長編不器用な青春 | ナノ




13




今日は朝からずっと雨が降っている。
昨日はあんなに晴れていたのが嘘のように、太陽は顔を出さない。


「なまえちゃん!おはよー!」

「…はよ」


こいつの貼り付けたような笑顔は雨の日でも関係ないようだ。

雨の日は気分が勝手に下がるから嫌いだった。
この状況下では特に。

けれども、昨日と違う。

もう私には信じてくれる仲間がいる。
こんな辛い日々ももうじき終わる、いや終わらせる。


「今日は一段と機嫌が良いのね…?」

「何言ってんの」

「まぁいいわ。今日も頼んだわよ」

「…うん」


一瞬目を細めた黒幕名前に一瞥しながらも、良い方向に進んでいる未来に早く先へと心が急かしていた。

学校へ着くと、早速女の子からの呼び出し。

これで何回目だろうか。
嬉しい呼び出しなら喜んで行くのだが、生憎今の私にはそんな呼び出しは皆無である。

逆らったら逆らったで酷い目に合ったので、行くことにする。
黒幕名前も当然のように私の後ろをついて来た。

階段に差し掛かった時、誰かが上から水を振りまいた。
すんでのところで避けたが、水しぶきが制服に掛かってしまう。


「っなんで避けんだよ!」


水を振りまいた女の子は気に食わなかったのか、バケツを投げる。
そのバケツは見事に私の頭にヒットした。


「痛…っ」

「あはははは!ばーか!」


その他にも何人か出てきて、殴る蹴るの暴行。

だけど、今は昨日までの私じゃない。
昨日までの諦めきっていた私じゃないんだ。


「な…んだよ!その目!」


女の子は右手を握り締め、力一杯振りかぶった。

殴られる…っ!

そう捉えた私は、目を瞑って衝撃に備えた。


「…?」


が、いつまで経っても痛みは来ることはなく、目の前に黒い影が差し掛かる。

疑問に思い、そっと目を開けると、そこにいたのは沖田総司と斎藤一の二人だった。


「君たち何してるの?」

「いやっ…これは…」


なんでこの二人が庇ってくれてるの?
ずっと敵意剥き出しだったじゃない。

なん、なの…?


「早急に立ち去れ。事を荒立てたくはない」


一括された女の子たちはバタバタと走り去る。
あれじゃあもう手を出せない。

しかし、今はこの可笑しな状況を把握したい。


「今更何なんですか」

「別に見ていられなくなっただけだ」

「僕たちは君を許した訳じゃないから勘違いしないでね」


それだけ言い残し去ってしまった。

未だに頭が固まってしまって動かない。
見ていられなくなったから助けたってどういうこと?


「なまえちゃん」

「…ん」

「今の何?」


こいつの目が変わった。
睨みつけられ、殺伐としたオーラを感じる。

これはヤバい、と思ったときには、もう遅かった。


(2012.4.9改正)











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