12

ユウナ達一行は幻光河に到着した。







ティーダが一面に広がる幻想的な光景を目の当たりにして、提案をしようとすると、『夜までは待たんぞ。』と、アーロンに釘をさされた。
それを聞いてふて腐れるティーダを横目に、ナマエはクスクスと笑っていた。


ジェクトも同じ事を言っていたな、と思い出したのだ。
そのすぐ後で、シパーフに斬りかかったのだった……。



「な〜に笑ってるッスか?」

ティーダが不審そうに訊ねてくる。
ナマエは『なんでもないよ、ただふて腐れるところが可愛いなと思って。』と笑って誤魔化した。
これで、ジェクトも同じことを言って同じようにふて腐れていました、なんて言ったら更に気を悪くする事は目に見えていた。
可愛いなんて言われたティーダはと言うと、ややシュンとして『男に可愛いはないッスよ……』と呟いた。




それを黙って見ていたアーロンが

「ナマエ。それぐらいにしておけ。」

と、ほんの少しだけ不機嫌な色を滲ませて言うと、先に歩いていってしまった。
彼女はニヤリ、と笑うとアーロンを追いかけて擦り寄った。

「なになに?もしかして……ヤキモチ焼いてくれたのかなぁ?」

ご機嫌な様子で訊ねてくるナマエに対し、アーロンは未だに不機嫌気味。


「………………。」

アーロンのその様子に、おや、と思ったナマエはアーロンの裾を引っ張って人々の視界から外れるような物陰まで連れて行った。


「…なんだ。こんなところに連れ込んで。」
「アーロン?」

そっと両手を伸ばし、アーロンの両頬に触れた。
と思ったら、グリッと自分の方に顔を向けさせて引き寄せ、触れるだけの口付けをした。
すぐに唇を離して、アーロンの片眸をじっと見つめる。

悪戯っぽく輝く、紅い双眸から視線をはずせなかった。


「ティーダのこと可愛いって言ったのが気に入らなかったの?」
「……………………。」
「私の気持ち、知ってるでしょ?こんなになってまでアーロンの事待ってたんだから。」












そうだった―――

ナマエは4年前、ユウナレスカに戦いを挑み自分と同じように死んだのだ。
それでも彼女はこの地に留まった……


再びこのスピラで自分に会うために

そして、召喚士となるユウナや、ジェクトの息子・ティーダが自分たちと同じ轍を踏まないように密やかに導くために…………











「そうだったな……。すまない。」
「分かればよろしい♪」

嬉しそうに言うナマエを、アーロンは突然抱き寄せた。
急な行動にナマエは目を丸くして驚いているところに、アーロンは再び唇を寄せた。
驚きつつもナマエはそれを容認し、薄く唇を開くとすぐにアーロンの口付けが深いものにかわった。
何度も角度を変え、互いを貪るように。
それだけで体温が急上昇するような気がしていた。






暫くしてようやく唇を離すと、

「お前の気持ちに対する礼だ、なに、釣はいらん。」

ニヤリ、と口角を持ち上げてアーロンは『もっとしてやりたいのは山々だが、お子様達には些か刺激が強いだろう…』と言い、そのままシパーフ乗り場の方に向かっていった。
そーっと振り返ってみると……少し離れた場所に、真っ赤になって立ちつくすユウナがいた。


その場に一人残されたナマエは呆然と立ちつくしていた…が、何やら悔しそうに叫んでいたとか。
















「ナマエ……ごめんね、邪魔しちゃったかな…?」

ユウナが未だに赤い顔をして済まなそうに訊ねてきた。


「ううん、そんな事ないよ?ところでどうしたのさ?」

そう言われて、用件を思い出したように『ティーダ、どこかで見なかった?』と聞いてきた。
どうやらユウナはティーダの事が気になって仕方ないようだ。
それはティーダにしてみても同じなのだが…。

(恋する女の子だねぇ〜。)

と、ナマエは内心思っていた。
自分にもこんな時代があったのだろうか…などと考える。


「いや〜見てな………って、あそこにいるの、ティーダじゃないの?」

見てない、と言いかけた時にアーロンとシパーフ乗り場で話しているティーダが目に入った。
ユウナは『ホントだ。いつの間に戻ってたのかな…。』というと、そちらに向かっていこうとしていたからナマエは一緒に歩いていった。

アーロンはティーダに、10年前のジェクトの事を話していた。
それを聞いた息子はかなり呆れていた。
恥ずかしそうにしながら……。


「そう言えばそんな事もあったっけ…。あのシパーフ、元気にしてるんだなぁ…。」

ナマエが懐かしそうに呟くと、横にいたユウナがクスクスと笑った。


ジェクトさんらしいね、と言って。






ぼちぼちと乗り場に集まってきた一行は、ようやくシパーフに乗り込む事ができた。














この後、ユウナがアルベド族によって攫われかけるが、咄嗟に追いかけたティーダとワッカのお陰で事なきを得た。

心配して(?)ユウナに声を掛けたハイペロ族のシパーフ使いにユウナは勢いよく立ち上がって『大丈夫です!』と告げるが、その直後にアーロンに怒鳴られた。
申し訳なさそうに座るユウナに、ナマエがヒョコヒョコと近寄っていく。


「ナマエ!お前もじっとしていろ!!」

アーロンが苛立たしげに声を荒げた。

そんなアーロンに構わず、ナマエはユウナの横に腰掛けると『怖いよね〜。』とおちゃらけた。
ユウナはそう思っても言えるわけがなく、苦笑いを浮かべているだけだった。


「そ…そんな事ないよ。私が悪いんだもの……。」

ユウナがナマエに向かってそう言うと、


「ユウナはエライねぇ〜!それにしても怒鳴んなくてもいいぢゃん?」

どうやら引くつもりはないらしい。

アーロンは呆れて黙り込んでしまった。
ありゃ。と思った。



(ヒソヒソ……やりすぎたかな…?)
(うん……後で謝った方がいいよ?)
(大丈夫!ちゃんとご機嫌は取っておくから、ごめんね)


と言って、今度は床に座ったままアーロンの横までズリズリと戻っていった。





アーロンは無言で自分の横にスペースを空けて、ナマエが座れるようにした。
それを確認すると、パッとアーロンの横に座った。

しかも、ピッタリとくっついて。


「アーロン、ゴメンね。」

耳元でヒソヒソと謝ると、チラリと目線だけよこして、ため息をついた。



『謝るくらいなら最初からやるな』

と言っているのだ。
しかし、アーロンには分かっている。
ナマエがなぜあんなことをしたのか……。

ユウナに気を遣ったのだ。



「仕方ない、この詫びは後でたっぷりとして貰うとするか……。」

アーロンもナマエの耳元に唇を寄せて囁く。


「わ………わかったよ。」

ほんのりと顔を赤らめて呟くナマエ。



それを見ていたティーダは思った。










―――こいつら絶対、『伝説のガード』じゃなくて……『伝説の馬鹿ップルガード』だ……!!と。
















そして、一行は北岸に辿り着く。

新たなる仲間が待っているとも知らずに―――





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