奇跡は始まっていたらしい ガラの悪い男の子に乱暴に腕を掴まれたと思ったら羽交い絞めにされてしまった。 身動きできないウチを見て、目の前にいる男の子は握りしめていたこぶしを緩めた。 それを待っていましたというようにガラの悪い男の子たちは一斉に男の子を殴り始めた。 「―――!」 ウチは必死に男の子の名前を呼んだ。 止めて、―――に何もしないで! って涙ながらに言っても一方的な殴り合いは止まらない。 ウチを羽交い絞めにしている男の子の腕に噛みつこうとした瞬間、苦しげな声が聞こえた。 顔を上げると、苦悶の表情を浮かべて蹲った。 「―――?―――ッ!!」 ばちり。効果音を付けるんだったらこないな感じ。 激しく脈打つ心臓。頬を流れる冷や汗。 窓の方を見ると外はまだ暗くて、枕元に置いていた携帯を手に取った。今の時間を見ると自然と溜息が出た。 「朝の五時過ぎ……起きるにはちょっと早過ぎる時間だねー」 ぼふんっ、と音を立ててベッドに寝転んだ。 静かに目を閉じる―――けど、目は覚めちゃって眠ることができない。 目が覚めちゃった原因はさっき“視た”夢のせいかな。…あれは星詠みだった。つまり、これから起こる出来事だということ。 ウチが居た場所は、空や木が見えていたから中庭かな? しばらくの間は中庭に近付かないように気をつけないといけないなー。 まるっきし見覚えのない男の子がウチのせいで怪我をするなんて嫌。 「…お風呂入って汗でも流そうかな」 まだ時間もあるし、星詠みを視たせいで変な汗をかいちゃったから体がベタベタする。 ウチは着替えを持ってお風呂に向かった。 「転校初日に遅刻なんて第一印象最悪だよ〜」 ウチは寮から校舎までの道のりを一生懸命に走っていた。 お風呂に入った後、暇やからベッドにごろんって寝転がったのが間違いだった。 体のベタベタが無くなったのと気分転換が出来たおかげでいつの間にか寝ちゃったみたい。 自然に目を覚ましたは朝の十時を少し過ぎたトコ。 取りやえず制服に着替えて鞄を持って学校にダッシュで向かってる途中なんだけど、朝ごはん抜きはしんどい。 朝の一日は真っ白のご飯を食べるとこから始まるのに、それを食べないのは死活問題。 朝ごはん食べてから学校に向かえば良かったかなー。 「…遅れて教室に入るのは注目浴びちゃうから屋上に行こー」 思い立ったウチは教室じゃなくて屋上に向かった。 学校の屋上は立ち入り禁止の場所だから当然鍵が掛かってるはず。 ピッキングして開けようと思ってドアノブに触れるとキィ、と静かに開いた。 ウチの他に先客でもいるのかな、って思って止めようかと思ったけど他に行く所もないからドアを開けた。 他の場所に行かなかったことを、ウチは後悔することになる。 「…………宇海?」 「……えっ、哉くん?」 奇跡は始まっていたらしい (転校初日に出逢ったのは) (―――昔の幼馴染みのだった) |