貴方のいない 世界はいらない | ナノ
その職人、疾走。


「女王の番犬?」
「えぇ。坊ちゃんは、裏社会の人間から、そう呼ばれています。」
タナカさんに刀を渡された後、私はセバスチャンについて走っていた。
「坊ちゃんは、表社会では解決する事が出来ない、裏の事件を秘密裏に調査しています。」
「だから、番犬?でも、女王ってどういう意味?」
「坊ちゃんにその捜査の依頼をするのが、ビクトリア女王陛下だからですよ。」
「!!」
「先程杏子は、なぜ坊ちゃんが警視総監と夜会を開くのかと、そう聞きましたね?」
「う……うん。」
「坊ちゃんの調べる事件は、裏社会の問題ばかり。決して表に出てはいけない。では、その資金はどこから来るのでしょうか?」
「!!まさか‥‥‥」
「ランドル公は坊ちゃんに、その資金をくださるのですよ。」
「‥‥‥‥‥‥」
「?どうかしましたか?」
「ううん…なんでない。ただ、どこにでもそんな話はあるんだなぁって、思って。」
「どこにでも?」
「うん。私がもといた世界にも、そんな仕組みがあったから…」
女王の番犬なんて、大層な名前はついていなかったけれど。

「!!見つけました。」
「へ?」
セバスチャンが前を向いて突然そう言った。
「私は先に行きます。後からついてきなさい。」
そう言って、いきなり速度を上げたセバスチャン。
「はやっ!」
一気に引き離されて、すぐに見えなくなった。
(これ以上スピード上げると、すぐ疲れるんだけどなぁ‥‥まぁ、いっか。)
置いていかれるより、ましだ。

それから少し走ると、男の悲鳴のような声が聞こえて、私は急いだ。
すると、
「なんじゃありゃ?」
黒い煙がもくもくとあがり、その近くにセバスチャンが見えた。
私は全速力で駆け寄る。
「セバスチャン!これは一体?!」
「あぁ、もう追いつきましたか。もう少しかかると思っていましたが。」
「相当頑張ったけどねって、違う!」
「あの方たちは、先程私たちを殺そうとしたので、少しお仕置きさせていただきました。」
「お仕置きって‥‥‥」
「さぁ、そんなことを言ってないで、早く行きますよ。夕食に間に合わなくなります。」
「‥‥‥はぁい。」

それから走ることを再開した私たちは、セバスチャンが聞き出した情報をもとに、どうやら『イーストエンド』という場所に向かっている。らしい。
ここらの地理は、全く分からない。
だけど、
「あそこ?」
「恐らくは。」
大きな屋敷が見えてきたから、きっとあれだろう。

「え?なんか屋敷のほうから人がぞろぞろ出てきてるよ?」
「そうですねぇ。」
「んー、でもこっちに全然気が付かないね。」
「そうですねぇ。しかし、いや―――立派なお屋敷ですねぇ―――」
「ほんとにね〜」
そんな事をセバスチャンとのんきに話していたら、
「な‥‥‥!?なんだテメーは!!?どっから入った!!」
そう言いながら、私達に銃口をむける人々。
あまり穏やかな雰囲気ではない。
「普通に入り口から入ってきたけど、なんかいけなかったのかな?」
「もしかして、誰か来客があるのかも知れませんよ。なにやら皆さんお忙しそうですし。誰がいらっしゃるんでしょうね?」
「いやいや、それは言わずもがな私達でしょうよ。」
「燕尾服がなんの用だ!ドコの輩だ!!?」
「あぁ、失礼。」
「申し遅れました。私達、」
「「ファントムハイヴ家の者ですが。」」
そうして、戦いの火蓋はおとされた。



(ねぇねぇ、決め台詞作ろうよ。)(はぁ。例えば?)(さっきみたいな、『ファントムハイヴ家の者ですが』的な感じの。)(そういえば、私にもそんなのがありましたね。)(え!そうなの?どんな?)(そんな事より、目の前の敵をどうにかしなさい)(だってコイツら弱いんだもん。)(‥‥‥)

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