、自然と前に進むスピードが速くなる。 【総司、よく聞け】 「…?」 【こいつの目的はー…】 「なまえ…?」 目の前の、愛しの彼女は血まみれで。 大の男の屍の山があちらこちらに散らばっている。 カツーンと携帯が落ちる音が響き渡った。 【おい総司?!おいっ!!】 左之さんの声など遠くて、ただただ唖然と立ち尽くすしかなかった。 『そ、じ…』 なんでこんな所に総司がいるのかわからない。 誰かが教えた? だとしたらあの女しか心当たりがなくて。 こんな所を見られてしまった。 もう、本当に終わったんだなってがっかりしている自分がいて。 苦笑が漏れる。 残っている男は、私を好きだと言った奴1人。 徐々に間合いを詰めていく。 「なまえ…やめな…」 『…ごめんね』 総司の声は最早私の耳には届かない。 筈なのに。 目の前が霞んで見えないのはなんでだろう。 『わた、私…っ』 その時だった。 あの日と同じ温もりの中にいたのは。 あの日のように頭の中で離れろと警報が鳴り響く。 『何する…っ!離せ!』 それでも総司は無言で、強く強く抱きしめてくる。 → |