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イアンに付きまとわれてるとか毎日会うとかそういうわけじゃなかった。だから、誰にも言う必要がなかった。いや、困ってるんだけど。最初に話した時に誘われたパブにはあいかわらず毎回誘ってくる。その度に断ってるのに諦めないのはすごいな、って思う。いっそ、ブラックのことを話したらこれまでになるのかな。……でも、説得力がないか。ブラックはわたしのところにやってくることがないから。相変わらずブラックには会えてない。会いたいと思う気持ちは強くなってる。だけど、どうやって会いたいって言えばいいかわからない。……こうやって自然消滅してくのかな。卒業式の時に言ってくれた言葉を信じたいと思ったことは嘘じゃないけど、ずっと続く言葉だとは思ってない。でもまだ数ヶ月しか経ってない。……会う機会が多い人の方がすきになるのだとしても、私はイアンよりブラックの方がすきだ。比べるまでもないけど。でもブラックはどうなんだろう?私のことをまだすきでいてくれてるのかな?




だんだん、魔法をどのタイミングで使えばマグルの中でも問題がないのかわかってきた。インターンが終わって、帰るときに速攻で姿くらましすれば良い。目的地は、フラットの階段の後ろにある中庭の木の後ろ。そうすればイアンに会うこともなかった。あのベーカリーでパンを買えないのは痛いけど、イアンに会うより良かった。………何でこんなにイアンに会いたくないんだろう。イアンと初めて話した日からずっとだ。違和感が拭えない。本当に、悪い人じゃないはずなのに。イアンは普通の大学生で、マグルで、ユーモアがある。全然話してて嫌じゃない、笑えることもあるし、ブラックほどじゃないけどハンサムだ。なのに、何でなんだろう。溜め息が自然と出てきてしまって、どんどん気分が落ちていく。実習もあまりうまくいってるとは思えないし。階段を上がろうとすると、バイクに乗った男の人が目に入った。見間違いかと思った。ブラックだ。


「何で、」

「何でってひどいな」

「だ、だって、連絡、きてない」

「これから連絡しようと思ってたんだけど」

「……なんで、私の家、」

「リリーから聞いた」


リリー、話したんだ。まぁリリーが話さなければ私が話すことになっていたんだろうからいいんだけど。……いつになるかわからないけど。少しやせた気がするし、髪も伸びた気がする。……な、何か恥ずかしくなってきた。久しぶりに会ったせいかな。意味もなく鞄のストラップを握ったり離したりを繰り返した。


「バイク、乗れたんだ」

「乗るようになったんだよ」

「それ、普通のバイク?」

「……さぁな、乗ってみるか?」


にやっと笑ったブラックに、また心臓が動いた。……私、こんなに単純だったっけ?バイクにはまだ乗ったことはない。でも、ブラックは誰かこのバイクに乗せたことがあるのかな。…………本当、何考えてるの、私。数か月ほったらかしにしておいて、こうやってブラックが来てくれなきゃ会おうともしてなかったくせに。なんで私ってこう、受け身なんだろう。


「俺のバイクに乗りたくない?」

「ま、まさか、そんな。………バイク、乗ったことないだけ」

「じゃあ乗れよ」

「う、うん」

「他人乗せるの初めてだから、まだ加減が分からないけどな」


ああ、もう、本当、私、最低。泣きそうだ、自分に。そう思うこと自体が、自分に甘いってことはわかってる。箒よりもしっかりしたつくりで、安定感もあるはずなのに、私はあの誕生日の時よりふらふらしてる。感情は変わらないはずなのに、ブラックに会いたかったはずなのに、色々理由をつけて会わなかった私は一体何を考えてたんだろう。ブラックのにおいはホグワーツにいたころと変わらなくて、私はブラックの背中に思いっきりしがみつく。


「どこまで行く?」


ブラックと一緒ならどこでもいい、とまでは言えなかった。だって、そんなどこかの古い映画みたいな返事なんて馬鹿みたいだから。でも、言えないだけで、思うだけは自由だ。……なんて、本当馬鹿みたいだけど。


20170619
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