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寺院でずっと働いていたユウナをティーダが呼びに行き、全員が揃ったところで夕食となった。





久しぶりの御馳走に喜んだワッカとティーダは凄い勢いで目の前に出された食事を平らげている。
それを見てユウナはクスクスと笑いながら『美味しいね』と言って食べた。
ルールーはと言うと、凄い勢いで食べていたワッカが喉につまらせて苦しんでいる様を見て、額に手を当ててすっかり呆れかえっている。
そんな中でキマリはいつもと全く変わらず、ただひたすら黙々と食べていた。
また、アーロンとナマエも、普段と変わらずに落ち着いた様子だった。




「まだまだあるからな〜、ガンガン食えよ?
なんかさぁ、こんなに大勢で食事する事って殆どなかったから楽しいな、アニキ。」

タイガがニコニコしてリュウに話題を振った。


「そうだな、いつもはタイガと2人だからな……。」

リュウの言葉に、ティーダが質問をする。


「質問ッス、ナマエやリュウ達の家ってみんな戦いしてたんスか?」

ティーダの質問に、2人は答えた。





ナマエの家を含めて、自分たちの家系はどうやら戦闘向きだと言う事。









自分の父方の家系は物理攻撃を得意とする『モンク』や『戦士』を多く輩出している。
そして、母方の方は、魔法攻撃に長けている。
タイガは思いっきり父方の血を引いていて、実際、戦闘では爪をつけて攻撃するモンク系だった。
一方、召喚士となったリュウだが、実を言うと召喚よりも魔導系の方が得意である。








「アニキは赤魔導士の方が向いてるみたいなんだけど。召喚士を選んだんだよな……。」

そう言ってタイガは黙った。





召喚士になった兄と、ガードとなった自分と共に旅をしてナマエだけが死んだ事を未だに悔やんでいるのだ。
ナマエにはタイガのその気持ちが痛いほど伝わってきて。
そこまで自分の事を大事に想ってくれているという気持ちが嬉しくて、目の奥がツンとした。

しかし、みんなの前では涙を見せない。
気丈に振る舞ってみんなを不安がらせないように努めているのだ。
今度はタイガがそんなナマエを見て、つい目を潤ませてしまったので
『デザートでも取ってくるわ。』と言って席を立った。


それを黙って見送るリュウには、タイガやナマエの考えている事がよく分かっていた。
きっと、ダイニングで溢れそうになった涙を堪えて、気持ちを隠すのだろう。
タイガに変わって今度はリュウが自分たちの説明をした。
























「ところでさ……赤魔導士って何?」

ティーダが質問をしてきた。



ティーダはジェクトの息子である。
と言う事は、召喚士も魔法使いもいない『眠らない街』からやって来たと言う事だ。
リュウはそれをタイガから聞いていたので、不審にも思わず説明してくれた。

「赤魔導士ってのは、遥か昔にいた魔導士の種類の一つだな。
黒魔導士は、ルールーが得意とする黒魔法専門の魔導士。
その対極にある白魔導士は、今で言う召喚士が得意とする白魔法を専門に操る魔導士の事だ。」
「ふむふむ。」
「そして、白魔法も黒魔法も使える魔導士が、さっき言った赤魔導士の事だ。
因みに赤魔導士は、剣術もそこそこ使えた。」
「だからリュウは、ロッドも持ってたけど普段の戦闘中は剣を使ってたよね?」


ナマエが横から口を挟んできた。
リュウはそれに頷くと、ナマエの方を見た。

「ナマエの親父さんと、俺の母は兄妹でな……。
母はそんなに戦闘能力は高くなかったんだが、叔父の能力は半端じゃないほど強かった…。」
「……まさか、有名な赤魔導士様の!?」

ルールーが驚きの声をあげた。



















強大な魔力と攻撃力を持ち合わせた赤魔導士で、ナマエと共に気ままな傭兵生活を送っていたナマエの父は、その力に溺れることなく、また、明るい性格と人見知りもなく誰とでも仲良くなれるところからか、多くの人に好かれていた。

ナマエもそんな父が自慢だった。
その実力とカリスマ性に目をつけた寺院が、召喚士となってスピラを救ってくれと頼んでいた。


もちろん、そこには寺院の支持者を増やすという目論見もあった。
しかし彼は断った。
『そんなのは俺の性に合わねぇよ。俺はどっちかっていうと…知らない多くの命を救うよりも娘と一緒に目にとまった困ってる人間の方がほっとけねぇからな…。』






それに、召喚士になって『シン』を倒したらナマエと一緒に居られねぇだろ?











そう言って横にいたナマエの頭を撫でた。



彼には、ナマエを魔法剣士に育てるという想いもあったから、幾度となくあった頼みも断り続けた。
ナマエがまだ幼い頃に、剣に魔法を掛けて戦っているナマエを見た父はその才能を見いだしていたのだ。
彼女には自分を超えるであろう戦闘能力が秘められている。

父はその頃から娘をより一層鍛え始めたのだ。
父の育て方は上手く、ナマエがうまく出来た時にはすごく褒められた。
逆に失敗した時は、頭ごなしに怒るのではなく、諭すような話し方で彼女に考えさせて理解させた。
『どこが悪かったのか?また、それを上手くやるにはどうするか?』と。

そんな父親に育てられたナマエは、真っ直ぐに成長した。











ルールーもまだ幼い頃に、一度だけ会っていた。

「実はね…私、6歳くらいの頃と思うんだけど、お会いしているの。ちょうどビサイドにやって来て…その時に聞いてみたのよ。
『どうしたら貴方のように強くなれるんですか?』って。」

ナマエはルールーの言葉を聞いて自分の記憶の糸をたぐり寄せる。
確かに父親と共に、ビサイド島に仕事で渡った事があった。


(ん〜〜〜〜??……………)


「そしたらね、『守るべき人がいればいくらでも強くなれるよ。
おじさんも、娘を守りたいから今でも強くなるために訓練しているからね。』って笑って仰ったの。」

そこまで聞いたナマエが


「あ〜〜〜〜っ!あの時の子はルーだったんだ!!」

と、思い出して叫んだ。


「そうか!ナマエは娘なんだもの…私達は16年前に出会ってたのね…。」

ルールーは10年前に会った時を思い出した。
初めて会うはずなナマエだが、以前に会っているようなそんな感覚を覚えたものだった。
それもそのはずである。






それよりも6年も前に出会っているのだから。


「不思議な繋がりがあるものなのね……。」

ルールーは穏やかに微笑んだ。

「そだね……」


ナマエも同じように、かすかに微笑む。
しかしその1年後に父は帰らぬ人となったのだ…。


















ティーダは何とか分かったようで、『俺もユウナを守るために強くなるッス!』と言ってユウナに宣言した。
それを受けたユウナは真っ赤になって頷いていた。

「初々しいねぇ〜。」

先程までルールーの横にいたナマエが、いつの間にかアーロンの横に来ていた。
アーロンはチラリと視線を送ると、ティーダとユウナに視線を戻した。
ナマエもまた、同じように2人に視線を送る。






召喚士としての使命を全うしようと気を張るユウナと、
『シン』を倒す=ユウナの死、その方程式を知らないティーダ……

「ユウナが幸せになれるような世界になればいいのにね…ここも。」
「それはアイツ次第だがな……なぁに、俺たちが見守っているんだ。今度こそ間違えないだろう…。」


アーロンはそう言うとナマエを見て柔らかい笑みを浮かべた。








こんな穏やかな気持ちで、最後まで旅を続けられたら―――
その場にいた誰もがそう願った。







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