14/停戦

 一方、王宮の西門前には、中で行われている停戦協議の伝令を聞
きキングデューとクリエル、そしてハガードが集まっていた。

「門前の様子はどうだ」
「バララント兵が後退、協議の為に戦闘行為を
 停止するよう呼びかけ続けています
 警戒はしておりますが、メルキア兵も攻撃を中止しております」

 キングデューは盛大に舌打ちをすると、天を仰いで見せた。

「マズい、マーシャル様は殺されるぞ」

 キングデューは両手で顔を拭うと、息をついてラクヨウを睨みつ
けた。

「フリードはおそらく、ローランド国王の遺言書を
 持っているはずだ」

 キングデューの突飛な一言にラクヨウは目を丸くした。

「遺言書?なぜそんなものをフリードが......」

「国王は、自分の後継について晩年は一切明言していなかった。
 だが、そばにいたお前ならわかるだろう。
 次期国王にふさわしいのは、絶対にマーシャル様だ。
 だが、フリードは一度ローランド国王に次期国王の
 任命を受けている、5年も前だが」

「5年前....まさか」

「フリードは5年前、留学と称してバララント経由で外国へ出た。
 そして国を開くための外交を学び、そしてメルキアへ帰った。
 すべては、ローランド国王が合意した上でだ。
 そうして、無事にメルキアへ帰った暁にと、フリードを時期国王        
 に任命する遺言を書き、フリードにもたせていたのだが......」

「な、なんだよもったいぶんな、キンディ」

「俺はその遺言書を、燃やすように
 ローランド国王に命令された。フリードが帰国してすぐのこと
 だ。だが、遺言書はこの城のどこからも見つからなかった。
 おそらく.......フリードは絶対に見つからない場所へ隠したんだ」

 キングデューの声を聞いているうちに、ラクヨウの視界はだんだ
んとはっきりとしてきた。
 王宮の奥にフリードと二人だけにしてしまったマーシャルが今こ
の瞬間にも殺されているのではないかと、頭はそればかりを考えて
しまう。


「その遺言通りに、王位を譲ってでもみろ。
 マーシャル様はこの戦争を起こした張本人として
 討ち首にされるぞ......
 とにかく、協議をやめさせる方法を考えねば」

「なに寝言言ってんだキンディ、
 乗り込んでフリードを殺せば済む話じゃねえか」

「無理だ」

「......なに?」

「停戦協議中は、いかなる軍事行為も禁じられている
 いくら鎖国国家とはいえ、世界政府からの制裁は
 免れん。最悪の場合、この国が消されるぞ......」

 クリエルは空を仰ぎ見ていた。

 その青い空に溶けいるような、青い鳥が上空を旋回していた。
マルコもまた、王宮の気配を察してか戦闘行為を停止させていると
伝えにきたのだろう。

「だが、フリードは......やるぞ」

「わかっている!だから考えているんだ!」

 キングデューもこれまでにないほどのプレッシャーと最大の問題
に立ち向かっているところだった。
 戦争における、停戦協議についてはつい数日前国王崩御の前日
に、マーシャルから聞かされたばかりだったために、
親衛団には申し伝えていたものの、こうも早く直面させらるとは
思いもしなかった。



 ラクヨウは、これまでの戦いが嘘のようにピタリと止んだこの世
界が異常だと感じた。
 そんな言葉ひとつ、2人の男がテーブルについただけで兵士という兵士が、目の前に置かれた新鮮な獲物を前に涎を垂らして主人の
待てに従順になれるものか。

 現に、皆そうしている。
 メルキア兵はもちろんのこと、蛮族としか捉えられなかったバラ
ラント兵ですら国家の忠犬とのように扱われることに虫酸が走った。

 国を開くと、軽々しく言ったものだ。
 自分は、その本質のなんたるかをまったく理解していなかった。
 マーシャル、そして自分は国を守るという重責を背負うには、尻
が青すぎたか。

 死んでしまった兵士たちに、申し訳が立たなかった。
 呆然と纏まらない考えをぶつぶつと呟きながらラクヨウは王宮の
南側へと、足を引きずりながら歩きはじめていた


「ラクヨウ!どこへ行く!」

 ラクヨウはキングデューの怒鳴り声にも、一切の反応を見せなか
った。



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