貴方のいない 世界はいらない | ナノ
その職人、焦燥。

セバスチャンからの否応無しの痛みにも耐え、なんとか、なんとかお菓子を作る許可を得た私。

(‥‥‥もう‥‥さっきのセバスチャンからの攻撃でボロボロだわ)
足に障るといけないからと、厨房にイスを用意してくれた。
さっきのは足に障らないのかと聞いたら、あれはマッサージだと返された。
‥‥‥確かにそう言われるて、さっきより痛みが無くなっているような‥‥‥無くなっていないような‥‥‥騙されている気が、しなくもない。

(しっかし、厨房広っ!これはお店より広いかもしれない。だって厨房の奥に厨房だぜ?)
私のお店は、5人くらいでこれよりもちょい小さい厨房を使っていた。
でもこの家の料理人は1人しかいないというのだから、驚きだ。
(でも、奥の厨房までピカピカだもんな。)
「よほどしっかりした人がここを使ってるんだろうな」
そう、彼女は知らない。
ここの厨房を使うのは、ほぼセバスチャンだということを。
そして本物の料理長は、厨房に兵器を持ち込む人間だと言うことも。

「なにか足りないものがありましたら、お申し付け下さい。」
私は手前の厨房で料理をしているので、そういって去って行ったセバスチャン。
「足りないものというか‥‥‥むしろ無駄なものだらけ何ですが!」
どうやってこんなものを集めた?!というほど多彩な食材が、そこにはひしめいている。
いやぁ‥‥‥私執事舐めてたわ‥‥うん。
揃わないものもあるんじゃないかとか言って、ごめんなさい。

「しかし、凄いな。良い物ばかりだ。」
一目でそれら全てが上物だと分かる。
「強いしこんなの集められるし、一体何者なんだろ?」
まぁ、考えててもしょうがないか。
今日作るのは――――――ズドーンッ!!!
「!」
突然、手前の厨房から爆発音が轟いた。
「へっ?なに!なに?!」

『あ〜また失敗しちまった』

厨房へとつながる扉から、声が聞こえる。

『こんどはもっと、火力のつえぇ奴にするか』

おそるおそる扉に近づき、扉を開けてみると、
「嘘!」
「んあ?」
見るも無惨な厨房の姿と、アフロの料理人が見えた。



「おめーは、さっきの」
「だだだ‥‥‥大丈夫ですか!」
「はぁ?」
「いやさっき凄い爆発音がしたので、どこか怪我、してませんか!」
「大丈夫だ。いや、強いて言えば、頭の方が大惨事か。」
その人がアフロをポンッと叩くと、一瞬にして綺麗な金色の髪の毛になった。

(突っ込まない!私は突っ込まないぞぉ!)
「‥‥‥良かった。ところで、さっきの音は何だったんですか?」
「あぁ、あれか?あれは、俺の‥‥‥!」
と、突然黙り込んだその人は、後ろを振り返り、そのまま固まってしまって、
「どうかしましたか?」
私はそう聞きながら彼の体から、ヒョイと顔を覗かせ絶句した。

(‥‥‥セバスチャンの笑顔が‥‥‥‥‥‥怖い‥‥!!)
ニッコリという文字が、後ろに出て来そうなくらいのこの上ない笑顔をしているのに、でてくるオーラは黒色だ。
(ヤバい、冷や汗出て来た‥‥‥)

「バルド、厨房で兵器を振り回すなと、何回言えば分かるんです?」
言葉の一つ一つを踏みしめるかのように、ゆったりとこちらに向かってくるセバスチャン。
「いや、そこに肉があったから、焼いてやろうと‥‥思って‥‥‥」
バルドさん(今セバスチャンから聞こえた)も恐らく怖いのだろう。
言葉の最後が聞き取れない‥‥‥

庭は更地!食器は全滅!料理は炎上!
「全く、何をどうすればこんな事になるのか‥‥‥」
いつの間にかバルドさんに加わった二人を交えて、セバスチャンからの説教が始まった。

そんな私はというと、
「ふぅ‥‥‥やっぱり日本茶は和みますねぇ」
「ほっほっほっほ」
なにやらデフォルメされたお爺様と、和んでいた。
「でもびっくりしました。このお屋敷に日本人の方がいらっしゃったなんて。」
「ほっほっほっほ」
「もうなんでしょうかね、このお屋敷なんでもありなんだなって思ってきました。」
「ほっほっほっほ」
「あっ!自己紹介がまだでしたね!私白岡杏子と言います。あなたは?」
「‥‥‥!白岡家‥‥‥でございますか?武家の?」
「?はい、そうですが‥‥‥?」
うぉ、びっくりした。
この人『ほっほっほっほ』しか言わないのかと思ってたよ。

「失礼ですが、白岡勘十郎様はご存命でありましょうか?」
「!どうして先代の名をあなたが!?」
白岡勘十郎は、私の家の創始者であり、そして白岡家の武家としての地位を確立させた人でもある。
(つか、この人いつの間にかダンディなおじ様になってる!いや突っ込まない!突っ込まないぞぉ!)

「実は私は、ここに来るま‥え‥ま‥‥で‥‥は‥‥‥‥」
突然ぷしゅ〜っという音とがして、目の前のおじ様がどんどん縮んでいく。
(‥‥‥‥‥‥‥はっ!空気が!空気が抜けていく!)
あまりに突然の事に、一瞬放心状態になってしまった。
気が付くと、デフォルメされたお爺様に戻ってしまっていた。
「ほっほっほっほ」
「あ‥‥‥あの、話の続きは‥‥‥?」
「ほっほっほっほ」
(うわぁぁぁぁ!超気になる!来る前までなんだったんだよぉ‥‥‥)



(時に杏子様、丼についての知識はおありでしょうか?)(丼?いや、ないけど。つかそんな知識のある日本人のほうが珍しいと思うよ。)(そうですか‥‥‥)(なんなの、突然?)(では、楽器などの教養は?)(聞けよっ!楽器?楽器は琴とかそんなものしか出来ないけど。)(それはよかった。杏子様、少しご協力願えますか?)(?)

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