11

リュウ達の屋敷に泊まり、明け方ティーダ達は再びジョゼ寺院に向かった。
ユウナが昨夜、かなり遅い時間まで傷ついた兵士の回復や、手当の甲斐なく命を落とした者のために異界送りを行っていて、疲れて寺院で寝てしまったらしい。
朝になって、ユウナと共に回復と異界送りを行っていたリュウが呼びに来てくれた。


「でもさ、ユウナは寝ちゃったんだろ?なんでリュウは起きてるんだ?」

ティーダが疑問に思う。
同じように回復魔法をかけたりしていれば、リュウも同じように疲れて寝てしまっているのでは…と。

その件に関しての回答はタイガがしてくれた。

「あぁ…アニキはうちの親父がやってる病院を継がなきゃならないからな…。」

リュウの父親は、優れた拳法家(モンク)でありながらガードになるのが嫌で、どうせスピラの人間を助けるならケガや病気で苦しむ人を助けようと思い病院を開いていた。
当然リュウが召喚士に、タイガがそのガードになると言いだした時は反対したが、この息子達は意外と頑固なのだ。
言い出したらなかなか聞かないのを充分理解していた為、条件付きで承諾した。


―――途中で旅を辞めたら、自分の跡を継ぐように―――


という条件だった。




「な〜るほど…で、何でリュウは平気なんだ?」
「そこだけどな…アニキは今さ、医者の見習いなんだ。だから勉強とか実習とか、臨床とかあるんだよ。臨床とかは3日くらい平気で徹夜でやってるんだよな……。」

タイガは『信じられないよな……俺は徹夜なんか絶対無理だけどよ…。』と呟いてため息をついた。
そこにいた一同は、妙に納得した。

あの兄ならばそれくらい平気でやりそうだ…と。



ついついその場に立ちつくしてしまった一行は、一斉に我に返り、ユウナを迎えに行った。













「遅かったな。」

リュウが寺院の入り口に寄りかかって、近付いてきたタイガに向かっていった。
タイガは『ちょっとな』と言って誤魔化したが、賢い兄はその場の空気を読む事にも長けているせいか、すぐバレてしまった。


―――おおかた、俺のうわさ話でもしていたんだろう……?―――


と、普通にサラリと言ってのけた。
すでに慣れっことでも言いたげな感じである。





ユウナは中で休んでいると聞いて、ティーダが起こしに行き、その間他のメンバーはその場で待機していた。
ナマエはと言うと、アーロンの横に立ち、しばしばアーロンの足下に来るサルと戯れていた。

その様子を口出しするわけでもなくじっと見ていたアーロンだったが、放っておくといつまでもそうしていそうなナマエに声を掛けた。
何が楽しいんだ、と訊ねればナマエはアーロンの顔を見上げて『サル、可愛いじゃん?』と呑気にそう返事を返す。
自分の顔を見上げて、ニッコリと微笑むナマエを、アーロンは心の底から愛おしいと思った。
アーロンもナマエの横にしゃがみ込み、そっと彼女の頬に手を添えた。


「全く…お前は10年前と変わらんな。
あの時言っただろう、不用心に手を出したりすると噛まれるかも知れん、と。」

話の内容としてはナマエの行動を咎めているのに、その表情からはそんな空気を全く感じさせないような穏やかな表情だ。
ナマエもその顔を見て、同様に穏やかな表情で『そだね、怒られたっけ。』と言って、肩を竦めた。



そんな2人の様子を遠巻きに、且つ面白くなさそうな顔をして見ている人物が一人。


言わずと知れたリュウだった。









内心『近付きすぎじゃないか??』とか、『人に断りもなくナマエに触れるとは…!』とか考えていた。
可愛い妹を何処の馬の骨とも分からない男(ではないのだが)に取られるのが悔しいのである。
すっかり小姑の様だ。
もちろん横にはタイガもいるのだが、こちらは全くもって普通の態度である。
確かにナマエは可愛い従妹だが、アーロンならナマエを任せられると思っているタイガは、リュウのように苛々する事もなく、微笑ましそうな顔をして見つめていたのだった。


「アニキ、仕方ないだろぉ?ナマエが選んだ相手なんだからさ…認めてやらねーと、嫌われっぞ?」

どちらが兄なのか分からない様なセリフを吐いて、タイガがリュウを諭した。

「……これではどちらが兄なのか分からないじゃないか…。…まぁ、そうだな……ナマエが選んだんだ……とは思うんだが、どうにも納得がいかないんだよ。」


リュウはそう言って『なんであんなオヤジに惚れるんだ……!』と呟いたとか。
それを聞いていたタイガは思った。




―――この歳になって、従妹にベタ甘なアニキもどうかと思うんだけどなぁ……。








兄には恐ろしくてそんな事直接は言えないが……。





















ティーダが先に現れて、程なくしてユウナが現れた。


「ごめんなさ〜〜〜〜い」

みんなに必死に謝っているユウナが可愛いと、ナマエは思った。
そして、ワッカやルールーに寝癖がついているとからかわれてふくれているユウナが、フッと笑ったアーロンとナマエに向かって『アーロンさん!ナマエまで!!』というと『さーて、召喚士様の寝癖が取れたら、出発だ』アーロンは言った。
それを聞いてからナマエはユウナを手招きで呼び寄せ、髪を梳いてあげた。


「ユウナは可愛いんだから…寝癖なんてついてちゃ台無しだよ?」

と言って髪を梳かしてあげるナマエと、それを大人しくうけているユウナはどこから見ても普通の微笑ましい姉妹のようで、その様子に一行の気持ちが和まされた。









「アーロンさん」

出発しようとする一行の中、後ろから歩くアーロンをリュウが呼び止めた。


「ナマエの事、頼みます。
まぁ、守られるだけじゃないおてんば娘だが、万が一の時は守ってやって欲しい…。」

リュウの言葉にアーロンは頷く。
それを見てリュウも安心したのか、ナマエに『頑張ってこいよ』と言って、再びアーロンに向き直った。






「もし、コイツに何かあったら………タダじゃおかないぜ(ニッコリ)」








最後の最後まで、アーロンにケンカをふっかけるこの兄は恐ろしい…と思った一行だったとさ。




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