薄らと目を開くと、そこは見覚えのない天井だった。意識を失った私を、おそらく彼が兵士を呼ぶなりして街まで返してくれたのだろう。ああ、やってしまった……。
上体を起こし深く反省していると、扉からノック音が聞こえたので返事をした。すると間もなくしてメイドさんが入って来た。
黒髪のとても綺麗な人で見惚れていると、安心したようにその人は微笑んだ。
「目を覚まされたんですね、良かったです。私はこのお屋敷のメイド長を任されていますマリアンと申します。」
「初めまして、ファーストネームと申します。看病して頂いたみたいで……有難う御座いました」
「街でもよく話題になっている方ですもの、存じておりますよ。それにしてもリオン様が連れて帰って来られた時は驚きました」
「え……!?あの、此処はもしかしてリオンの家……」
「はい、そうでございます。」
上品そうに微笑みながら喋る彼女、マリアンさんはとても美しく暖かみを感じる人だった。
それにしてもリオンの家で休ませて貰っただなんて、なんとも申し訳ない気分だ。
飲み物をベッド横のテーブルに置いてから「リオン様を呼んできます」とマリアンさんは部屋を出て行った。
ベッドから降りて服を整えていると扉が開き、見知ったアメジストの瞳がこちらを向いた。
「リオン、有難う。まさか貴方の家で休ませて貰うなんて思ってなかった……最初に忠告を受けたのに足を引っ張った上こんな迷惑まで掛けて、ごめんなさい。」
「……。」
本当に反省している。
出来る限り深く頭を下げると、リオンの口が開いた。
「全くだ……と言いたい所だが、僕の方にも非はある。ちなみに報告はもう済んだからな。」
「えっ」
「何だ。何か不満でもあるのか」
「いや、その……失礼だけど、怒られると思ってたから拍子抜けっていうか……」
『本当、坊ちゃんはマリアンの言う事だけは良く聞くんだから』
「へー、リオンも可愛いところあるんだね。……って、あれ?またあの声!?」
驚きを隠せずにいると、剣についてるレンズのようなものがチカチカと点滅しているのを見た。これはもしかしなくても、のようだ。
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