9 知らないきみを教えてよ
『明日帰る予定だったけど少し入院することなった』
とうとうショートは右手だけではなく、電波越しでも凍らせられるようになったらしい。
硬直した体から血の気が引いていく。初夏なのに、とても寒い。
病室から男子たちの声が聞こえる。その中のひとつはショートのものだ。気付かれないように、こっそり部屋の中を窺う。
ショートはちゃんと、そこにいた。
生きてる…。
安心感がどっとなだれ込んできて、次に、目頭が熱くなった。生きてる。生きてる。生きてる。ショートが生きていることを実感として感じたくて、心の中で同じ言葉を何回も繰り返した。
一昨日、ショートに職場体験はどんな感じ?とメッセージを送ると入院してると返ってきた。
衝撃で硬直している私に、ショートは事件のあらましを教えてくれた。
ステイン、というヒーローを狙った凶悪犯に飯田くんのお兄さんが襲われて、ヒーローとして再起不能になったこと。
飯田くんがお兄さんの仇を討とうとした事。
殺されかけていた飯田くんの元に緑谷くんとショートが駆け付けた事。
事実を伝えるショートの声音は落ち着いていた。
ヒーロー殺しの一件は新聞になる前に動画として世界に拡散された。画面越しでさえ彼の自分の執念を押し通す覚悟はすさまじい気迫を放っていた。
怖かった。
普通≠ノ生活していたらよっぽどの事がない限り出会わないであろう人。だけどヒーローは、自ら関わっていかなければならない。立ち向かって、戦わなければならない。
自分の考えを絶対的に正しいものだと過信している人。その為なら人を殺せてしまう人。
ショートはこれから、そういう人達と関わっていくんだ。
ストーカーの事言わなくてよかった。少し前の自分の選択に感謝する。ストーキング行為はまだ、続いている。けど、それが何だって言うんだろう。
殺されかける事に比べたら気持ち悪い事なんて、大したことない。
「明?」
「……へ、うわ!」
思考回路をぐるぐると彷徨っていたら、いつのまにかショートが目の前に立っていた。吃驚して、私は思わず飛びのいてしまう。
「マジで来てくれたんだな。ありがとな」
「ま、まあね〜! 私暇人だからさ!」
少ししか入院しないらしいけど、ショートの無事をこの目で確かめたいばかりに赴いてしまった。少し距離のある病院までわざわざお見舞いに行くなんて幼なじみの範疇を逸脱した行動かもしれないけど、ショートなら、まぁ、私の邪な思いに気づかないだろう。
ショートの匂いを嗅ぐと、本当に生きている事が実感として伝わってきた。包帯を巻かれている以外には派手な怪我をしている様子はない。
ショートの言う通り、本当に大したことなかったのかも。大げさに考えすぎただけなのかもな…。勝手にパニックになって泣きそうになっていた事が恥ずかしく思えてきた。
「轟くん、その女子は、君のご友人の…」
「ああ、常野明。雄英の普通科通ってる」
「どもども〜! ショートがいつもお世話になってまーす!」
「こ、こんにちは。緑谷出久です」
「………常野さん、それは違う。俺が轟くんの世話になったんだ。今回の事は全て俺の視野が非常に狭まっていたことから始まり、」
「明、こいつ飯田だ。飯田お前いい加減自分を責めるな」
「轟くん気遣いはありがたいがそれは無理な相談だ。ヒーローとは人を救う存在であり危害をなす存在ではない。それが例え悪≠ナあってもだ。そもそも悪を個人の裁量で決める事が間違いであり裁く権利は個人には委ねられていない。私怨で動くなと言われていたのに、僕は……」
「俺だって親父を否定する為だけにヒーロー目指してた、お前よりもずっと、長い間。飯田はすぐに気づいただろ」
「それは緑谷くんと轟くんが気づかせてくれたからだ。君たちがいなければ俺は今も復讐に捉われていた」
「…僕、飯田くんの様子がおかしいことに少し気づいてたのに。もっと追及すべきだった。事件が起こってから対処する能力も必要だけど未然に防ぐ事が何よりも大事なんだって、痛感したよ」
真面目………!
真面目な人と真面目な人と真面目な人が顔を合わせるととんでもなく真面目な空間が出来上がることを知った。部屋に足を踏み入れてまだ五分も経っていないのに、皆各々に自戒している。三人はいつまでも自分の足りない点をつらつらと述べていく。私から見れば犯罪者と対峙して渡り合えた事はすごいと思うのだけど、ショート達にとっては課題の残る一件だったらしい。ずうん、と頭の上が鉛色の雲で覆われているように見える。
…よし!
「ショート! 緑谷くん! 飯田くん!」
三人を呼んで、お菓子を押し付ける。三人とも吃驚したようにお菓子と私を見ていた。
「頑張ったから、お菓子、あげる」
ニカッと笑いかけると飯田くんは目を瞬かせてから「頑張っただなんて」とまた自己否定を始めかけたので「ストップ!」と押し止めた。
「君から見れば今回の事、色々反省点があるのかもしれないけど。さっきの飯田くんの言い分、なるほどなって思ったし。でも、私にはそう悪い事ばっかりじゃないとは思えないよ。少なくとも、飯田くんがヒーロー殺しを止めようとしたことで、殺されかけてたヒーローは殺されずに済んだんだから。ショートも、緑谷くんも!」
「え」
「えっ、僕!?」
「そう! できなかったことばかりに目を向けるんじゃなくて、できたことにも目を向けよ! ていうか君たちいつもこういう話ばかりしてんの〜? ていうか聞いてよコンビニのフィナンシェ超絶美味しかったのに改悪しちゃったんだよ! どう改悪されたかわかる? あのね、恐ろしい事に…レモン成分が強まったんだよ! バターだけでよかったのに! もうレモンの匂いがすごいの柑橘系嫌いじゃないけどフィナンシェはバターの匂いが強い方が好きなのに!」
「こいつ口がすげぇ動くんだ」
べらべらと喋り倒す私を、ぽかんと呆けている緑谷くんと飯田くんにショートは真顔で注釈を入れていた。
緑谷くんと飯田くんは私のマシンガントークに圧倒されている。場を盛り上げるために最近のちょっとした悩みを大袈裟に伝えて見てるんだけど…やめた方がいいかな。話を切り上げようと声のトーンを落とした時だった。
「常野さん! 発言をいいだろうか!」
「はいどうぞ!」
飯田くんがビシッと挙手してくれたので、意外に思いつつもすかさず拾い上げる。飯田くんは顎に手を添えながらかしこまった顔つきで言った。
「コンビニのお客様フォームから前の方がどういう風に良かったか説明したメッセージを投稿したらどうだろうか。消費者の声は企業にとって最も重要視しているだろう」
「なるほど! やってみるね!」
「しかし一人だと力が弱いかもしれないな…。俺だと常野さんの好きな菓子の改悪前を食べた事がないから比較できないし…」
「いや、常野さんと同意見の人たくさんいるよ。SNSで調べたら常野さんとほぼ同じ事を呟いてる。これをスクショ取って資料として添付すればいいんじゃないかな」
「わーーほんとだ! 私よりキレてる人もいる!」
「これはやめておこう、アンチだと勘違いされたら困る。好きだからこそ声を上げてるんだってことを強調していこう」
「おおお…! ありがとー二人とも!」
場を盛り上げる為に些細な悩み事を打ち明けたら、思いのほか二人とも真面目に考え込み、しかも効率的な手段を思いついてくれた。単純に嬉しくて、お礼を告げる。
「何を言う! 礼を言うのは俺の方だ! 先ほどの常野さんの言葉は胸に響いた…!」
目をカッと見開きながら息巻くような口調で声を張り上げる飯田くんにふふんと得意げに鼻を鳴らしてみせるポーズを作ってみたものの、内心で飯田くんは大袈裟だなぁと苦笑する。
私は単に事実を口にしただけだ。犯罪者と対峙してひとりの命を救った。並大抵の高校生ではできない所業をやり遂げたのだからもっと誇りに思うべきだなんて、私じゃなくても思う事。
「ふっふっふ。もっと褒めてくれてもいいんだよ〜?」
「そうか、わかった! ではまず、」
「明はすげぇよ」
明朗快活な声に落ち着いた声が混じる。
え。
声の先に視線を向けると、ショートじっと私を見据えていた。切れ長の瞳に湛えられた冴え冴えと光る強い眼差しを、真っ向から浴びる。
「ガキの頃から付き合ってるが、不機嫌そうなところを見たことねぇ。八つ当たりもされたことねェな。優しくて面倒見いいけど、お節介じゃねえんだ。触れられたくないとこには、触れずに、黙って見守ってくれる」
ショートの言葉をうまく理解できずに私はぽかんと口を開いていた。ショートが何を喋っているのか、わかる。わかるんだけど、意味をうまく処理できない。呆然としている私を他所に、ふむふむと頷いている緑谷くんと飯田くんに応えるようにショートはまだ続ける。
「明は視野が広い。周りの事をよく見てる。気を遣ってないようですげぇ気を遣ってる。友達も多い。ただ闇雲に多いんじゃなくて一人一人からの信頼も厚い。べらべら喋り倒す時は雰囲気を良くしようとしていて、」
「ショ、ショート……!」
私の切羽詰まった呼びかけに、ショートはぱちくりと目を瞬かせて首を傾げた。自分が何をしでかしているのか全くわかっていない。
ショートは左手からだけじゃなく、言葉でも人を燃やせてしまうようだ。
だって私、今、すごく。
「常野さん、ものすごく赤いぞ!」
「湯気まで出てるよ!?」
私の異変に飯田くんと緑谷くんは目を丸くして驚きの声を上げた。ショートも「明!?」と驚いている。誰のせいでこうなっているのか全くわかっていない。誰のせいでこうなってんのよ、と可愛さ余って憎さ百倍の気持ちで恨めし気に睨みつけると、ショートは狼狽えた。
「俺、なんかしたか?」
「きゅ、急に、褒めるから!!」
「? お前さっきもっと褒めろって言ってたじゃねえか。それに今まで思ってことも言いたかったし。駄目だったか?」
叱られた子犬のようにしゅんと萎れて窺うように見つめられると、あまりの可愛さに私は死んでしまいそうになる。嫌じゃないから駄目じゃない。でも駄目じゃないと言ったら、ショートの掌の上で転がされている事を告げるみたいでなんだか悔しいし。
けど、イエスともノーとも言えない間も切なげな瞳で見つめ続けられて、私は。
「私、トイレ!!!」
逃げる事にした。
心臓はまだバクバクと喚いている。けど、これ以上トイレに籠城しているとショートにうんこしてると誤解されてしまう。それは嫌だった。落ち着け落ち着け…ぶつぶつ呟きながら、病室までの帰路を辿る。
最近のショートは何なのだろう。真正面から直球で素直に言葉をぶつけてくる事が多くて私はもういっぱいいっぱいだ。いや断じて嫌じゃない。全く嫌じゃないけど、むしろ超絶死ぬほど嬉しいんだけど…! 素直で天然な男子に片思いするって本当に大変だ。無自覚に殺し文句を垂らしてくる。
ショートは何の思惑も持たずにただ私を良い人だと思って褒めてくれたのだろう。ええ、わかってます、わかってますよ。赤ちゃんの頃からの付き合いでショートが私を恋愛対象として見なさなかった事は私が一番知っている。もしかしたらショートも私の事を…! なんてお花畑な考えはしてない、けど。
嬉しい。めちゃめちゃ嬉しい。
私のことそんな風に思ってくれてたんだ。
口元がむずむずと震える。足元がふわふわと浮いている。自然とスキップ寸前の、軽い足取りになった。
病室が近づくにつれて、少し開いたドアからショート達の声が聞こえてきた。
頬の緩みを抑えるようにキリッと顔を引き締めてから、足を一歩踏み出した時。
「―――死んでたかもしれねぇんだよな」
ぽつりと独り言のような呟きが落とされる。
特別大きな声じゃなかった。
だけどそれは私の鼓膜を穿つように強く響いて、私の世界から音を消した。
どういう話の流れでショートがそう言ったのかわからない。けど、どんな流れでもどうでもよかった。
問題は。ショートが今生きている事は当たり前じゃないという事。
足が鉛で繋がれたように重い。氷の上に立たされているような気がした。いつ氷解し、暗い海の底に沈んでもおかしくない。
ヒーロー殺しと対峙した時。
もし、一歩間違えてたら。
今、ここに、ショートは。
「常野さん?」
ビクッと肩が震えた。振り向くと目を丸くした緑谷くんが私を見ていた。
「みどり、や、くん。え、なんで廊下に、」
「僕もトイレ行ってて…、大丈夫? 顔が真っ青だよ?」
心配そうに眉を寄せている緑谷くんに『大丈夫』と言おうとしたら「明?」とショートの不思議そうな声がドア越しに聞こえてきた。
サアッと血の気が引いていく。今、こんな顔で会いたくない。どうしよう。どうしたらいいんだろう。
「あ…」
掠れた声を漏らしながら挙動不審に左右をきょろきょろと見渡し、隠れる場所を模索すると。
「こっち…!」
緑谷くんが私の腕をガシッと掴んでいた。瞬きした間に、力強く引っ張られる。少し個性を発動したのだろう、緑谷くんは一瞬だけ超人的なスピードで走った。
「ごめん!!!!」
ショート達の病室より一階上の階に高速で駆け上がるや否や、緑谷くんは何故か全身全霊で頭を下げてきた。
「じょ、じょじょ女子の体に触るなんて…ほ、ほんっとーーにごめん!」
「い、いやいやいやいいよ別に。緑谷くんに変な意図ないのわかるし、むしろ…」
眉を下げながら笑う。目の前の少年があまりにもお人よし過ぎて。
「ありがと。よく私があそこから逃げ出したいのわかったね」
緑谷くんは唇をきゅっと引き締めて、私を窺いながら呟くように言った。
「…君が、逃げたい、救けてって言ってるような気がしたんだ」
「うん、その通り。ブラボー!」
ぱちぱちと拍手しながらすごいすごい! とテンション高く褒めちぎる。だけど私を見据える緑谷くんの瞳は強く光っている。先ほどの弱気な様子は影を潜めていた。どうして私が救いを求めたのか推し量ろうとする真摯な姿勢に対し適当な態度でやり過ごそうとしている自分が軽薄に思えた。拍手の手を止めて、力なく微笑を浮かべる。
「緑谷くんはすごいね。立派なヒーローだよ。飯田くんも。…ショート、も」
ショートの名を喉から押し出すようにして紡ぐ。掠れて湿っぽい声だった。眼球に薄い水の膜が張られて、視界がぼやけていく。
あ、駄目かも。
そう思った時はもう駄目だった。
「………え。え、え、え……!」
「ぐす、あ、はは、き、にしな、い、ぐすっ、で」
「いやいやいやいやいや!!!」
ぼろぼろと涙が零れ落ちていった。無理矢理口角を持ち上げると、口の中に涙が入った。熱い喉の奥を冷やすのにちょうどいい。
「ちょっと、吃驚しちゃっただけ、だからさ、あはは、ぐすっ」
ハンカチを必死に探している緑谷くんに笑いながら伝える。
