29『は?!』 突然の告白に頭がついていけない。 なんで、名も知らぬ男に告られなきゃなんないんだ。 いや、好意は普通に嬉しいけどね。 『いや、あの、ね?私、あなたの名前すら知らないし』 「尾山晃平」 『え?』 「名前。尾山晃平って言うの」 『尾山、さん?』 「晃平でいい」 『晃平さん…あの、なんで?』 私を好きなのか。 昔こてんぱんにされた女に惚れるなど、世の中すげぇな。 「強いから惚れた、ただそれだけ」 『それ…だけ…?』 「悪ぃかよ」 『いや、でも私、総司のこと好きだし…』 「あんな最低な男の方がいいのか?」 最低…なのかな。 でも、それを言ったら、 『お前も最低じゃん。好いた女を殴ろうとしたでしょ』 自分のことを棚に上げてよく言えたものだな。 呆れた私は何も言えなくなってしまった。 沈黙が続く。 き、気まずい…っ! 「お前が俺のものなることはないんだな」 『…うん』 「じゃあ…」 『え…っ』 肩を掴まれ、壁に追いやられる。 『いったぁ…』 これは、ピンチか。 顔近いし! 近い近い近い近い近い… 『や、やめろ…っ』 「女のお前が男の力に勝てると思ってんのか?」 この光景、どこかで見たことがある。 喧嘩を始めるきっかけとなったあの日。 『やめ、ろ…やめろぉおおおおお!!!』 「な…っ?!」 蘇る。 あの感触が。 あの血が煮えたぎる思いが。 「お前…女だろ…っ?!」 『生憎、私は普通の女の子ではないので』 「なら数だ…っ」 今までどこにいたのだろう。 何十人との男がでてくる。 『私に数で倒せると?』 「今までこれほどの人数と戦ったことがあるか?」 ないこともない。 総司と出会ったあの事件はかなりの人数を倒したはず。 しかし、あれは殆どが不意打ちだ。 今回は違う。 『ちょっときついかも…』 ただ、こんな状況でもワクワクしてしまうのは。 『なんでだろうか』 「捕まえてやる…」 → |