07


兵士達が走り回り、担当の任務をこなしていく。
その中でユウナ達はそれぞれの場所でその様子を見ていたのだが、ナマエはアーロンの横でそれを見ていた。

「『シン』は来るのかな…。」

ユウナがポツリと呟いた。すると、ユウナの側に立っていた兵士が


「『シンのコケラ』を取り戻しに必ずやって来ます。念には念を入れて、コケラに悲鳴を上げさせるのです」

と説明をすると、後ろからアーロンが『そんな事をしなくても…『シン』は来る』と言った。



『シン』はジェクトだから、息子であるティーダにその姿を見せに来るはずだ。

アーロンはナマエの耳元でそう言った。
















それから少しして、作戦が決行された。


『シン』のコケラが入っているカゴに電流を流し、悲鳴を上げさせる予定だった。

しかしそれは、思わぬ方向に事態が進んでしまう要因であり、カゴの中でコケラ達が合体し、新たなコケラ『ギイ』となって襲いかかってきた。
それを見てすかさずティーダ・アーロン・ワッカが戦闘に出る。


「ワッカ!頭は任せたッス!!」

ティーダがワッカにそう言うと、ワッカは『任せろ!!』と言った。
そしてティーダは胴体を攻撃しようとしたが、両手でガードされ、思うほどのダメージを与えられない。


「腕が盾の役目となるわけか……。おい、どこを攻めればいいか……分かるな?」

ティーダに向かってアーロンは問いかけた。


「勿論!!先に腕をぶっつぶせばいいんだろ?」
「そうだ。行くぞ!」

何度かメンバーを替えながらコケラを倒し、少しした頃、海の色が変わっていった―――







『シン』が現れたのだ。














海岸ではチョコボ騎兵隊の隊長・ルチルが指揮を執り、戦闘が開始していた。
多くのコケラ達が『シン』から放たれ、討伐隊に襲いかかる。
その様子を、高台にいる一同は固唾をのんで見守っていた。
アーロンがいち早く『シン』の異変に気付いた。

「来るぞ!!」

辺りにいる全員に声を張り上げて待避を促すと同時に、横にいたナマエを抱えて横に飛んだ。




















その直後、『シン』から重力砲が発射され、海岸でコケラを相手に戦っていた討伐隊の大半が






消し飛んでしまった―――


















程なくして、衝撃で飛ばされた各々は起きあがる。
ユウナが起きあがると、シーモアが先程倒したはずのコケラと戦っていた。
そこにユウナとアーロンが加勢し、今度こそ倒す事が出来た。


「みんなは!?」

ユウナが叫び、振り返るとそこには……








アルベド族の青年達が機械を使用し、『シン』に抵抗していた。

『シン』の周りに張られているバリアの様なものをあと一歩で突破できる…

そんな時に機械が耐えきれず爆破してしまった。
























こうして、結末の見えていた戦いは予想通りの結果で幕を閉じた―――






海岸で目覚めたティーダは、戦場の端で頭を抱えて踞るガッタを見かけ、彼の悲痛な叫びを聞くと、拳を握りしめて怒りに震えていた。


「おまえ何なんだよぉ!!」

ティーダは『シン』めがけて走り出した。そのまま海中を泳ぎ、『シン』をひたすら追いかけ続けていた。
しかし、彼は途中で意識を無くし、気が付いたら海岸に打ち上げられていたのだった……。


ユウナは、戦死した兵士達が迷わぬように異界送りをしていた。






華麗に、しかしどこか悲しそうに舞うユウナを、ナマエは遠くから見つめていた。

自分の身体を抱きしめて、何かから耐えるようにつらそうな顔をして。






「どうした。」

気が付くと横にはアーロンがいた。

「あぁ…ちょっとね…つらいなって思って。こうなる事は分かってたのにね…。」
「………。」
「ジェクトもつらいだろうから、早く助けてあげたいよ。……それにユウナがこうして舞っているところ、あまり見たくないんだよね……。」
「…………。」
「あの子は優しすぎるから…知り合いが死んでるのに、悲しみに浸る事も許されない…
こんな時代、はやく終わらせないとね。」
「……そうだな………。」

ナマエはアーロンに向かって、『私は大丈夫だけど、ティーダは参ってるんじゃないの?』と言って、一足先にジョセ街道入口に向かった。
そんなナマエを見送って、アーロンは先程のナマエの様子を思い起こしていた。











