03





真ちゃんと別れた次の朝、6:00すぎに目が覚めた。
うわ、遅刻したと思ったが、そう言えば今日は久々に朝練がないことを思い出す。はぁ、焦った。
学校は8:30までに門をくぐればいいので、8:00くらいに真ちゃんを迎えに行けば間に合うだろう。
あと一時間は寝れる、とベッドに入った途端携帯の着信音がなった。
ディスプレイには真ちゃんのママさんの名前。
何かあったのだろうか、額を流れる嫌な汗を拭い、通話ボタンをおした。

「はーい。ママさん、おはようございます」
─『おはよう。ごめんなさいね、高尾くん。寝てたでしょう?』
「いや、大丈夫っすよー。それより、何かありました?」
─『それが…』


学校の用意も疎かに、制服も適当に纏い、携帯をカバンに詰め込んで家を飛び出した。
普段部活で鍛え上げた足に鞭打ち、急いで学校へ向かう。
まさか、俺のせいだ!俺が、あの時あいつを止めなかったから…!
足を動かしながら、さっきのママさんとの電話をおもいだす。
──『真太郎、昨日からうちへ帰ってないの』


---


門をくぐり、教室へ向かう。
まだ登校するには早すぎる時間が故に、校舎の中は静まり返っていた。
朝練中であろう運動部の掛け声をバックに、バタバタとスリッバをならして廊下を走る。
鍵は、あいていた。
ちらほらと見えるクラスの面々のなかに、もちろん真ちゃんの姿はない。
忘れ物、と言っていたから教室だと思ったんだけど──
ここにいないとなると、もうあそこしかない。
ドアの近くにいた男子生徒に自分の荷物を放って、また足を動かす。
目指すは、体育館だ。


誰もいないはずの体育館から、特徴的なバッシュの擦れる音とボールのはねる音が聞こえる。
聞きなれたそのリズムは、確かにあいつのもので。
扉を開けると予想通り、がシュート練習をする真ちゃんがいた。
服は昨日帰ったときの服のままで。
いつもはさらさらの髪もギシギシで、風呂に入っていないことが伺えた。
昨夜からずっと、一人で、シュート練習をしていたのだろう。
俺が来たことにも気付かずボールを放るその姿は、見てて痛々しかった。

「なにやってんだよ!!」

未だボールを持ってシュートモーションに入ろうとする真ちゃんの手を掴む。
その手は普段テーピングを施されていて、綺麗に手入れされていたものとは思えないもので。
身体もふらふらして、今にも倒れてしまいそうだった。

「なぁ、まさか昨夜からぶっ通しでやってたのかよ?」

何も答えない緑間にだんだん苛立ちが募る。
なぁ、いい加減にしろよ。いつまでうじうじしてんだよ?
3Pが入らなくなったからって、そんなんでどーすんだよ。
自分の身体も大事にしないで…そんなの、お前らしくもねぇ。

「なぁ、もういい加減にしろよ!!聞いてんのかよ!?」

気付けば俺は叫んじまってた。
言ってしまって、後悔した。あいつは震えてた。

「黙って聞いていれば、好き放題言ってくれたものだ!いい加減にしろ?それはこっちのセリフなのだよ!!お前に俺の何がわかる?今まで当然のようにできていたことが、突然出来なくなることの恐怖が!焦りが!!ヘラヘラと笑っているだけのお前に…」
「んだと!!?」

掴み合いになった騒ぎを聞き立てて、偶然近くを通った木村サンが止めてくれた。
最後にみたあいつの目は、俺を見ているようで見ていなかった。
その目に映るのは恐怖の色だけだ。

「もう、俺に構うな」

そんな緑間の考えていることが急に分からなくなって。

「…勝手にしろよ」

すべてがバカバカしくなった。
そして俺たちの関わりは完全に断ち切れた。






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