貴方のいない 世界はいらない | ナノ
その職人、緊迫。


ハローハロー杏子です。
突然約200年前のイギリスに飛ばされ、無一文だった私ですが、ついに1人で仕事を任せられるようにまでになりました!
今日からシエルが宿泊する、ロンドンにあるタウンハウスを掃除してこい、との指令です。
‥‥‥面倒な事を押し付けられている気が、しなくもないんだけどさ‥‥
まぁとりあえず、シエル達は約1時間後には来るらしい。
それまでに全部綺麗にするぞ!と、意気込んでいた私ですが‥‥‥‥‥
タウンハウスの前に立った私は今、戸惑っています。

ガタン バタン ガッシャーン!!

目の前にある、無人のはずのタウンハウスから、騒音が聞こえる。
(え?え?なにこれ?!イギリス貴族の屋敷は、幽霊がお出迎えなの!?こんな真っ昼間から?!すげーよ、さすがイギリスクオリティ!!)
そんな感じで、1人勝手にテンションを上げていたのだが、
(まぁ、そんな冗談は置いといて、誰だろ?不法侵入だよなぁ、これ。つか、鍵は私が持ってるのに‥‥‥)
ここに来る前に、セバスチャンに渡された鍵をポケットから取り出す。
(確か渡された時に、『合い鍵は無いので、無くさないように。』って、釘を刺されたんだけどなぁ。)
ここでじっと鍵を眺めていてもしょうがないので、私はその鍵を再びポケットにしまい、はぁっとため息をついた。
それから、腰に差した日本刀に左手をかけ、いつでも抜刀できる体制をつくる。
(本当はこんなもの、使いたくないんだけどな‥‥)
そんな事を考えながら、私は既に何者かによって開けられた扉の取ってに手をのせた。

(!!)
一瞬で扉を開けると、突然鋭い殺気を感じて、私は抜刀し、殺気の方へと刀を向けた。
「危ないなぁ…教わらなかったかい?人に刃物を向けちゃいけないって。」
緊迫した状況にも関わらず、あまりにのんびりとした声が、そこに響いた。
「それはお互い様だと思いますけどね。」
「あっはは。それもそうだね。」
そう。
私の眼球1cmほど先には、細い針のようなものか、妖しく煌めいていたのだ。

「え?」
私がそんな声を上げたのは、目の前にいる人が、あっさりとその針を下げたからだ。
「どうして?」
そう言いながら、私もつられて刀を下げる。
「君のその服、それは伯爵の家の燕尾服だね。そしてここは伯爵のタウンハウス。加えて今日は伯爵がここに来る、ということから…」
「その子がファントムハイヴ家の使用人の1人っていう推測がたつってわけ?」
「ご名答だよ、マダム。」
突然奥から響いたその声に、男性は振り向いて答えた。
「あなた、名前は?」
奥から聞こえるその声は、続けて私にそう聞いた。
「私、ファントムハイヴ家で執事見習いをしています、白岡杏子といいます。」
そう言って、頭を下げる。
「とりあえず、そんな所に立ってないで中に入ったら?見習い君。」
「(‥‥‥見習い君?)ありがとうございます。では、失礼して。」
そうして私は、タウンハウスへと踏み込んだ。
すると先程私に声をかけた女性がそこにいて…
その人は、真っ赤な髪をして、真っ赤な服を着て、真っ赤な口紅をぬった、悲しい悲しい目をした人だった。



(そういえば、さっき屋敷の中から何か破壊音が聞こえてきたんですが‥‥‥)(あぁ、伯爵をもてなそうと思って、ティーカップとかを探していたんだよ。)(‥‥‥なぜティーカップを探すだけで、部屋の中がこんなに汚くなるんでしょうか‥‥‥)(あっははー、ついでに遊び道具も出しとこうと思って、屋敷中探したんだ。)(屋敷中?!じゃあどの部屋もこんな汚い状態なんですか!!)(そういう事になるねぇ)(‥‥‥‥‥‥)

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