20私はそれから一部始終を見ていた。 総司が千鶴に叩かれたことから、総司から無理矢理したことになる。 『全てなくなるんだ』 私は悲しいわけでもなく、ただ、さも当たり前かのように呟く。 全て無くすと思うと、荷物が降りたように軽くなった。 今まで気張ってたってこと? 『はは…おかしー…』 足は教室へは行かずに、玄関へ向かっていた。 目的地は、先程総司たちがキスしていた場所。 途中、千鶴とすれ違うが、頭を撫でて許した。 だって、千鶴は悪くないもの。 今、一番悪いのは誰か。 『私だろうなぁ』 私さえ居なければ、こんなに糸が絡まることもなかっただろう。 『あ、総司』 左頬を押さえて座り込んでいる総司を見つけた。 「僕に何のよう?」 『お別れを言いに来た』 「さっきの…見てたんだ」 『まぁね。それもあるけど…それは、ある意味どうでもいいかな』 「え、」 『じゃあね』 “今から貴女に関わった人たち全員を、陥れるわ” あの女が何をするかわからない。 下手すれば、みんな学校には来れなくなる。 なら、手を引こう。 『もう…どうでもいいや』 私の大切な人たちを守るためなら、なんだってするよ。 だから、お願い。 手は出さないで。 家に帰れば真っ暗で。 ガランとした部屋は生活感なんてない。 それでもここに住んでいる人はいるわけで。 「なんで…言わなかったんだ…」 学校で座り込んだまま動かない男は何を思うか。 ただ一言、“好き”が言えない。 言う資格はあるか? 彼女にあんな顔をさせてしまった自分が、愛の言葉を贈ることなどできる筈がない。 すれ違いは誤解を生み、誤解はすれ違いを生んだ。 『うぐ…ぁ…あぁああ』 私はバレないように苦しむしかないのだ。 → |