長編不器用な青春 | ナノ




13.5




平助side


雨が降る音のおかげで教室内の人々の声が小さく聞こえる。
ここの所ずっとなまえと黒幕名字の話題で持ちきりだ。
嫌でも入っていた話は今は聞こえない。


「なまえ大丈夫かなぁ…」


こんな日は嫌な予感しかしなくて好まない。

灰色の空を見上げて何も起こらないように、と願うばかり。


「なまえなら女子共に呼び出しくらって行ったよ」


突然の南雲の話しに俺は顔を青くした。
何も起こらないなんてこと今のなまえには有り得ない。


「た、助けに行かなきゃ!」

「待て、藤堂」


今すぐ走りだそうとしている俺のブレザーを南雲は何でもないような顔して掴んでいる。


「闇雲に行動して何かあったらどうすんだよ」

「じゃどうしろって言うんだ!」

「それを今考えてる。静かにしろ」


今まさにいじめられているんだと知ったら居てもたってもいられない。

南雲が手を離した隙に、俺はなまえが向かったであろう場所に走り出していた。


「あんの馬鹿」


あはははは!と笑う女の子たちの声が聞こえる。

なまえはこの先か…!

飛び出す寸前に南雲によって戻された。
壁の向こうでは、なまえが殴る蹴るの暴行を受けている。


「何すんだよ!」


小声で怒鳴りつける。

南雲は呆れた顔して「人の話し聞いてたのか」と言われた。


「危険になるのはなまえと千鶴だってこと忘れてないよね?」


忘れてはいないけど、でもこれを見逃せだなんて…。


「君たち何してるの?」


不意に聞こえた総司の声。
見れば、一くんもいる。

なんであの二人がいるんだ?

南雲に目を向ければ首を横に振る。
じゃあ、これはあの二人が勝手に行動しているってことなのか?

一くんはともかく、総司はずっとなまえのことを悪く言っていた。
今日の朝練でも、だ。


「どういう風の吹き回しだ…?」


呟いた南雲を見ると、眉間にしわを寄せていた。

これは、さっきまで俺がやろうとしていた行動。
南雲が止めてくれたが、総司たちが出てくるのは予想外だ。


「僕たちは君を許した訳じゃないから勘違いしないでね」


そう言い残した総司たちはこちらに歩いてきた。


「沖田、これどういうつもり」

「どういうつもりって何が?」

「事を荒立ててほしくないのはこっちの方なんだけど」


歩きながら、総司と南雲のいがみ合いが始まってしまった。

それに一くんがため息をつき、こう言い放った。


「俺たちはみょうじが犯人であることに疑問を持った」

「え?」

「そこで秘密裏に調べてみたところ意外なことがわかったんだ」


総司と一くんがそんなことをしていたなんて、全然知らなかった…。


「意外なことって…?」

「犯人は黒幕名字ってこと。それはわかってるでしょ」

「あぁ」


この二人が調べていたってことが意外で、同時になまえに教えたくなった。

まだわかってくれる人がいるんだってことを。


「それから、黒幕名字は好きな人に対して病んだ思考をしているらしい」

「は?」


好きな人に対して病んだ思考?
どういうことだ?

そんな俺の心を読んだのか否か、総司が簡単な説明をしてくれた。


「つまりは、黒幕名前ちゃんはヤンデレってわけ」


ヤンデレ…ん?あれ、俺別に何もされていない…。
というより、一番酷い扱いを受けているのはなまえ…。

その時、俺は何か嫌なものを感じた。


「なまえが、危ない…!」











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