XOXO

「正確には、『彼のトレードマークでもある、あのピンクのコートの
中で、彼と愛し合いたい。彼に愛を囁かれたい、愛してると』……そう言って
立ち去る背中を見た瞬間、フィオナの眼の色が変わった」


「ヴェルゴか」


乗り込んだ車に、10年前からここに居たと言わんばかりの
態度でヴェルゴが寄りかかっていた。


「嫉妬、だ」

「離れろ」

「助言させてほしい、」

「離れろ」


「フィオナとの関係を壊したくないのだろう、ドフィ。
だが彼女は、まるでドフィとの関係など気にしてはいない。
彼女自身、何を望んでいるのかわからないんだ。
これでわかったろう、彼女にも教えてやらねばならん。
男女の関係というものを。

壊すことを恐れるな、破壊によって創造は生まれる。
良い方向に創造したいのならば、今の関係を壊すんだ。
……」



「アンタァ、イイ事いうねェ……」


どこからか盗んできたのであろう、ショッピングカートに肘をつき
ホームレスの初老の男性は、小さな拍手をヴェルゴに送った。


「そうか、俺は車に乗ってやしなかった」







「お帰り、ドフィ」

「トニーに会ってきた」

「元気だった」

「あァ」


並んで歩く彼女の髪を撫で、彼は微笑み肩を抱き寄せた。
彼女も楽しげに微笑み、彼の手を握った。

「どうしてトニーは連れて行かれたの?」

「お前が、人を殴り殺したからだ」

「・・・だって、危なかったんだもん」

「あァ?なにがだ」

「ドフィが危なかったんだもん!」

突然に腕を振りほどき、眼に宝石の涙を浮かべた彼女は
彼を睨み、見上げた。

しかし、その瞳の揺れを
彼は飽きるほどに、何度も見てきた。
事実が彼女のどこかでゆがみ、
嘘の味がする涙が、こぼれそうな表情だ。


「また、同じことが起こったら、どうすんだ、フィオナ」


「殺る」


あまりにも真っすぐな視線に刺されながら、彼は大声で笑った。



突然の衝撃に揺らいだフィオナの視線の先には、
どこか見覚えのある、白い固形物が宙を舞った。
まずは、口内から血の味を感じ、そして痛みを感じた。


不思議と怖いとは思わなかった

それどころか、少し嬉しいとすら思った。





「悪くねェ、だが次はその拳を振りかざす前にこう言え」

「何て?」

「ジョーカーは、死んだと...な」


「ジョーカーは、ドフィじゃないの?」







「ジョーカーは死んだ、マイアミの豪邸のプールで沈んでいた。
 それが、ジョーカーの最期だ...覚えておけ」





←Back   Next→

Book Shelf


Top






[ 19/45 ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -