「シャル、お喋りが過ぎるぞ!……森でもそうだったが、お前はこの声が聞こえるのか」
「聞こえる。その剣は一体……」
確証を含む疑問を投げられ返事をすると、彼はスラリと綺麗な曲線を描く剣を抜いた。
その剣には黄色のレンズのようなものが埋め込まれていて、それを持つリオンはとても絵になった。持つべくして持っている感じだ。
「こいつはソーディアン・シャルティエ。ソーディアンとは-----」
思いの外素直に答えてくれて、しかもかなり丁寧に説明してくれた。歴史や使い方、シャルティエの事。
聞けば聞く程とても貴重な剣だという事が分かる。
「そんなものがあったなんて……。ということは私にも資質ってのがあるって事?まぁそれは置いといて、シャルティエ……だったよね?宜しく、私ファーストネーム。」
『はい、坊ちゃんとずっと一緒だから噂もかねがね!宜しくお願いします!』
「ふふっ、なんだか凄く仲良くなれる気がするな。それにしても皆してウワサウワサって……一体何の噂が立ってるっていうの」
『とても優しくて凛々しい素敵な方だと街の住民は話していますよ。これだけの地位を持っていても気取っていなくて好感を持てるとか!』
「嬉しい噂だけど……噂でしかないからね。私って結構貪欲でねちっこいよ」
困ったなぁ、と眉を下げて笑うとリオンはまるで面白くないといったような顔で話に割って入ってきた。
「そんな事はどうでもいい。シャル、お前妙に楽しそうに話すじゃないか……どういう事だ?」
『ええっ!?そんな事無いですよー、機嫌損ねないで下さい!』
「ふふ、別にシャルティエを取ったりしないから大丈夫だよ。それに私じゃ絶対入れないほど強い絆があるのは見てれば分かる。リオンの表情も声も、柔らかいもの」
いいなぁ、と心の中で呟くとリオンはほんの少し驚いたような顔をしていつものようにフン、とそっぽを向いた。けど怒ってはいないみたいだ。もしかして照れているのだろうか?ソーディアンの声を聞ける人は数少ないのなら、こんな風に話すリオンを知っている人も少ないのかもしれない。実に得した気分だ。
『ファーストネーム。坊ちゃんを宜しくお願いしますね。』
「もちろんだよ。友達兼ライバルだからね!」
「おい勝手に決めるんじゃない!僕はそんな風には微塵も思ってないからな!」
『坊ちゃん、いきなりの事で照れてるだけですから大丈夫ですよファーストネーム』
「シャル!!」
焦ったように大声をあげるリオンはとても歳相応に見えた。まるでシャルティエがお兄ちゃんみたいだ。とても微笑ましい光景である。
「私さ、実は友達になりたいって思ったの初めてなんだ……自分で言っておいてなんだけど、照れちゃうね。」
「……勝手に照れていろ、僕はもう行くぞ。」
「はいはい。一室貸してくれて有難う御座いました。じゃあまたね、リオン」
複雑な感情を孕んだような横顔は、いつもより近くに感じた。
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