芽生える赤

「貴女、ジョーカーの女?」


もう何度か通ったエントランスが、妙にグルグルと回っているように
フィオナは感じた。


「あ、あなた知ってる!テレビで見た!」

「質問に答えなさいよ、ジョーカーの女なの?どうなの?」


そして心臓が、感じたことが無いほどに収縮していて
口から飛び出そうなくらいに。


「確か、外国のサッカー選手と破局した人!イヤー!キレイー!」

「だから答えなさいよ、質問に、」

「ジョーカーって...何?」

「…このコ、何言ってるの」


階段がヤケに長く感じた。

何段か上がると息が上がり、足も思うように動かない。


「で、ジョーカーの女なんでしょ?ねぇ、ちょっと顔出さない?
楽しいパーティーがあるのよ」

「女? わかんない。一緒に住んでるけど」

「あら、そうなの? じゃあ、」


彼の寝室に、入ったことがあっただろうか……なかったはずだ。

いくつかの扉を間違えて開け放つほどに、焦り、


「ねぇ、ワタシが彼の女になっても良い?」


視界が次第に赤く染まるような錯覚、脳に過剰に流れ出る血液に
意識が飛びそうになりながら、



「それはダメ」







まだ少し明るさを残した寝室で、ドフラミンゴは本を顔にのせたまま
ベッドに横たわっていた。

その姿を確認したフィオナはゆっくり、一歩ずつ、近づく。

得体の知れない液体で汚れた体のあちらこちらを気にも留めず、
ベッドに膝を乗せ彼の顔を覗き込んだ。








「ただいま……ドフィ」

「……臭せェ」

「ジョーカーなの……?ドフィは」

「……くせェぞフィオナ、シャワー浴びろ」

「私はジョーカーの、女なの?」


彼女の一言に、ため息をつきながら彼は

本を枕元に投げた。



怪訝そうな彼女の顔が、次第に笑顔に変わった。


彼女からは血の臭いがした。



その時、彼の頭には

迷いが生まれた。







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