02
ナマエ、アーロンとティーダが正式にガードとなり人数が7人と大所帯になった召喚士ご一行は、ジョゼ寺院を目指してミヘン街道を歩いていた。
ここには堅い敵や素早い敵が出てくるため、アーロンとティーダはずっと先頭で戦っていたのだが……ナマエは、呑気に一番後ろを歩いていた。


「ナマエ〜、替わってくれないッスかぁ〜?」



戦闘が終わり肩で息をしながらティーダがぼやいた。
「な〜に言ってんのさ。ティーダ達はまだLVが低いんだからいっぱいバトルをこなして強くならなきゃダメッスよ〜。私はもうスフィア盤殆ど回っちゃってるからさ(笑)」



そう。
現時点ではナマエとアーロンが一番強いのだ…。先程仲間になったばかりのアーロンもいつの間にかスフィア盤を一周していて、すでに最強のガードとなっていた。
しかし、他のメンバーの防具には『貫通』のアビリティがついていない為に戦闘に出る羽目になっていただけだった。
戦闘が終わり、アーロンはナマエの所までやって来た。


「ならば俺と替わってはくれまいか?コイツらの面倒を見るのも疲れるのでな。」
「ん〜……しょうがないなぁ。じゃあちょっとだけ替わるよ。ティーダ〜、魔物出たら教えてちょー!」

ナマエは先頭を歩くティーダに向かって大きな声で頼むと、『りょ〜かいッス!』とティーダはそう返事をして、再びユウナやワッカ達と話しながら歩き始めた。
キマリとルールーがその少し後ろからゆっくりと歩き、アーロンとナマエは、更に後ろを歩いていた。




2人は少しの間黙っていたのだが、先に沈黙を破ったのはナマエだった。



「なんかさ…こうして2人で歩くのって懐かしいね。あの時はよくジェクトが乱入してきたけど。」
「…そうだな。しかし、ジェクトもだがお前も緊張感がないと俺は思ったぞ。」


10年前、こうしてミヘン街道を北に向かって歩いた時、アーロンは常に考え事をしていた。
ブラスカのガードとなり、『シン』を倒すために旅に出た。


究極召喚を使えば召喚士は死んでしまう。


それは分かっていた事なのに、ザナルカンドが近付くにつれて…こうしてブラスカ・ジェクト・ナマエと共に旅をしてきて、『ブラスカには死んでほしくない』という気持ちが強くなってきていたのだ。
故に、『どうしたらブラスカも死なずに『シン』を倒せるのだろうか』と言う事ばかりを考えていた。

そう言うときに限って、ジェクトと共に考える事を邪魔していたのがナマエだった。

 

 




「ところでナマエ。お前の従兄達はどうしているんだ?」


アーロンは、ルカの外れで話したときのナマエの表情が気になっていた。

『シン』を倒すために従兄達と旅に出たと言っていたが、こうして『シン』がまだ存在しているという事は、究極召喚を諦めたか召喚士が死んでしまったかのいずれかであろう。
ナマエはアーロンの問いかけにごく一瞬だけ戸惑いを見せたが、すぐに普段の状態に戻った。
それは、ナマエを昔から知っているアーロンと、もともと鋭いキマリだけが気付きそうなくらいの表情の変化だった。



「ん〜?確かジョゼ寺院からちょっと離れた辺りに住んでると思う。」

ノホホンとナマエは答えた。
うまい事はぐらかそうとしているのがバレバレだったのだが、この話題にはよほど触れたくないのだろう。


「そうか…。詳しい事はいつか話してもらうとするか。」

アーロンは何となくではあるが、だいたいの予想はついたようである。



─彼女は何かを隠している。



しかし、無理やり問いただす事だけはしなかった。
仮にも愛する女である。



これ以上彼女を傷つけたくないと思っていたからだ。






いつの日か、自分から真実を告げてくれる事を信じて………。



 

 




「ナマエ〜!魔物魔物!!」

先頭でティーダが慌てながら叫び、ナマエに助けを求めた。

「あ〜…出ちゃったか…。しゃーない、行ってきます。」

ナマエはアーロンにそう言うと、ダッシュでバトルの最前線まで行き、剣を構えた。

 

「よろしくッス!」
「ほらほら少年、よそ見してないでサクサクッと倒しちゃうよ♪」
「ウッス!」
「ワッカも準備はオッケーかい?」
「あったりめーよ!」



ティーダは今まで通り素早い敵を倒し、ワッカは飛んでいる魔物をボールでやっつけ、ナマエはアーロンの替わりに入ったので堅い敵を倒していた。









そんなナマエの様子を後ろから見ていたアーロンの横にユウナとルールーがやって来た。


「アーロンさん…少々不躾な質問をしてしまいますが…いいですか?」
「何だ。」
「アーロンさんとナマエって、10年前父さんと旅をしたんですよね。」
「ああ。」
「ナマエとすごく仲が良さそうなんですけど…もしかして、つき合っていた!とかですか?」


ユウナが何故か楽しそうに訊ねてくる。


「………。」



そこに、バトルを終えたナマエが戻ってきた。


「なになに、何の話してるの?」
「あ、ナマエ。あのね、ナマエとアーロンさんって恋人同士なんですか?って質問してたの。」


ユウナはあっさりと内容を暴露した。
それを聞いたナマエは、みるみるうちに顔が真っ赤になっていったが、そんなナマエを無視してユウナが更に話を続ける。


「アーロンさん、あのですねぇ…私が小さい頃、ナマエと一緒に寝てもらった事があったんですけど、その時にナマエが『アーロン』って寝言で言って……フグッ!??」
「ちょっ……///ユウナ!何言ってんのよ!!私そんな事言った覚えないよ!!」


それは寝ている本人が、自分の寝言を覚えていたら恐ろしいモノがあるが…。
ナマエは更に真っ赤になってユウナの口を手で封じた。

 

 



「……全く………。まぁ、コイツがどう思っているかは知らんが、俺は今でもそう思っているが?」


サラリと爆弾発言をしてくれたアーロンであった…。


「アーロン///!それって…本気?」

ユウナの口から手を離し、ナマエは未だ真っ赤な顔のままアーロンを見つめた。
アーロンは口の端を少し上げて不敵に笑うと、ナマエの耳元で


「さぁな…。答えは2人だけの時にでも教えてやるさ。」

と囁いて、1人でさっさと歩いていってしまった。



 

 

少し離れた場所ではユウナとルールーがキャーキャー騒いでいた…。

ナマエが、照れ隠しからか『ほらほら、召喚士様!祈り子様に会いに行かなきゃならないでしょ!行くよ!!』と大声で言い、サッサと歩き始めてしまった。


「あ〜、待ってよナマエ。ごめんね〜。」


ユウナは笑いながら先に行った2人を追いかけた。
それに続いてルールーとキマリも歩き出す。















後に残ったのは、驚きを隠せないティーダとワッカの2人だった。



2人は顔を見合わせると



「「……マジッスか〜………(ガックリ)」」

と、同時に呟いてガックリと肩を落としたとか。




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