貴方のいない 世界はいらない | ナノ
その職人、覚悟。


「う…」
「う…うう…」
「いやぁ、呆気なかったねぇ。」
「確かに。私達は先を急ぎますよ。もう5時30分です。早くしないと、」
「夕食に間に合わない、でしょ?」
そう言ってセバスチャンに、にっと笑いかけると、セバスチャンも返してくれた。
それから私達は、目の前の階段を登り、扉に向かう。
「恐らく向こうは、私達の存在に備えています。杏子、入ったら最後。気は抜かないで下さいね。」
「ちなみに気を抜いたら?」
「死にます。」
「‥‥‥ガンバラセテイタダキマス。」
まだ死にたくはない。

「開けますよ。」
そうして扉を開け、中に入ったセバスチャンと私。
「来たぞ!!撃てェエエ!!!」
そしたらそんな声が聞こえて、私は右に、そしてセバスチャンは左へと銃撃をよけた。
「‥‥!!っぶねぇ〜」
かすった!今弾丸が左腕をかすったよ!
それからセバスチャンがお盆をなげて、全ての銃を真っ二つにした。
「セバスチャンナイス!」
武器の無くなった彼らは、斧を持ちがむしゃらにこちらに向かって来る。
でも、
「うっ!!」
「がっ!!!」
銃が無ければ、倒す事なんて簡単だ。

「次がラスボスだといいんだけどなぁ‥‥‥」
その次の部屋の人々も全て倒し、扉の前に立った私達。
「こら杏子。気を抜くなと言ったでしょう。」
「いやだって、もうなんかおんなじ展開過ぎて、飽きてきた。」
いつまで続くんだろ?
「そんな事言ってないで、次行きますよ。」
「ほ〜い」

「いたぞ!!!殺せ!!」
「いたっていうか、自分から姿を現したんだけどねって、まだ続くの?」
「さっさと倒せば、早く帰れますよ。」
そんな会話をしながらも、2人で敵を倒していく。
「ん〜そうなんだけどねぇって、危ない!」
セバスチャンの背後に、斧を持った男が接近していた。
私はとっさにセバスチャンを跳び越し、そのまま蹴りつける。
「ありがとうございます。しかし、埒があきませんね。」
「結構倒してるつもりなんだけどねぇ。減っている気がしない。」
「しかたありませんね。」
「?」
セバスチャンはそう言うと、手からナイフとフォークを出した。
「どっからそんなもんを?!って、今更そんな事突っ込んでもしょうがないか。」
ここは、なんでもありの世界なのだ。

「一気に減らします。」
セバスチャンはそれから高く飛んで、そのナイフとフォークを敵に投げつけた。
跳び散る鮮血。
「な‥‥何者だアイツはあァ!」
むせかえるような、死の匂い。
「ファントムハイヴ家の執事たるもの、この程度の事が出来なくて、どうします?」
私がいつも、見てきたもの。
「杏子も、見てばかりいないで戦いなさい。その手に持ったものは、ガラクタですか?」
「!!」
手に持ったものは、タナカさんから渡された日本刀。
刀を使うということはすなわち、人の命を奪うということ。
この屋敷に来てから今まで、杏子は誰一人として、殺してはいないのだ。
(ここは、なんでもありの世界だ。でも‥‥‥)
「所詮どこにいっても、私のやることは変わらないってことか。」
その言って、自虐の笑みを浮かべると、手に持った日本刀を、鞘から抜き出した。
ギラリと光る刀身は、まるで血を欲して杏子に懇願しているようだ。

「!ようやく戦い始めましたか。」
敵と応戦しながら、杏子の戦いの様子を見る。
(それにしても、強い。)
素手でも十分強かったが、刀を持つと更に強くなる。
まるで、
「鬼のようだ。」
恐怖も絶望も全てを喰らう、鬼。

「やれやれ、流石に手間取りましたね。」
「2人がかりでも、結構かかったしね。」
「5時43分。まずいですね。」
「そろそろラスボスかなぁ?」
やっとの事で敵を倒し終え、次の扉へと向かった私達。
扉を開ける。
すると、
「誰も、いない?」
「ここが最後だったようですね。」
「よっしゃあ!じゃあ後は、シエルを助けに行くだけ?」
「えぇ。では、行きましょうか。杏子、私達はこの屋敷にお邪魔させて頂いているのですから、粗相のないように。」
「ここの人達私達に、かなりの粗相をしていると思うけどね。」
「杏子、返事は?」
「‥‥‥‥はぁい。」

「んで?」
「はい?」
「いや、当たり前の様にここまで来てるけど、シエルの場所は分かるの?」
「そうですねぇ。強いて言えば、勘ですかね。」
「勘?!なにそれ、今当てずっぽうで歩いてんの?」
「はい。あ、扉が見えてきましたよ。」
そうセバスチャンが指さす方を見ると、一つの扉が。
「えぇー‥‥‥」
そんな山勘でいいのか?
「つべこべ言わずに、さっさと行きますよ。どちらにしろ、あそこしか扉は無いんですから。」
「は〜い」

「お邪魔致しております。」
「……!?」
そう言いながら、セバスチャンが扉を開ける。
すると、銃を持った一人の男性が、そこに立っていた。
ビンゴだったようだ。
それからセバスチャンと共に、その男性に頭を下げる。
「主人を迎えに参りました。」
さぁ、ラスボスとのご対面だ。



(ねぇセバスチャン、この人が最後なんだよね?)(えぇ。)(おかしくない?この人を守る人が、誰もいないなんて。)(えぇ。ですから、杏子は、私が動いた瞬間に横に跳んで下さい。)(横に?)(大丈夫です。私は死にませんから。)(?)

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