The Roswell02

そこにはやはり、端正に整えられたあごヒゲを蓄えたオッサンが横たわる。
ゾロもフィオナも息を呑み、その様子を凝視していた。


広大な駐車場の外灯に照らされたオッサンの顔からは、まったく生気を感じられず
ゾロはそろそろ、逃げる用意をしなくてはと額から流れる冷や汗を拭った。

クロコダイルはそっと死体を抱き上げると、地面に置き、足でごろりと転がした。
丁寧に扱いたいのか、雑に扱っていいものなのか、意図のわからないクロコダイルの
行動は更に続いた。

今度は、オッサンの背に通された巨大な剣を抜くと、それを自分の車に積み込み
ふう・・・とため息をつきながらゾロたちを見やった。

「ご苦労だった、じゃ」
「じゃ、じゃねーよ!何だよ荷物ってソレだけかよ。」
「アァ、そうだ。」
「・・・ちょ、ちょっと待って!!」

大声をあげたフィオナはヨタヨタとクロコダイルの乗り込んだ車に近づいた。

「・・・仕事、ないの?」
「・・・。」

口をヘの字に結んだクロコダイルは、まじまじとフィオナの顔に見入った。

「なんでオメー・・・ここにいるんだ?」
「・・・え?」
「どーした、ジョーカーから逃げて来たか?クハハハ、俺と一緒に来いよ。」
「行かないし。ねぇ、仕事!ちょーだいよ、でっかい仕事!」
「クハハハ、豪遊生活を捨てて賊稼業たァ傑作だぜこりゃ。」
「なんでアンタが・・・そんなこと知って・・・」
「フィオナだったか?俺のことなんて忘れたか・・・せっかく拾ってやったのに・・・。」
真っすぐと真剣なフィオナの表情に、次第に一人だけ高らかに笑っている自分がバカらしくなったのか
クロコダイルはまた車を降りると、真っすぐに転がった死体に向かって行った。

オッサンの胸ぐらを掴み引き上げると
思いっきり頬を平手打ちした。

「オィ・・・起きろ兄弟。」

急に何の脈略も無く死体をボコり始めたクロコダイルに、ゾロは呆気にとられ
やはり、逃げるべきだったと激しく後悔した。

平手打ちはゆっくりとした間隔で、何度かその頬を打ちつけた。

「いつまで寝てんだ・・・オィ。」

人を眠りから覚ますには、低過ぎて小さすぎる声をうなり続けるクロコダイルは
何の調子も変えずに、何度かそのオッサンを”兄弟”と呼び、ひたすらその激しい平手打ちをする。
ましてや死体である、死体に話しかけ続けるその姿に
ゾロはそれが本当に東西問わずに顔も広く、凶暴と恐れられているクロコダイル本人なのか
どうかを疑いそうになった。

やがて、飽きたのかぐっと胸ぐらを自分に引き寄せ
死体の耳元でクロコダイルは何やら違う言語を話し始めた。

流暢なその巻き舌から察するに、北欧もしくはロシア語圏の言葉であることは辛うじて分かる。
そしてゾロの耳にはっきりと聞こえた最後はこうだった。

「when it's down at the end of lonely street at
Heart break hotel…Baby」

歌だった、とても上手だった。

そして、なによりも信じられなかったことは
その言葉にびくりと反応を見せ、死体は恐ろしく大きな目を開いたのだ。


「エルビスっ!!」

そんな叫び声のような声をあげ、ふるふるとクロコダイルを見上げる元死体は
にやりと口角をあげた。

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