その他・番外編 | ナノ
眠れる森の美男?-その後…


「これは一体、どういうことです?」
「はは…はははははは…」
怖い…セバスチャンの後ろに、黒いものが見えるよ…。

それはテストの終わった数日後、ようやくテストが返ってきた、次の日のことだ。
私が学校から帰ってくると、玄関でニッコリと笑いながら手にテスト用紙を携えているセバスチャンがいた。
「どこからそのテスト用紙を…?」
「親御さんに頂きました。」
「ママっ?!」
「ごめんねぇ、ミカエリス君なら良いかなって思って。」
奥から顔を出したママ。
裏切り者は身近にいたようだった。

「私は貴方に勉強を教えて差し上げたはずですよね?」
「は…はい。」
いつの間にかその場に正座させられて、説教をされている私。
あれ、おかしいな?
今日は好きなドラマの放送日だから、ウッキウキで帰り道歩いて来たのに……
なんでこんな泣きそうになってんだろ?

「それなのに、なんなんです?この点数は。これでは私が教えても教えなくても、一緒じゃないですか。」
「………ごめんなさい…。」
怖すぎてフローリングの木目をジッと見つめながらそういうと、
「まったく…これからテスト前の勉強は、一人でしなさい。」
ため息混じりに、その言葉が紡がれて、
「!それはヤダ!」
私は瞬間ガバッと顔を上げて、そう言った。
(セバスチャンが大学生になってから、一緒に過ごす時間もほとんどなくなって、それなのにテストの時も会えなかったら………)
そんな事がグルグルと頭の中を回って、私はセバスチャンを見つめたまま、何も言えなくなってしまった。

「………そんな泣きそうな顔、しないで下さい。」
突然、セバスチャンが私と目線を合わせるようにしゃがんだ。
視界いっぱいに、セバスチャンの顔が広がる。
「だ……だってぇ…………」
口から出た言葉が、思っていた以上に震えていて、私は驚いた。
「私だって、貴方と一緒にいたい。」
「!…だったら……!」
「でも、貴方と一緒にいると、貴方を束縛してしまいそうで、怖い。」
私は、セバスチャンの口から紡がれたその言葉に、目を見開いた。
(怖い?……あの怖いもの知らずのセバスチャンが?)
「今までは、中学生と高校生でも、学校は近くて、すぐ傍に貴方を感じられていました。」
そこまで言って、セバスチャンの目が伏せられる。
長い睫毛が、綺麗な赤の瞳に影を落とした。
「ですが、高校生と大学生では、貴方を近くに感じる事が出来ないんです。」
確かに、私は地元の高校に通っているけれど、セバスチャンはそうじゃない。
わざわざ電車に1時間も乗って、通っているのだ。
「貴方の視線が、微笑みが、そして何よりその心が、知らない内に知らない男に向けられているのだと思うと、居ても立ってもいられなくなる。」
それからセバスチャンは、伏せた目を上げ、真っ直ぐに私を見つめた。
「貴方をどこかに閉じ込めて、誰の目にも触れさせたく無いと、そう願ってしまう。」
そう言ったセバスチャンは、とても苦しそうで、
「……そんな事…」
私の口からは、自然と言葉が零れた。
「そんな事……当たり前じゃん。」
そう言うと、目の前のセバスチャンは少し驚いたような顔をした。
「私だって、もしかしたら今セバスチャンが、女の人と会ってるのかもしれないって考えて、落ち込んだりするし、」
そこまで言うと、少し恥ずかしくなって、セバスチャンから目を逸らした。
「でもそれって………す……好き……だから………でしょ?」
そう言った瞬間に、顎を掴まれて私は強制的にセバスチャンの方を向かされた。
「もう一回。」
「へ?」
「もう一回、言って下さい。」
その言葉の意味を考えた時、思い当たる単語は一つしか無くて、
「!む……無理無理無理無理!」
顔が真っ赤になったのが、自分でも分かった。

「好きですよ。」
耳元で囁かれたのは、紛れもない愛の告白で、
「愛しています。」
いつもよりも低く、近くで響いたその声から逃れるために、私が白旗を揚げたのは、それから少し後のことだった。



だ……大好き…です…………
(さて、それじゃあ勉強しますよ。)(へ?)(親御さんから、これからは毎日、家庭教師をやって欲しいと頼まれまして。)(え?え?)(テスト前は私も忙しいので、教えられませんけど、それ以外なら。)(………どこからが演技だった?)(演技?私は一つも嘘をついてはいませんよ。テスト前の勉強『は』と言いましたし。)(だまされたぁぁぁ!)

prev next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -