05
「弱い、人間じゃねぇか」
チッ、と舌打ちとともに吐き出された言葉。
発信者は、浅葱色の彼だろう。
何で、人間なんかと。
藍染さんを見てみると、やはり相変わらず微笑んでいる。
偽物の、貼り付けたような笑み。
何を考えているのか全く読みとれない。
「ナマエ、ご家族はいるかい?」
「いません」
「なにか、預からなかったかい?」
…この人は何が言いたいのだろう。
何も答えない私を見て、じゃあ、と言葉をこぼした。
「例えば…石、とか」
はっとした。
首元をペタペタと触り、それがあることを確認する。
…あった。
「それかい?」
「…はい」
紐を通して、首にかけているもの。
今は汚れて濁っているけれど、いつかとても綺麗に光るんだよって母に渡された。
これは、唯一母が残してくれたもの。唯一の、形見。
「少し、見せてもらってもいいかな?」
「いいですけど…」
何を考えているのだろうと思いつつも、渡そうと首からはずした、その瞬間、
ピカ─
「!!?」
「なに、コレ…!」
昔から濁った色をしていたその石が、紅く、光を放つ。
それと同時に、胸の中心から体中を焼けるような熱さが支配する。
あぁ、これが、母が言っていた─
「っナマエ、それを首にかけるんだ!」
苦しそうな藍染さんの声が聞こえて、咄嗟に言われた通りにする。
光った石は、何事もなかったかのようにまた澱み、元の位置に戻った。
まるで、さっきのことなんてなかったかのように。
(ふふ、面白いものをみつけたよ)
(なんだったの、いまの)