The Los Angels03
「おい、ゾロ!起きろ!」
「んァ?もう朝か・・・。」
「夕方だ、ばかもん。」
起き上がり、見渡す部屋は確かに美しい夕日の光に照らされていた。
赤に染まるこの光を見れば、何もかもが洗われていくような気さえする。
「ほら、8000ドルだ。」
「あ?多くねえか?」
「今回の報酬と、いまからのマイアミ行きの手付金じゃ、もらっとけ。
マイアミに着いたら、こいつに電話しろ。期限は10日だ。」
「だれだこいつ。」
「知らんほうが身の為じゃ。」
金を放り投げたジンベイは、またデスクに向かい、毎日のように眺めているはずの夕日にしみじみと見入っていた。
「おい、フィオナは?」
「おお、臭かったんでシャワーに突っ込んだ。ゲロまみれじゃ、まったく。」
「ああ、わりい。」
「マイアミに行くことは伝えてある。まあ、詳細は伝えてはおらんが・・・。喜んでおったぞ、ふふふ。」
「あァ?ありゃ売りもんだろ、何喜んでんだ。」
そのとき、バンっ!とバスルームに戸が開き、フィオナが飛び出して来た。
「アメリカ横断の旅でしょ!やったぁ!あははっ!」
「・・・はぁ?」
どうやらジンベイに丸め込まれ、楽しそうなフィオナの様子をゾロはじっと見つめた。
キツいメイクの落ちた彼女の姿はどこか幼さも感じられ、改めて彼女や彼女を取り巻いて来た大人の世界に対する
不快感を感じた。
道路脇に停めたバンに乗り込み、ゾロはまたカギのいらない方法でエンジンをかけた。
「ジンベイ。」
無言で車に背を向けたジンベイは、突然かけられた言葉に振り返った。
「恩にきる。」
遠ざかる赤いバンは、ならず者二人を乗せ海沿いの国道5号線を南に走って行く。
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