「ショートが死んでたかもしれねえんだよな、とか…」
ショートの言葉を実際自分でも口に出そうとしたら息が詰まって、最後まで言えなかった。
「……っ」
私は顔を俯けて、ぎゅっと下唇を血がにじむほど噛みしめた。はあっと熱い息を吐きながら、小刻みに震える体を抑えるように右手で左腕を押さえつける。緑谷くんの息を呑む音が聞こえた。
「ごめん。みっともなく動揺して。ヒーローなら危ない目に遭う事あるって、当たり前なのにね。私、ずっとショートがヒーロー目指してるの知ってんのにね。…ただの幼なじみがこんな狼狽えて、重くて、バッカみたい」
私はこれからショートが怪我を負う度に、危険な目に遭う度に、こうしてめそめそと泣くのだろうか。
ショートに気づかれてはいけない。
気づかれたら、優しいショートは、私を気にしてしまう。
重荷になってしまう。
良い事は何もできないくせに、負担だけはかけてしまう。
それだけは嫌だった。
ショートが私から離れてしまう事よりも。
絶対に、嫌だった。
涙が流れないように天井を仰ぎみる。鼻の先がつんと尖って痛かった。もう一度緑谷くんに謝ろうと彼に顔を向けた時だった。
「バカじゃないよ」
緑谷くんが私の目を真正面から見据えていた。ぽつりと小さな呟きを口にしてから、今度は少し声を張り上げて、もう一度同じ言葉を私に告げる。
「バカじゃないよ。誰かを想って、泣くほど心配する事は。重くもない、バカじゃない。
…心配されたらさ。心配かけてごめんって思うけど、ホッとするんだ」
緑谷くんの声色が和らいで。それから、静かに笑った。
「帰りを待っててくれる人がいるんだって、安心するんだ」
正直普段はそういうありがたみ忘れがちだし、照れくさくて、お礼とか言えたことないんだけどね。
苦笑しながら頬を掻く緑谷くんに、窓から差し込んだ陽光が降り注ぐ。光を背に立つ緑谷くんの輪郭が光っていた。
「って、なんか偉そうな事ごめん! 常野さんが言いたいことはそもそも心配させるなって話なのかもしれないけれど!」
「…ううん」
静かに首を振る。慌てふためいている緑谷くんに「ありがとう」とお礼を伝える。
靄が全部消えた訳じゃない。ショートはこれからだって危険な目に遭い続けるし、その度に私は胸が張り裂けそうなほど心配するだろう。
だけどその事が重荷じゃなくて、少しでも、ショートの心に力を与えられるのだとしたら。
私はもう、それだけで十分だ。
「ほんとにありがとう、緑谷くん」
目尻に浮かんだ涙を拭いながら、微笑みかける。すると何故か緑谷くんはものすごい勢いで目を逸らした。しかも何故か、頬が赤い。そういえばさっき、女子の体に触るだなんてとかなんとか言って…………。
機転が利いて、頭が良くて。凶悪犯を前にしても背中を見せずに一歩も引かなかったという、緑谷くん。
顔を覗き込んでみると、緑谷くんは少し仰け反った。頬の赤みが更に増している。
緑谷くん、女子に免疫ないんだ。
「ふっ、はは、あははははは!」
「ば、爆笑!?」
「ごめ、はは、あははは! だ、だぁ、って! 私には腰が引けちゃうのおかしいでしょ! 犯罪者には近寄れんのに!」
「あれは緊急事態だし男の人だったし……!」
「あはははは! あはははは!」
お腹を抱えながら笑っていると、誰かがこちらを見ている気配を察した。視線を辿る。少し離れたそこにはショートが立っていた。距離が離れているのと逆光でうまく表情は見えない。
「ショート〜!」
ぶんぶん大きく手を振る。ショートは一拍の間を置いてから、こちらに向けて足を踏み出した。