長編不器用な青春 | ナノ




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え…?

“好き”?
誰を?私を?
黒幕名前の好きな人は平助じゃないの?

「私はなまえちゃんのことが好きなの!なんで邪魔するかなぁ?!なまえちゃんと一緒にいたいのに!」
「なら、こんなまどろっこしいことしないで素直に言えばよかっただろ!」

どうやら戸惑っているのは平助たちも同じようで。

「だって!雪村千鶴や藤堂平助がなまえちゃんのこと独占してるじゃない!」
「!!」

目に涙をいっぱいに溜め、溜めきれなかった涙は重力に逆らうことなく落ちる。

黒幕名前のそんな姿を見ると、今までずっと辛かったんだろうなって、平助に、好きな人に近づけない苦しさは私だって知ってる。
絶対好きになってくれないと知っていても尚、好きであるもどかしさも。

これは、私が気がつかなければいけなかったんだ。

「これからずっと一緒だよ、なまえちゃん」
「何する気だ…!」
「決まってるでしょ。一緒に死ぬの」

死ぬ。
それで私は許されますか?

気づくことのできなかった罪は、死ぬことで償えますか?

「やめろ…っ」
「わかった」
「え…」

償えると言うなら。

「気づかなくて…ごめんね」

黒幕名前の顔を自らに近づけ、涙で潤った唇に自分の唇を重ねる。

「なまえ?!」

みんな驚いている。

当たり前か…。
以前の私は女の子にこんなことするなんて考えられないから。

「なまえちゃん…?」
「ははっ!黒幕名前まで何驚いてんの?」
「だって…」

本当にごめんね。
そして、

「これで黒幕名前の気がすむなら喜んで飛び降りるよ」

お父さんお母さん、

「なまえ?!何言って…っ」

先輩方や先生、

「なまえ!やめー…っ」

千鶴、薫、平助、

「ありがとう」

黒幕名前を平助たちの下に押し、その反動で身体は宙に浮いた。

あぁ、落ちるってこんな感じなんだ、なんて呑気に考えてみたりして。

あ、今気づいた。

「いい天気だな」

全てにさようなら。










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