風のように

あの日から、何時間、何分経ったのかも
彼は、はっきりと覚えていたに違いない。


それが、人魚を人間に変えさせた責務であるように
彼は感じていたし、全てが上手くいくように綿密に
計算し、彼女を満足させるのが彼の義務だと


苛立ちを隠しきれない様子でギリギリと歯軋りをする
青年は考えていた。

「人魚は?」

「フィオナだ」

「どこだ、」

「出かけてる」


どこか不機嫌そうに、正面の階段に座り込んだドフラミンゴに
未だ愛想笑いを浮かべるクセが抜けきれない。

ローは、ピンクのコートを脱いだ彼の横に座り、小さくため息をついた。


「経過が知りたくて...異常は?」

「ねェよ」

「そうか」


沈黙は長い時間を彷徨い、眺めていた雲は形を変えて
行方を眩ませた。

「いつ...帰ってくるんだ」

「フッフッフ、会わせる気はねェよ」

多少は予想のついた返答であったが、やはり寸断されてしまった
以前の関係に、妙に懐かしさを感じさせられた。


しかたがないと、息を吐き出し立ち上がった背中にかかった
声が




「一つだけ、問題がある。」


風のように







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