大切

バタンと軽快にトランクを閉めたフィオナは意気揚々と
助手席に乗り込んだ。

車はゆっくりと、北を目指す。

ネバダはその殆どが砂漠だ、毎月彼らは
この砂漠に来るのだ。


「まずは5メートルだ」


ゆさゆさと体をゆらし、だるそうに砂漠を何歩か進み
フィオナに向き直った。

ドフラミンゴは、
愛する女のために豚の死骸を片手で持ち上げた。


「撃て」


フィオナはサブマシンガンを構えた。
容赦なく引かれた引き金は、何発もの銃弾を放ち
豚の死骸に穴を開けて行く。

たった5メートルの距離の死んだ獲物のために
フィオナのもつサブマシンガンに装てんされた50発が
ものの数秒で撃ち尽くされた。

いちいち数える性質ではないが、ドフィに当たってないなら良しとしようと
フィオナは銃を下ろし、ボンクレーに手渡した。


「次は10メートルだ」

そう言いながらまたゆさゆさと豚の死骸を引きずり、ドフラミンゴは砂漠の中を
歩いていった。


「次は...コルトパイソン」

言われたとおり、ボンクレーはフィオナに銃を手渡した。
先ほどとは口径の違う、なかなかに男らしい銃声が響く。

狙った先でドフラミンゴがすこし左右に揺れるのが見え、5発目射撃の手前
フィオナは銃を下ろした。

「ドフィ!動かないでよ!」

「フッフッフ、悪かった」

ドフラミンゴの言葉が終わるか終わらないかのうちに、
38口径の銃からは残り2発の弾丸が放たれ、豚を射抜く。


ベラミーは車から何体かの遺体が入った袋を引きずり、汗をかきながら
ドフラミンゴの元へと駆けつけた。


「今日は何体だ」

「5体です」

「アクアマリンは?」

「20kgあります」

「さっさと埋めろ」


フィオナが狩猟用のライフルを使う頃に、標的は豚ではなく本物の
人間の死体にすりかわってることを、フィオナは知らなかった。

そしてその足元では、ベラミーが撃たれそうになりながら
フィオナの涙を砂の下奥底に埋めていることも。


愛するフィオナのために、ドフラミンゴは死体を高々と
空へ放った。


その愛を幸せそうに、フィオナは銃声をもって受け取った。


日傘でぎりぎり顔への直射日光を避けていたボンクレーは
ため息が止まらなかった。

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