リーズン

美しい顔が歪んでいく様は至極当然だと
彼女は思った。

そして、ドフラミンゴの命が危ないと思ったことは
事実であり、嘘をついたつもりではなかった。


ジンジンと痛む右の頬をさすりながら、彼女は天蓋を見つめて
呆然と、死んでいった女の様子を思い浮かべていた。


キレイな女だった。
雑誌やテレビで見たそれよりも、良い香りがして
果実のようにキレイな曲線が形作る腰、その様子や、
整った鼻筋に、花びらのように赤い唇を。


その唇から放たれる聞いたこともないような話。
自分の心の至る所を刺激するような話だった。


でもそれが、その女とドフラミンゴのために用意されたストーリーだと
言われた瞬間には、どうするべきなのか体が理解し、体が行動した。



また、殴られた頬が痛む。
彼女の中に彼の感触が埋まっていくように
今までになく、深く、深く。





深く、静寂が彼女を眠りへと誘う。




「悪かった」


眠る彼女には届かない言葉が、静かに響き、
ベッドの微々たる揺れに、彼女の髪が流れた。






にじり寄る体温と体温に
色があるように、
男はまるで自分の右半身が見たこともない色になっていく
そんな感覚を得た


変色した彼女の頬に唇を寄せ
間近で見る閉じられた瞼の奥
自分に似た狂気を感じながら



不意に笑った吐息に、彼女は寝返りをうち
彼は優しく彼女を追うように抱きしめ、ベッドに横たえた





レールを敷いてやっても、逆走してしまうような女だから



だから堪らなく愛おしい。




彼の望まなかった未来と
彼女の望んだ未来への形が
胎動として感じるくらいまで
そこには迫っていた。




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