もしや…とは思うが、それを信じたくないという気持ちもある。









ナマエは確実に、自分に関する何かを隠している。
そんな事を考えているうちに、ティーダが近くにやってきた。

アーロンは、ティーダに声を掛けるべくそちらに向かっていった。





一方、一足先にジョゼ街道の入口にやって来たナマエは、その少し先の岩壁に凭れ掛かっている男と、その横で座り込んでこちらを見つめている男の存在に気が付いた。

その2人は、ナマエの姿を見つけるとこちらに向かって歩いてきたのだが、だんだんと近付いてくる2人を見てナマエは目を見開いた。


「リュウ…?それにタイガ…?」












4年前一緒に旅をした従兄達。

この近くに住んでいるのは知っていたが、まさかここで遭遇するとは思っても見なかった。











「ナマエ。久しぶりだな…。」
「お前さ、元気ならたまには顔出しに来いよな?ったく…元気そうで良かったぜ。」

リュウはいたって普通に、タイガはナマエの肩に手を回して頭をグリグリと撫で回してからそう言った。


「ミヘンセッションの話は聞いていた。ま、どうせ上手くいくとは初めから思ってなかったけどな。
だからこうして来たのさ。旅は辞めたけれど、これでも俺は召喚士だったんだからな。
異界送りの手伝いくらいはできるだろう?」


リュウは作戦が上手くいかないと言う事は、情報が入ってきた時点で問題点などを分析し、成功率0%と踏んでいた。
ナマエは、リュウの分析力には頭が下がると常日頃から思っていたのだ。
それは弟のタイガも同じで、彼は兄とは対照的に、頭で考えるよりもまず身体が動いてしまうタイプなのだ。
(ナマエと同じタイプだったりする)



「そゆこと。アニキが来るなら俺も行こうと思ってついてきただけなんだけどよ。
こんなところでナマエに会えるとは思ってなかったけどな〜。一応噂は聞いてたど。」
「噂…?」
「大召喚士ブラスカ様のご息女が旅立ったけど、その一行の中に伝説のガードが2人もいるんだ!ってな。」

悪い事できねぇぞ。タイガは笑いながらそう言った。


「……会えたんだよな?ナマエ。」


リュウは優しく訊ねると、その質問にナマエは黙って頷く。


「そうか…なら………」

リュウが何かを言いかけた時に後ろからユウナがナマエを呼んでいた。

「ナマエー、どうしたの?」

ユウナはナマエの横までやって来て、「この人達は…?」と訊ねた。


「ユウナ、覚えてないの?」

ナマエは少し驚いた。








4年前、ナマエが旅立つ時にワンワン泣いて『連れてっちゃイヤ』とリュウに頼んだのは他でもない、ユウナなのだ。









「……もしかして…ナマエの従兄のリュウさんとタイガさん!?」
「思い出してくれたか。」

2人は笑ってユウナを見た。そして、久しぶり、と挨拶した。
ユウナもぺこりと頭を下げて挨拶した。


「この人達、誰ッスか?」

いつの間にか横に来ていたティーダはナマエに訊ねた。

「この人達は私の従兄で、こっちの黒髪の人がリュウ。元召喚士サマね。
んでこっちの金髪ツリ目のつんつん頭がリュウの弟で、一緒にガードしてたタイガ。」
「おい、ナマエてめぇ何だよその紹介は!!」

タイガがナマエにヘッドロックを掛けた。


「イデデ…苦しいって!!」

ナマエが本当に苦しそうに言うとタイガはパッと離して『わりい』と謝った。
この可愛い従妹にはかなわないのだ。







その光景を笑って見ていたリュウだったか、後ろの方にいるアーロンを見つけると、表面上は笑顔ではあるが、
周囲には絶対零度の風が吹き抜けるほどに冷たい空気を発しながらアーロンに挨拶をする。


「お久しぶりですね、アーロンさん。うちのかわいいナマエを10年もほったらかしにしてくれて…(ニッコリ)」

それを見たアーロンは動じる事もなく『ジェクトとの約束を果たすために旅に出たのでな…。』とだけ言った。
そのやり取りを遠巻きに見ていた他のガード衆は(キマリを除く)、






『ナマエの(ニッコリ)はこの従兄似なんだ!!』と思ったそうな…。









結局、寺院まで一緒に行き、その晩は2人の住む家に一行を泊める事にしたリュウとタイガだった。


















そしてナマエは心の中でため息をついた。




(タイガはアーロンの事気に入ってるからいいけど……リュウをどうやって説得しようかな……)と。


「それに…もうバレちゃうよなぁ………、アーロンには……。」




ナマエはひっそりと呟いた。











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