貴方のいない 世界はいらない | ナノ
その職人、高揚。


乾いた大地に、2つの人影が、互いをいがみ合うように並んでいる。
熱風が彼らを焦がすように過ぎてゆく。
そこは地平線のみが見える場所、世界の果て。
突然1つの人影が動きだす。
ゆっくりと、歩くように。
そしてとうとう辿り着く、もう1つの人影に。
それから、ゆっくりと口を開「何をしているんです?」
「いや、場の雰囲気を盛り上げようと思って‥‥‥」

ここは、ファントムハイヴ伯爵邸前。
もちろん、世界の果てではない。
「何回も言いますけど、本当に戦うんですか?」
「坊ちゃんがそう命じるのなら、私は誰とでも戦いますよ。」
「だそうですよ、シエル。シエルが命じなければ、戦わないそうです。と言うわけで、助けて下さ「セバスチャン、そいつを黙らせろ。」
「御意」
「ちょっと待った!シエルはセバスチャンさんが負ける所を見たいんじゃないの?私が負けちゃうよ!だから許し「杏子、諦めろ。」‥‥‥はい。」
というか、さっきから私の台詞を遮らないで下さい。

「‥‥手加減はしてくれるんですよね?」
「死なない程度には、してさしあげますよ。」
そういって、ニヤッと笑うセバスチャンさん。
うっわぁ☆
ドSだよ、ここにドS様がいるよ。
ドSのSは、『セ』バスチャンのSだったんだ!

「そろそろ始めるぞ。」
「ちょっ!まだ心の準備が‥‥‥」
と、シエルに抗議しようとしたとき、目の端に黒い影が、凄い速さでこちらにやって来るのが見えた。

やばい。

そう思ったのは一瞬で、とっさに胸をそらせて宙に跳ぶ。
それから体を回転させ、下を見る。
すると、セバスチャンさんと目が合った。
(?あれ?セバスチャンさんって目があんなに赤かったっけ?)

「勝負の最中に考え事ですか?」
「!!」
気が付くと、目の前にセバスチャンさんがいない。
(嘘!さっきまでそこにいたのに!)

「いけない子ですね?私との最中に」
「!その言い方はなんだか卑猥なので、やめてくださ‥‥‥いっ!」
後ろから声が聞こえ、力の限りで回し蹴りをする。
でも、足に衝撃は来ない。

それから体は、嫌な浮遊感にみまわれる。
「うおぉ!」
(さっきの蹴りの時、力を入れすぎたから、着地に失敗した。右足痛い)

でも、
「お強いですね。」
いつの間にか10mほど前の所にいるセバスチャンさんがそう言う。
「セバスチャンさんこそ。私、こんなに強い人と戦ったのは久し振りです。」
いつぶりだろうか?これほどの高揚感も。
こうして対陣するだけで、胸が高鳴るのが分かる。

「私も、貴方ほど強い人間に会ったのは久方振りです。」
もう200年振りほどでしょうかと、小さく呟く声は杏子には聞こえない。

立ち上がって、右足に体重をかけてみる。
(グラグラするな。腫れてるかも。)
これでは、長くは戦えない。
(次が‥‥‥最後だ)
そして、真っ直ぐに目の前の彼を見つめる。
一陣の風が2人の間を過ぎた。
そして、同時に駆け出した。



ら、
「いってぇぇぇぇ!!!!」
思っていた以上の右足の痛みに、堪えきれずにしゃがみ込む。
意外と重い捻挫だったらしい。

「大丈夫ですか!?」
セバスチャンさんの心配する声が聞こえるけど、ぶっちゃけそれどころじゃない。
(痛いーよ痛いーよひゃっほ〜い!)
やばい。痛すぎて頭までおかしくなった‥‥‥救いようがねぇ‥‥‥

「大‥丈夫‥‥‥です‥‥」
やっとの事でそう言った私の足元に、セバスチャンさんがしゃがみ込む。
「裾をめくりますよ。」
そう言って私の右足を持ち上げ、自分の足に載せ、裾をめくった。
「うわぁお」
足首は見事に腫れていた。



(おい、大丈夫か?)(おーおーシエル君、これが大丈夫に見えるなら、私は君に眼科医に行くことをお勧めするね。もしくは脳外科。)(貴様はよほどここを出て行きたいようだな。おい、セバスチャ(ごめんなさいほんとごめんなさい)

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