獅子座と再会


「…ここが星月学園か」

足元に必要最低限のものを詰め込んだ鞄を置いて星月学園を一望した。
バスと電車の交通機関を使ってこんな山奥まで来たウチを待っていた星月学園は、ウチの想像をはるかに超えていた。

星月学園。
星座にまるわる知識を専門に教育する全寮制の学校。
専門的な学問の内容から求められる偏差値は高い。
星詠み科、天文科、神話科、宇宙科、星座科、西洋占星術科の六つの専門分野に分かれて各々三年間学ぶ。
教育目的は天文・天体に関するスペシャリストの育成と教育。
近年では男子校から共学校に変わって女子生徒の受け入れを始めたが、普通とは違う特別なカリキュラムと山奥に建設されているため、今のところ女子生徒は一人しかいない。

気にしないつもりだったけど、さっきから目に映るのは男の子ばっかり。
女の子がウチが珍しいのか視線が鬱陶しくてしょうがない。
こんなに男の子の視線が鬱陶しいなら、学園唯一の女の子が可愛そうだなー……って、ウチも明日からココの生徒になるんだった!
つい先日、双子のお姉ちゃんに婚約者がいるって言った両親。
天海ちゃんは婚約を解消してもらうってこの星月学園に転入することを決めたんだけど、運悪く体調を崩してしまった。
小さい頃から心臓が弱くて体調を崩すのはいつものことだけど、お医者さんに短期間の入院生活を宣告されちゃった。
そんな天海ちゃんに代わって、ウチは一足先に星月学園に転入して婚約者を探すことにした。

「まずは職員室かな」

荷物を寮の方に置きたいけど生憎、寮の場所が分からない。
先に星月学園の先生たちに挨拶しよっと。きっと寮の案内もあるだろうし。
ウチは足元に置いてあった鞄を持って職員室を目指した。





「失礼しまーす。転入生の汐崎です」
「おっ、やっと来たか!」

職員室に入って声を掛けると、オレンジ頭の男の子が近寄って来た。
休日なのにもかかわらず職員室に居るってことは、ウチの転入するクラスの委員長さんかな?
……あれ? この男の子、どこかで見たことある気がするんだけど…?

「星詠み科の先生が留守で、俺が代わりに案内するぞ!」
「ありがとう! クラスの委員長さん? 名前は?」
「……え?」
「え? 生徒じゃないの?」
「俺はれっきとした教師だああああああ」

顔を真っ赤にさせて、怒っている男の子。
目の前の男の子はウチより少し身長が低くて顔は童顔だった。
どこからどう見ても教師には見えないよー!

「ゴホンッ! 俺の身長のことは置いといてだな」
「別に身長が低くて間違えたわけじゃないよ?」
「うるさい! おっと、自己紹介がまだだったな。俺は天文科一年の担任の陽日直獅だ!」
「汐崎宇海です、よろしく……えっ、獅子くん?」
「え? どうして大空が付けたあだ名を知ってるんだ?」

首を傾げてきょとんとした様子でウチを見ている獅子くん。
獅子くんの口からお兄ちゃんの名前が出たから、間違いなくウチの知ってる獅子くんだ!
ウチのお兄ちゃんと獅子くんは小学校からの付き合いで、幼馴染みっていうよりは腐れ縁の方がしっくり来るかな。
お兄ちゃんが一方的に獅子くんを家に連れてきたおかげで、ウチと獅子くんはお互いの名前も顔を知っていて仲も悪くない。

「やっぱり獅子くんだ! わぁ、大空兄ちゃんの高校の卒業式以来だから六年ぶりかな?」
「大空兄ちゃんって……あっー!!」

獅子くんはウチを指差して、ココが職員室なことも忘れて大きな声を出した。
職員室にいる先生たちが何事のように、ウチと獅子くんのいる方を見てきた。
その視線に気付いたのか、獅子くんは遅いながらも慌てて自分の口を両手で塞いだ。

「思い出してくれたみたいだね! 改めて、獅子くん久しぶり〜」
「随分と大きくなったなー! 見違えたぞ!」
「獅子くんは相変わらず小さいまんま!」

ウチがそう言うと、「むきいいいい!」とお猿の鳴き声をマネした獅子くん。
顔を真っ赤にさせて怒ってるから本当にお猿のように見えてウチは思わず笑ってしまった。

「これからよろしくね、獅子くん!」
「おう! こっちもよろしくな!」





獅子座と
「みんな元気なのか?」
「兄ちゃんはまた身長が伸びたって」
「あいつの成長期はいつになったら終わるんだああああああ」

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